ごーごーごー、がたがたはぐるま
奪われる恐怖
「僕が頼まれたのは足止め、それだけ」
エドが幽香に向かって言う。幽香は地面に伏していた。土の匂いが鼻に入る。向かっていった瞬間、足に力が入らなくなった。そのうち脱力は躰中に廻り、この様である。エドは強者の余裕なのか何もしてこない。ただ見下してくる、見下されるのは不快だ。体の中心に何か黒いものが生まれる。
「殺さ...ないのか...」
幽香はエドに尋ねる。エドはしゃがみ込む、そして幽香の顔のすぐそばに
「殺さずとも貴様らは死ぬ、誰も王には勝てはしない」
エドは先程とは変わって冷たく言う。幽香はそれを聞き終わり、眼を下にやる。死ぬ前の幻影かスキマ妖怪が見える。その瞬間幽香の世界は黒く反転した。
「どうしたんですか?慧音さん」
慧音はその言葉で我に返る。青年が心配そうに慧音の顔を覗き込んでいた。
「少し考え事をしていたんだ」
慧音は答えた。青年は「そうですか」と言って、家の中に戻っていった。慧音は考え事に戻る。
「あら、浮かない顔ね」
後ろから声がする。慧音は振り返る、こいつのことを考えてた。
「貴方は一体何?」
慧音は尋ねる。それが一番の疑問、歴史は八雲紫そのものなのだが何かが違う。そこまで親しい仲ではなかったが何か違う。声、姿、髪、匂いすべて同じなのに何かが違う。
「今それを話している時間は無い、白沢結界を見ておきなさい」
それだけ言い残して八雲紫はスキマに消えた。慧音は八雲紫が居たところをただ見つめていた。哀しいヒト、慧音はそう思った。
「こんにちは、紅魔の吸血鬼。”契約”通り人を連れてきましたわよ」
青娥が息を切らしながら言う。芳香は持っていた二人の女性を降ろす。その二人は巫女。博麗霊夢と東風谷早苗だ。二人は気を失っていた、早苗に至っては腕がおかしな方向に曲がっていた。青娥はその辺りの椅子に腰を下ろした。芳香は床に座り込んだ。芳香は疲れていない様子であった。
「スキマ妖怪もどきがいつ戻ってくるか、あと守谷の神...妖怪たちがどこまで集まるか...」
レミリアが不安そうに言う。
「姫様、行きましょう。ここに居ては危険です!」
永琳が輝夜を揺さぶって言う。輝夜は何かぼそぼそと言うだけで一向に動かない。その眼は虚ろで心ここに在らずという様子であった。魔理沙も心配になって輝夜を見る。輝夜のイノチ以外の総てが死んでいた。口からは涎がだらしなく垂れていた。魔理沙は見てられなくなって目を逸らす。永琳は見かねて輝夜を担いだ。
「さ、行くわよ」
魔理沙は永遠亭の扉を開ける。そして二人は走り出した。
「そろそろ紅魔館に行こうかしら」
てゐが言う。そして走っていく。アリス達も走っていく。レイとローブの人も走る、パチュリーは...ローブの人がお姫様抱っこをして運んでいた。アリスは走っていて気付いた。おかしい、森が静かすぎる。至る所に異常な数の死体が転がっている。妖怪の死体の他に敵らしき白い服を着た人間が死んでいる。どれも頭部を撃ち抜かれていた。見ていて気分が悪くなる、早く森を抜けないと。アリス達は速度を速める。その瞬間、銃弾が飛んでくる。それはてゐを狙ったもの、てゐがそれに気づいて避ける。だがいつの間にかてゐの進行方向に第二弾が迫っていた。てゐが二弾目に気付くが遅...だがローブの人がてゐをタックルで横に突き飛ばして躱させる。そしてレイにパチュリーを持たせる。パチュリーは「むきゅむきゅ」言っていた。そしてローブの男は下の死体からナイフを取ってローブを脱ぐ。ローブが風に吹かれて飛んでいく。そこからは綺麗な銀髪で首に生々しい縫い傷がある男が出てくる。この男は知っている。殺されかけた。
「師匠...」
レイが小さく呟く。てゐが急いで走り出す。ラクトマン達もそれについていく。それに合わせてまた走り出す。また銃弾が飛んでくる。ラクトマンがナイフで弾く。そしてナイフを投げる。ガサガサと音がする。そして何かが飛び出してくる。そして上空に飛び上がる。てゐは眼を見開く。見たくないものが見えたからだ。てゐはもう一度よく見る、だがそれは一瞬で消えた。
「うど...んげ?」
てゐは小さく消えそうな声で呟く、ラクトマンは素早くてゐを担ぐ。銃弾が飛んでくる。レイが剣で銃弾を弾く。ラクトマンはてゐを担いで走り出す。てゐは頭の中で自問自答を繰り返していた。どうして?なんで?なぜ?うどんげは私たちの仲間じゃないの?そんなとりとめのない疑問が浮かんでは消えていく。
「因幡兎、今はここを出るのが先決。心を乱されるな殺されるぞ」
ラクトマンは言った。てゐは口をつぐんだ。
「あの男...」
優曇華は森の奥で腕を抑えていた。腕にはナイフの傷があった。刺さってはいないが肉を抉られた。ライフルのスコープを覗く。まだ一行は走っていた。まだ撃てる。優曇華はスコープを覗き込む。予定変更、パチュリー・ノーレッジ、先に奴を殺す。引き金に手をやる。またナイフが飛んでくる。こちらを的確に狙ってきている。優曇華は避け、場所を変えるために走る。ちょうどいい場所が見えた。優曇華はそちらに身を移す。またスコープを覗く。もう出口に迫っていた。これ以上の追撃は紅魔の奴らが出てくるだろう。優曇華は急いでその場を離れる。追手が来るでもなくすぐに出口についた。そして右を向く。次の対象の地点。優曇華はまた走り出す。その後ろを男がフワフワと浮きながらついていく。クリンガンだ。
「これほどの”素材”が転がっているとは...さすが幻想郷」
クリンガンは不敵に笑った。
他の続編も書くよ!




