+0=Ractman
シテイの繋がり。
「あ…か…」
ラクトマンは倒れ込んでいた。アリスに首を千切られたが爆発で心臓を動かし、無理矢理血液を循環させて生きながらえている。首もほとんど体に癒着した。レイの心臓も動かしている。
「レイ…死ぬな…」
ラクトマンは生まれながらにして天才であった。学問の才も素晴らしく、戦いのセンスも良かった。だが一つ悩みがあった。ライバル…好敵手が居ないのだ。二位の者とも力の差が有り余っていた。速い話孤独である。誰にも声をかけられない。声をかけもしない。天才は日常となっていた。
ラクトマンは椅子に座って溜息をついていた、その孤独を保ったまま17歳になってしまった。友達と言える人間も誰一人居ない。ただ何かすれば、「すごい」「天才」といった定型文が帰ってくるだけ。つまらない、退屈。ラクトマンは歩き始めた、何処に行くかは決まっていない。ただふらふらと漂うのみだった。
そのうち古城に辿り着いた。ここはお気に入りの場所である、悠久の時を感じることができる。nostalgie…といったところか。とりあえず切り株に腰掛ける。そして空を眺める。今居るのは古城の庭園、城であったと思われる場所は蔦で覆われている。晴れている時は木漏れ日が心地よい場所、昨日は雨だったのでここに座っている。雨に濡れるのはあまり好きではない。
「ん…グズッ…うわああああああああん」
泣き声が聞こえる。声から察するに5歳くらいの男児。少し喧しい、ラクトマンはそう思ってそこに行く。
「おにいさんだれ?」
少年が漏らす。ラクトマンは取り敢えず自己紹介をした。
「ぼくレイって言うんだ」
ラクトマンは頷いて取り敢えず自分の家にレイを連れ込んだ。古城と自分の家はとても近い、目と鼻の先である。レイは目の焦点が合ってなさげである。
「ここ、どこ?」
レイが疑問げに聞く。ラクトマンは何も答えなかった。レイは頭をかしげている。ラクトマンはこの子のことで錯綜を広げている。育ちは…服は汚れているが綺麗だ…親は…あんな服見たことがない恐らく王族だろうがどの血統の王族だ…いつから彼処に居たのか…うむ…。だが何処かで見覚えが…
「親誰か分かるか?」
ラクトマンは尋ねた。
「お母さんしか知らない」
ラクトマンは「そうか」と一言答えた。そして本を取る。そしてレイの問いに答えずに座って本を読む。あまりにも冷淡な態度である。
「もう!答えてよ!」
その瞬間強い光がラクトマンを襲う、襲うといっても懐中電灯の光を当てた程度の光だが。
「ん?懐中電灯なんか出してたか?」
ラクトマンは疑問になってレイを見る。レイは発光していた。全身がピカピカと光っていた。その瞬間ラクトマンは思い出した。王族…か…西方にこのようなことが出来る王族が居たと本で知った。
「レイというのか…ふむ…」
ラクトマンは考えに耽る。王族の子であるのはわかった、だがどこの王か分からない。ラクトマンは取り敢えず明日マイル帝の元に連れて行くことにした。
「お腹すいたよ」
ラクトマンは一瞬で料理を作ってやった。完璧の名に相応しい速度と味で。レイが可愛らしい反応をした。
ラクトマンはさっさと寝た、レイには毛布を渡した。
「ラクトマン、我が勇気のある兵よ。何用かな」
玉座に鎮座したマイルが言う、ラクトマンは敬礼する。前には我らの国王が鎮座している。表情は穏やかである。朝早くであったが怒っていない。レイは後ろに隠れてビクビクしている。ラクトマンには王として写っているが
「王、簡潔に述べます。この子の「故郷が知りたいのだろう」」
マイルは重ねて言った。ラクトマンは少し言葉を途中で止めた。王はこちらの問いを見透していた。そして少し笑みを浮かべる。レイは依然ビクビクしている。
「はは…少年こちらに来たまえ。心配せずとも取って喰ったりはしない。其方を見てみたい」
ラクトマンは無理矢理レイをマイルの前に行かせた。レイの振動がこちらまで伝わってくる。マイルはレイの顔をよく見る。マイルは考え込んでいるようであった。レイは…あ、漏らした。
「ふむ…知らんな…このような服は見たことがない…だが一つ分かることがあるぞ、ラクトマン」
「何でございましょうか?」
「この子には武術の才がある、今はこのような泣虫であるが今の内に学練を施せば我らと共に肩を並べて戦えるかもしれん」
