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誤観性

少女の対峙

「行くわよ」

八雲紫が口を開く。重苦しい空気が少し薄くなる。

「行くってどこに?」

「妖怪の山よ、といってもあなたたちは知らないでしょうが。河城にとりに作らせた機械も完成した」

「ちょっと待って、私の計画と違う...」

レミリアが少し慌てて口に出す。少し体を動かしたのでカタンと小さくカップが震える。八雲紫は依然座ったままである。

「もしかして貴女あの結界を破れるとでも思っていたのかしら?少なくとも貴女達じゃ不可能よ」

「河童の機械は結界破壊の為の代物。座標計算くらいできるでしょう」

「河童、出てきなさい」

スキマが開きにとりが出てくる。少し遅れて巨大な機械がスキマから出てくる。その顔は恐怖に満ち、今にも死んでしまいそうな弱弱しい雰囲気を醸し出していた。

「河童、いや河城にとり。早く座標を」

八雲紫が急かすように言う。にとりは力なく頷き、機械の操作を始める。にとりの表情は面が張り付いているかのように先程から表情が変わらない。恐怖、ひたすら恐怖だった。さすがにその場で誰かと話そうなどという者はおらず場は沈黙していた。ただにとりの機械の小さな稼働音だけが響いていた。その沈黙は永遠とも思えるほど長く、重いものであった。誰もが口を開かない。そしていつまでも続くと思ったものも...

「ねぇ、紫?座標の計算なら終わったよ」

「そう、ありがとう」

そう言って八雲紫はスキマを開く。スキマから出た美しい指が機械に触れる。そして八雲紫は眼を瞑る。機械から何かの情報を受け取っているようだ。集中しているようで息の声が漏れる。そしてにとりは八雲紫に拳銃を突きつける。軽機関銃であり、本気で八雲紫を殺す気のようだ。だがその表情は依然恐怖が張り付いていた。八雲紫は眼を開けた。

「どうしたのかしら?河童、言葉遣いが悪かったのなら謝罪するけどそれは冗談にならないわよ?」

八雲紫が威圧感を込めて言い放つ。にとりはそれに臆することなく、いや八雲紫に恐怖を抱くことなく。銃口を八雲紫の額の前に近づける。銃口は微動だにせずに八雲紫の額を捉えていた。あの距離で撃たれたら確実に死ぬ。八雲紫は一切表情を変えない。一同は茫然としていた。にとりがいきなりおかしな行動をとったのだ。全員動くことができなかった。にとりから異常なまでの威圧感、妖怪としての本来の力が部屋を支配していた。

「八雲紫(やくもゆかり)、死にたくなかったら私の要求を聞け」

「何かしら?あいにく私は使い魔ではないのだけど」

「私を...この...」


その瞬間ドアが音を立てて開く。そこから三人の人影が入ってくる。

「永琳...飛ばし過ぎだぜ...」

「あら、人間の貴女には荷が重すぎたかしら...」

魔理沙と永琳と輝夜だった。輝夜は永琳に担がれていた。緊迫した場に二人は真剣な表情となる。部屋に入ったら沈黙が待ち構えていたのだ無理もない。にとりの意識の焦点がそちらに向く。だが、にとりは慌てて八雲紫の方を向きなおす。だが、にとりはスキマに引きずり込まれた。そして引きずりこまれる途中でスキマが狭くなる。途中で落下が止まる。下半身が向こう側に見える。スキマが体を締め付けていてピクリとも体を動かせない。

「ふふ...悪い子にはお仕置きをしないとね♥」

八雲紫は邪悪な笑みを浮かべていた。ああ、殺されるのか。にとりは悟った。にとりは眼を瞑る、大妖怪に逆らったのだ多分惨たらしく殺されるんだろうな。八雲紫の口が美しく残酷な三日月のように歪む。腕に禍々しい妖気がたまる。眼には見えないが肌で、心で、細胞で感じ取れる。詰みだ。四肢が動かない、にとりは視覚を放棄した。

八雲紫は大きく手を振りかぶった、そして思い切りにとりの尻を叩いた。

「いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

にとりの叫びが木霊した。魔理沙と永琳はその空気においてけぼりであった。二人だけでなく全員が目が点になった。

「悪戯娘にはお尻を叩くのがいいのよ、それにちょっと緊張がほぐれたでしょう」

八雲紫が言う、この掴みづらいところは紫そっくりだ。

「河童、あなた怖くなったんでしょう?」

紫が諭すように問いかける。にとりは黙って頷く。にとりは戦禍を初めて知ったのだろう。憎しみに次ぐ憎しみ、悲しみ、怒り。肩が震えている、泣いているのだろう。

「そう、無理もないわ。今回は異変じゃなく戦争、戦う気が無いものは戦場において何の役にも立たない。でもね」

「それはあくまで”戦場”での話、戦場で役に立てないのなら幻想郷の役に立ちなさい」

紫はしばらくにとりの背中をさすってやった。

「さあ、行くわよ。首魁の元へ」

「廃線 ぶらり廃駅下車の旅」

電車が、いや箱舟が来る。にとりは機械弄りに戻る。戦場には行かないようだ、霊夢達は乗った。

「永琳、それ連れていくの?」

レミリアがだらりと垂れている輝夜を指さす。

「姫様は私がお守りします、あのような場所においてはいけない」

永琳は冷たく返した。列車が動く。



少女は迷う

少女は迷わない


少女が道を歩く

少女が道を歩く


少女は苦しむ、自分の運命に

少女は受け入れる、運命を


少女が止まる

少女が止まる


「けい...ね...」

少女が話す。

「もこう...わたしを」

少女が話す。


「殺してくれ」


少女が少女に頼む。

少女は俯いた。

遅くなりすぎました、申し訳ございません

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