零
Zeroes
「時間がないのでね」
巫女の声が聞こえる前に巫女はマイルに斬りかかる、マイルは防御壁を貼って斬撃を防ぐ。斬撃は弾かれ、甲高い音を周囲に響かせる。巫女の体制が少し崩れる、マイルは剣を振る。巫女は転がりながら躱して懐から札を出す。そして転がりながら距離を取る。マイルは防御壁を再び貼り、周りに槍を展開し巫女に飛ばす。
風法 絶希
マイルの防御壁と槍が吹き飛んでいく。そしてすぐさまマイルも吹き飛ばされる。天井にぶち当たって止まる。口からは静かに血が垂れた。巫女は札をそこに飛ばす。マイルが高速移動してそれを避ける。札の軌道が変わる。マイルが槍を飛ばす。札が貫かれひらひらと落ちる。巫女が突っ込んでくる、マイルは左手を振り上げる。そこから巨大な闇が出でる。
王の極蝕
マイルは言った、巫女に闇が襲いかかる。
「よっこらせ...ここに居たらいいかな」
一二三は妖怪の山の麓に座っていた。あれから王の指示も一切ない。とりあえず王が居るところから少し離れたところに居るが、何も来ない。あまりの退屈さに欠伸が出る。これは戦いではなかったのか、日差しが心地よい。
「おい、そこの妖怪出てこいよ」
欠伸交じりに言う。茂みから妖怪が出てきた。ああこいつ、あんとき地霊殿に居なかった。名前は火焔猫燐だったか。前からはぞろぞろと死体が歩いてくる。燐の顔は怒りに満ちていた。当然か、こいつの主人を二人とも殺したから。そのうえ、親友まで。俺は大罪人だ、王の命という免罪符なしでは。一二三は刀を静かに抜き、両手で構える。
「何故...二人を殺した」
燐が口から小さく漏らした。その声とは対照的に顔は怒りに満ちていた。最後の情なのだろう、ならばその情に答えてやらねば。
「王の命だからだ」
一二三は襲いかかる燐の弾幕を刀で弾いた。燐は森の奥に消えた。死体たちが襲いかかってくる、変な病気うつさないだろうな。一二三は小さな心配をして死体に斬りかかった。死体は俊敏に動いてこちらを攻撃してくる。あいつが操っているのか。一二三は一番近い死体の首を落とす。死後硬直か何か知らないが生身に比べて硬かった。そして屍を斬りながら距離を取る、数は30ほどだが挙動が読めない。さっき斬った死体も何故か動いている。まさかとは思うがこの屍ども弱点がないのか?いや、動きが止まらないのか?いや、足を斬ってしまえば。一二三は刀をしまい居合の体制をとる。
「居合 赦斬」
紅い斬撃が屍たちを襲う。屍たちの脚が取れる、屍に紛れて燐が襲いかかってくる。屍たちは倒れこみ蠢いていた。一二三はすぐさま反応し斬撃を放つ。燐は四つん這いになって避けそのまま距離を取る。だがすぐ傍に剣先が迫っていた、距離を離したはず
なのに。燐の顔に小さなかすり傷ができる。
「動いてる奴には当たらんなあ」
一二三がのんきな調子で言う。燐は眼を見開いて息を荒げていた、あと少し遅かったら殺されていた。明らかにおかしいあの刀の長さでは届かないはず、なのに当てた。一二三が燐を睨む、燐はジグザグに走りながら一二三に近づく。一二三は静かに刀を抜く、そして燐を見据える。行動に規則性がある。そして燐の動く先を先読みしてそこを斬る。だが燐はそこに居なかった。燐は背後から殺す気の弾幕を撃つ。一二三はすぐに鞘を燐に向ける。鞘が伸びる、それは燐を貫いた。そして刀で弾幕を総て斬り伏せた。燐が血を吐いて倒れこんだ。燐はなんとか立ち上がり鞘を投げ捨てた。口からも血が流れる、だんだん体が冷たくなる。だが、こんなところで死ぬわけには、こんなところで死ねばさとり様とこいし様に何という顔をすればいいのだ!執念で燐は一二三に弾を飛ばす。一二三は何故か動かずその弾を受け止めた。弾は逸れ、左腕に弾が命中した。一二三は燐の前まで走り、刀を燐の喉元に向ける。紅い刀身が燐の喉に当たる。燐は一二三を睨みつける。
「復讐に暮れるのもいいが、少しは考えなかったのか?」
一二三が落ち着いた口調で話す。燐は依然一二三を睨みつけている。動いたら殺される、血は止まっている。
黙れッ...お前にッ何が分かる!家族を...友達を殺された痛みが!悲しみが!
燐が叫ぶ、頭が上下したせいで刀に顎が当たる。一二三はそれを静かに聞いていた。軽蔑するでもなく笑うでもなくただじっと耳を傾けていた。聞き終わり刀を振り上げる。
振り降ろされた。
遅れてしまい申し訳ございません