「しかし…子供を育てるのは…」
「察しが良いの、だが生憎”命令”だ」
だと思った、ラクトマンは心の中で一人合点した。そしてレイを見る。眼には涙がうっすら浮かんでいる。だがマイルを真っ直ぐに見つめていた。下には水溜りがあるが。マイルはそれを見て横にあったワイングラスを倒す。中のワインが床に零れ落ちる、そしてそれはレイのお漏らしと混ざって見分けがつかなくなる。
「勇気もあるではないか、ワインが溢れた。誰か吹いてもらえるか」
その声を聞いた兵士が駆けつけてくる。ラクトマンとレイは玉座の間から立ち去った。マイルは椅子に深く座って眠り始めた。
「レイ、そういうことだ」
「さっきのおじさん怖かった…ふぇぇぇぇん」
レイはベソをかいていた。ラクトマンは無視する。子供のベソなど所詮動物の鳴き声と同等である、相手する必要はない。
「今日から君にも勉学に励んでもらうよ」
ラクトマンは優しくそう言って、紙を渡した。紙には小学生相当の計算問題が書かれている。レイは頭を傾げている。
「やり方を教えてあげるから自分で解いてみなさい」
ラクトマンはニコリと笑う。レイは数字を見て目を輝かせていた。数字も知らないのか…ラクトマンは少し驚いた。普通育児放棄をしても数字は知っているはずだ。この子の親は何を…ラクトマンは少し怒りがこみ上げた。ラクトマンは鉛筆を渡す。レイは鉛筆の握り方すら知らないようだ。
「”数字”って知ってる?」
「知らないよ、お父さん」
やっぱりか…………ん?お父さん?この子供今お父さんって言ったのか?昨日会ったばかりの男をお父さんと?何だか心がむず痒い。だが
「お父さん、どうしたの?」
何だか心地よい。ラクトマンは少し笑って、一瞬で真顔に治り、レイに数字の定義から説明し始めた。正直このケースは無かった、数字を知らないとは…普通何となく理解してるはずなのだが。だがレイはニコニコと笑っていた。初めて知ることができて嬉しい。そういう気持ちが溢れていた。
「こうなって…こうなるんだ。以上終わり」
「お父さん…明るくなったよ。お父さんあれ何?」
「ん?あれは朝日っていうんだ」
ラクトマンはそう言い静かに眠りについた。あ、死んでませんよ。それっぽい文ですけどwレイも集中が切れて眠った。レイは四則計算を覚えた。
「いやぁ〜ラクトマン、父親面が似合ってきたね」
「勘弁してくださいよ、一二三さん」
ラクトマンは返した。ここは訓練所、今日はレイに武術を教えに来た。レイはキョロキョロと周りを見ている。見たことのない斧や剣があるのだ、そもそも男は武器が好きなものである。ラクトマンは取り敢えず眼鏡を外した。視界が少し狭くなる。
「お父さん!これ!」
レイが剣を指差して言う。黒い鞘に赫い刀身をもつ一二三の刀であった。好きなのか?ラクトマンは尋ねる。レイは目を奪われているようだ。
「おう坊主、それ好きなのか?」
一二三が尋ねる。レイは頷いた、眼は輝いている。剣が好きなのか…。珍しくレイが人に懐いていた。
「そうかそうか、だが触らせんぞ」
一二三はそう言って刀を持って何処かへ行った。レイはしばらくそれを見ていた。
「お父さん、剣が欲しいよ!」
ラクトマンはそれを見越して木刀を渡…さない。レイの表情が少し落胆した感じになる。ラクトマンの表情は真剣そのものであった。
「お父さん!いじ「足捌きができるまで剣は握らせん」」
ラクトマンはそう言う。レイは頬を膨らませる。ラクトマンは無視した。足捌きは最も大切なこと、剣は二の次である。強大な敵と闘う場合、武器破壊もありうる。その時一瞬剣が無い違和感に襲われ一瞬動きがおかしくなり殺される。この事故死を防ぐ為に足捌きは一番鍛えるべきものである。ラクトマンはそれを知っているからレイにまず最初に足捌きを教える。
「まずは立ち方からだ」
ラクトマンはレイにそう言い、立ち方、立ち回り方を教えていく。教えるということは感慨深いものだ、本当に理解しているのかを測ることができる。まあ理解しているが。
「こ…こう?」
レイがそう言う。少しぎこちないところがあるが悪くない。この辺で止めておこう、ラクトマンはそう思い。レイに笑って「合格だ」と言った。レイもニコリと笑っていた。二人は手を繋いで訓練所から出た。日はいつの間にか傾いていた。美しい夕陽が二人を包み込んでいた。
