偽曲
蝸牛の速度
「僧よ、まだ立ち上がるか」
ヴァルキリーは聖に言い放つ。聖は死にかけている。男と女、その差を退けても、ヴァルキリーは強い。聖では勝てそうもない、だが
「もう逃げる訳には…」
聖はボロボロになっていた。だがまだ立ち上がる、もう逃げたくない。その信念だけで聖は立っていた。二人の間に冷たい風が吹いた。聖の傷が痛む。ヴァルキリーの表情は依然厳格なままだが少し悲しげに見える。だが少し息のペースが不安定だ。聖は息を切らしていた。そして倒れ…る、ふりをしてヴァルキリーを殴りつける。ヴァルキリーはその一撃に気づくが、一足遅い。聖のパンチをノーガードの腹に迎えてしまう。ヴァルキリーは血を吐く。だがヴァルキリーはすぐに聖を殴りつけた。聖が吹き飛ぶ。そして地面を転がり止まる。
「まだ、抗うか僧」
ヴァルキリーは吹き飛んだ聖に言う、聖は何も答えない。ヴァルキリーは拳に力を込める。殺す気、殺気が漏れる。聖はうっすら眼を開ける。ヴァルキリーの拳が見える、死ぬ。死、いつまでも遠ざけていた。逃げてばかりだ私は––––––––––––––––––
「聖様!」
声が聞こえる、星の声。ヴァルキリーはそちらを見る。星が錫杖を持って走ってきていた。聖は嬉しくも悲しくもある。ヴァルキリーに殺される。ヴァルキリーの眼光が鋭くなる。
「逃げ…て…星…勝てる相手じゃ…」
声が掠れて出ない。星はヴァルキリーに錫杖で攻撃を仕掛ける。ヴァルキリーはそれを手で払う。
「まんまと引っかかりおったな」
不意にマミゾウの声が聞こえる。ヴァルキリーの表情に驚きが見える、その瞬間マミゾウがヴァルキリーの右手に絡みつく。ヴァルキリーがマミゾウをはがそうと腕を振る、だが星が攻撃し、それを妨害する。その瞬間ゴキリと嫌な音がする、マミゾウがヴァルキリーの腕をへし折った。そしてヴァルキリーから離れる。ヴァルキリーは腕を見る、完全に骨を折られていた。マミゾウは錫杖に化けて、いや自分を錫杖に化けさせていたのだろう。
「貴様ら…」
ヴァルキリーが呻く、その瞬間星が襲いかかる。マミゾウも側面から襲いかかる。まだ、動ける。行こう、聖はよろめきながらそこに近寄る。右腕には魔力を溜めている。この一撃に賭ける。星とマミゾウとヴァルキリーがしのぎを削っている。この隙を突く。ヴァルキリーはこちらに気づいていない。
「腕など不要ッ!見えているぞ!聖白蓮!」
ヴァルキリーが素早く後ろを向き聖に掌底を放つ、聖が血を吐く。そして膝をつく。
「その眼には聖白蓮が映っているか」
聖がぬえになる、ヴァルキリーがそれに気づいた直後、先程まで星だったものが聖に変わる。
「慈悲の拳」
ヴァルキリーの背中にパンチが当たる。聖の拳はヴァルキリーの背中を貫通する。腹部と背中から血が吹き出る。「見事」ヴァルキリーはそう言い残し地面に倒れこんだ。
「だが!まだ死なんッッッ!」
ヴァルキリーがそう叫び、殴りかかる。その拳は聖を捉る、ぬえがヴァルキリーに気付き槍を突く、だがヴァルキリーは刺されながら聖の頭蓋を拳で叩き潰した–––––––––––
だが、実際は地面の小さな石を砕いたに過ぎなかった。ヴァルキリーは地面に今度こそ倒れた。
「やった…の…?」
聖が弱々しく尋ねる。二人は頷いた。
「万が一に備えて寺の中に隠れとって正解じゃったわい」
マミゾウが溜息を吐きながら言った。ぬえは膝をついて咳をしていた。あの男の拳を食らったのだ当然だろう。だが疑問点が一つ。
「ぬえ、いつ種を忍ばせたんじゃ?」
「種を忍ばせた覚えなんてない、気づいたら種があった」
ますます疑問が増えた。ヴァルキリーが呻く、
「我らは、皆…」
「まだ制圧は出来ぬか」
マイルが不機嫌そうに言う。攻め入って時間が経つが一向に静かにならない。
「ええ、残念ながら。あと13人の戦士たちが必ずや制圧してみせましょう」
部下の一人が言った。マイルの前には瀕死の天狗が居た。この命も風前の灯火だ、
「貴様らに、幻想郷は落とせん…」
「そうか」
天狗の首が刎ねられた。
「ま…間に合いましたね…」
断崖の中腹に青娥は座っていた。後ろには芳香が居る。力を大幅に使ったのは久しぶりだ。それに、このような大規模な戦いも。
「せーがー、ここに置いといていいのか?」
「ええ、いや、その二人抱えて逃げてもらえる?」
青娥がそう言い、後ろの崖に穴を開ける。芳香は指示通り穴から何処かへ行く。だが、顔をひょっこり出し、「青娥、気をつけてね」と言い残し顔を引っ込めた。青娥が芳香が消えた穴に向かって少し微笑んでみる、もちろん何も返ってこない。
「気をつけてね…か…いつも無茶してるのに…」
ゼロスパーク
青娥に閃光が飛んでくる、もう気付いたのか。青娥は空を飛び崖の外に這い出る。案の定奴が待ち構えていた。青娥は力を溜める、巫女二人を無力化した奴は強い。本気で殺しに行かないとマズい。そいつは髪を弄り回していた。ん?あんなんだっけ?青娥に疑問が生まれる。
「青娥娘々、あの二人を何処に隠した?」
小悪魔が冷たい口調で青娥に問いかける。青娥の表情は変わらず、
「さあ、死んだんじゃないですか?」
人を舐めた態度、小悪魔の顔に怒りが現れる。青娥はそれを見て口を歪める。小悪魔は怒りに顔が歪む。
「まあ、いいでしょう。どうせあの死体に運ばせてるんでしょう」
青娥がかんざしを髪から抜く。そしてかんざしを剣にする。青娥に霊気が溜まっていく。小悪魔は右手を握りしめる動作をする。すると剣が創られた。小悪魔はそれを青娥に向ける。
「いや、時間無いし」
小悪魔がそう言った瞬間、青娥の右腕が斬り落とされる。小悪魔がいつの間にか遠くに居た。手には血がこびりついた剣が握られていた。あれで斬り落としたのだろう、青娥は一切動揺した素振りを見せず左手からビームを放つ。小悪魔は動かない、するとビームがひとりでに逸れる。今度は左腕が斬り落とされた、青娥が後ろに退がる。さすがの青娥でも表情に焦りが見える。青娥が力を溜め始める、だが小悪魔はそれよりも速く青娥の両足を斬り、胴体と永遠の別れをさせる。プラモデルのように部位が消えていく、青娥がダルマのようになり、下に落ちる。その表情には絶望が、小悪魔の表情には喜びがでる。どちらも子供のような無邪気さである。
「貴女もしつこいわね」
「ええ、そうね。でも大丈夫頼みたいことは一つだから大丈夫よ〜」
幽々子が暗闇にて八雲紫に語りかける。幽々子の顔は笑っているが眼はまったく笑っていなかった。
次こそは幽々子の出番が来ます、多分