「次は歩き方と走り方だ、その枝を持ってここまで来なさい」
ラクトマンはそう言う。まだ早朝である、レイは眠そうで目を擦っている。早朝にすることに意味がある、運動によって身体を覚まさせておく。昼からは数学と化学を教える。レイは枝を持ってふらふらしている。寝起きに加えて枝が巨大で重い。普通の兵士が使う剣と同じくらいである。
「パーフェクトに出来るまで飯はやらん」
ラクトマンはそう言って椅子に座る。レイは眠気が覚めたようで顔に輝きが戻る。そして枝を抱えて走ってくる。一応一般兵のようだ、だが一般兵の持ち方は危険だ。あれは集団戦を前提としている。こちらのシュミレートは一人で闘う場合である。
「駄目だ、そんなんじゃ一瞬で斬り殺されるぞ」
ラクトマンはそう言う。レイは所定の位置に戻る。立ち方は教えた通りできている。だが遅い。
「難しいよ〜」
レイが言う、ラクトマンはその言葉に従い丁寧に教えてやった。基礎だけを。押し付けるのは意味がない、進化の芽を潰すことになり、向上心がなくなる。
「以上、昼まで続けろ」
ラクトマンは言い残し部屋から出て行った。レイは枝を降ろして深呼吸する。今まで殆ど運動をしていなかったのだ当然だろう。少しだけ休もうと床に座り込んだ。
「サボってたら殺すからな」
ラクトマン開けっ放しになった扉から頭をひょっこり出して言った。そして出て行った。レイは枝を持ってふらふらと走り出した。ラクトマンは静かに見守ることにした。弟子の成長は嬉しく思えた。
「そう、よく出来るじゃないか」
ラクトマンはレイに言った。これはいつもの日常である、だが場所が違う、ここは居間。レイはいつ、如何なる時でもいいから俺に一打浴びせろと言っている。いつも攻撃してくるのだが、いろいろと足りない部分がある、だが何も言わない。弟子の成長は見ていて嬉しいものだ。今も木刀を持って斬りかかってくる。取り敢えずそれを防いで腹を殴っておいた。レイは吹っ飛んでいく、そしてドアを破壊して止まった。誰が反撃しないと言った、ラクトマンはレイに言った。レイはゆっくりと立ち上がる。ラクトマンの足元には崩れた杏仁豆腐が転がっていた。レイはまた向かってくる。ラクトマンは新聞紙を丸めてレイの太刀捌きを防ぎながら見る。レイは絶え間なく攻撃してくる。足元がおぼつかない時が嘘のように感じられる。
「左のガード、偏りあり」
ラクトマンはそう言い、新聞紙で思い切り左を攻撃する。レイはギリギリで防ぐ、本当にレイの成長には驚かされる。ラクトマンはそう思った、一瞬防御が弱くなる。その瞬間レイがラクトマンに木刀を振るう、ラクトマンは新聞紙で防ぐ。だが新聞紙が破れる、材質の限界か…ラクトマンはその日初めてレイの攻撃をモロに食らった、レイが14歳の時である。ラクトマンが崩れ落ちる、レイは鬨の声をあげた、ラクトマンは少し嬉しかったが痛みがそれに勝った。骨にヒビが入ったかな…だが末恐ろしい”弟子”だ。ラクトマンの骨は折れてはいなかったがヒビが入っていた。
「レイ、聖霊と契約を結んでいたのか」
ラクトマンはレイに尋ねる。ずっと疑問だったこと。契約、これは我々が修行を行い出来ることである。これを行うことによって聖霊の能力を使うことが出来る、例えば俺は爆発の力を使える。レイの力は恐らく光の力。
「いや、契約してないよ」
レイは否定した。ラクトマンは分からなくなった、能力の由来も”レイ”という目の前の生物も。
時は流れ…
ラクトマンはレイと竹刀で闘いが出来るほど強くなっていた。それでもラクトマンが大抵勝つが。剣を持って戦えるようにもなった。歳は16歳くらい。だが周りの同年代の子、王族や貴族の子供とは知能のレベルの次元が違った。ラクトマンは28歳になった。相変わらず化け物じみた能力を持っていた。レイの発光する力は日に日に強くなった。今では光線のようにして光を放つことができる。威力は弱いが、虚仮威しには使えるだろう。今二人はマイルの前に居る。レイは以前と違い恐れる様子は見せない。
「ラクトマン、中々の戦士に育て上げたではないか」
「「光栄至極に存じます」」
二人はそろって同じことを言った。マイルは「さすが親子」と言って机の上の紙を広げた。二人はそれを見る、異国の地図のようである。ラクトマンもレイも見覚えがない土地。
「知っての通り我々はここに攻め込み、”霊園”を築き現世を支配する。だが、地理が分からんのだ。一応二度間髪入れずに攻めるつもりだが…そこでだ、先に潜伏する兵がいる。レイ、其方に行ってもらうのが適任であると私は判断した」
マイルはそう言った。レイもそれに同意した模様であった。ラクトマンはそれを見て安心した。育てていて気付いたことがある。この子は何でも吸収するスポンジのような子である。この子は俺とは、いや”俺達”とは違う世界を見ているのではないか。この子なら”正義”以外の何かを見せてくれるのではないか。ラクトマンは退屈だった、新しいものなど見たことが久しく無かった。だから少しだけレイに期待していた。
「しばらくだな、レイ」
ラクトマンは笑ってみせた。レイも「すぐ帰ってきます」と言い、消えていった。ラクトマンは少し哀しかった。そして椅子に座って眠った。風がいつもより寒くなった。ラクトマンは気付かず眠った。
ラクトマンはレイが居ない間再び勉学に励んでいた。目的はレイに似た力を持つ人を見つけ、レイのことを知る為、紆余曲折があってレイを育成していたが。だが見つからない、レイは「母は知っている」と言っていた。だが何度か訪ねたが母は出てこなかった、その度にレイが泣き出したのを覚えている。母は信用できない、だがほぼ全ての歴史書を見て何の記載もないとは…諦めるべきか…いや、諦めない、レイも絶望と戦い続けた、だから師匠の俺が諦める訳にはいかない。結局情報を得ることは出来なかった。
「それでは周知の通り幻想郷に攻め込む」
ゲートが開く、その中に何名かの幹部が入っていく、無論俺もだ。皆真剣な表情をしている。俺はレイと久しぶりに会えるので少し嬉しい。1年程会っていない。
「ラクトマンさん…頭打ったんですか?それとも変なものでも食べたんですか?それとも…うぅ…分からない…呪いでもかけられたんです?」
後ろの医者が尋ねてくる、この女性はアインという名。医学は専門分野で俺と同じくらいの能力を持つ、その彼女が慌てふためいている。周りの視線も痛い、ウィズダムは笑い転げていた。当然だ、今の俺の風貌を見てすれば。髪は金髪でおさげをして、服は黒にエプロン。そして黒い三角帽子を被っている。見た目は完全に霧雨魔理沙である、あと声も。姿形は完璧にした、霧雨魔理沙の写真は持っている。あとはそれに従って忠実に再現した。声は問題だった、霧雨魔理沙は少女、俺は青年声の高さが違う。声の練習は4時間近くかかってようやくマスターした。髭やスネ毛も剃った。アインがまた何か言った気がしたが、ラクトマンはゲートに入った。
「レイが居るのはこの辺りか」
ラクトマン魔理沙は魔法の森を進んでいく、途中で妖怪が襲ってきたが全員2秒で殺した。その内にアリス マーガトロイドの家に辿り着いた。ここにレイを潜伏させている、彼女は孤独である。だからここに行かせた、恐らくレイを迎え入れてくれているだろう。レイは幻想郷を知った筈、なら勝てる。ラクトマンはそう思う。そしてドアをノックする、ちゃんと霧雨魔理沙の声で「アリスいるかー?」と言う。自分でも気持ち悪い。アリス マーガトロイドがドアを開ける。中にレイは居ないようすである。
「た…大変なんだ、アリス!幻想郷が…」
「どうしたの?魔理沙」
一瞬、ラクトマンは察した。バレてる、眼差しに疑惑が浮き出ている。そうしている間にレイが奥から出てきた、アリスは距離を取っていた。ラクトマンは魔理沙の真似をしながらアリスに近づく。次の瞬間レイが斬りかかってきた回避が遅れる、右腕に少し切り込みが入る、ラクトマンは即座に煙を発生させて逃げた。いいタイミングで部隊の退却が始まっていた。
やはりな、家に帰りながらラクトマンは考えていた。レイは母性に飢えている。未だに自分の母のことを「おかあさん」と呼び、そして書く。何度か矯正させようとしたが治らなかった。アリスを「母」としたのだろう。やはりレイは何か新しいものを見せてくれる。ラクトマンはドアを開ける、玄関に一冊見慣れない本が打ち捨てられている。ラクトマンはそれを読んでみる。歴史書のようだ。中には驚かされる内容が書かれている。ラクトマンはレイの正体が分かった気がした。この本の情報を鵜呑みにすればの話だが、これ以外の説は浮かびそうにない。
「レイ…」
ラクトマンは呟き部屋の奥に消えていった。呟きは夜の闇に呑まれて消えた。
そして二度目の侵攻
「レイ…何故…」
ラクトマンにはレイの剣が刺さっている。ラクトマンはこれをされることもだいたい分かっていた。だがレイの一撃が早過ぎた。それに疲労も溜まっていた。それも重なって回避できなかった。それにこいつは幻想郷をぬくもりと言った。ラクトマンはガイストフォームを発動させる。レイも能力を発現させる。だがラクトマンにレイを殺す明確な殺意はなかった。この子を死なせてはならない。
「この剣を使うのはお前が初めてだ」
なぜなら、この子が俺の息子だからだ。俺にもなぜか父性が生まれていた。ラクトマンは剣を抜く、剣が重たく感じる。
「この剣を使って欲しい」
ラクトマンが第二次侵略に行く前、小さな家に居た。家に落ちていた歴史書を書いた魔道士の家。そこである剣を魔道士に託された。その剣は銀色の美しい剣である。
「ついて来なさい、青年。話をしましょう」
魔道士はそう言い、歩き始めた。ラクトマンは話を聞くことにした。周りには大量の石板がはめ込まれている。石板には人が写っていた。人々は何かに祈っていた。それが何かは分からない。剣を持っている人も居る、これはなんとなく分かる。戦いの後の凱旋のようなものだろう。
「これは我らの先祖の戦士たちです」
魔導士が石板を指さして言う。よぼよぼの指はその中の一番綺麗な石板を指さしていた。それには二人の戦士が居た。一人は剣、もう一人は斧のようなものを握っていた。二人に共通するのは背中に羽が生えていること、おそらくこれは我々のガイストフォームだろう。歩いているうちに巨大な書庫が見えてきた。目的地に着いたのだろうか、魔導士は歩みを止めた。
「貴方をここに連れてきたのは、――――を伝えるためです」
魔導士は話し始めた、ラクトマンは聞き流さなかった。老人の与太話にしては信憑性がありすぎていた。それに聞き逃してはならない気がしたからだ。
骨が折れる...
ラクトマンはレイと闘いながらそんな考えばかりが頭をよぎった。弱い、光の力の発達には驚かされたが一撃と速度が弱く遅い。他の者の視点から見れば早いのだろうか。だが一つだけ恐ろしい点が一つ。だんだんと動きが速く、力が強くなっている。今になって気付いた。これが魔導士の言う”光”の力なのか。
「お前は弱い、俺には勝てない」
ラクトマンが出した結論。
何回致命傷を見逃したか。数えるのも億劫になってきた。だがレイはその間にも成長している。師匠としてはこのまま見てやりたい、だが時間だ。”白知”が皇降る。
起爆 ラクトフィー
レイの傷口が吹き飛んだ。老人、これでよろしいのですか。ラクトマンは自問自答した。だが答えが返って来る訳もない。
やせいのしゃんはいがあらわれた!▼
人形がレイを揺さぶっていた。となるとマスターがこの辺りに居るはず。だがそれらしき音が聞こえない。マズいな、白知の所に行かれると終わる。弟子のぬくもりは守ってやりたいものだ。それに皇帝は敵でもある、家族の。とりあえず声を届けてやるか、この人形先ほど喋った、なら悲鳴を上げることも可能であるはず。それで宿主を呼び出す。あいさつ代わりにレイの顔を吹き飛ばす。ふむ...悲鳴か、にしても汚い言葉だ。
「レイ?」
宿主の登場だ。こいつもレイと同じ種類。とりあえず殺して殺して殺(見逃)し続けるしかない。俺が死ぬまで。なぜならこのままでは幻想郷は我々に勝てないからだ。死、それは冷たいものだ。そこからだろうか剣が重い。ただ、メッセージを最後にレイに伝えたい。卒業祝いのプレゼント。
「これは私が直々に造った剣だ。使うのはお前が初めてだ」
ここから生き残ったレイの為に造った新しい剣。ラクトマンは斬りかかる。もう、死ぬ覚悟はできた。
「こんなことして、何がしたかったウサ?」
声が聞こえ、目を開ける。目の前には因幡兎が居た。
大方俺の真意を理解した後だろう、そこに居るのはパチュリー ノーレッジか。何がしたい…か…無論、答えは決まっている。
「レイを救いたい、ただそれだけだ」
因幡兎は溜息をつく。視界が暗くなる。もう俺の命がもたんらしい。呼吸もできなくなる、
結局は俺の自己満足なのかもしれない、だが俺の姉を殺した罪。それだけは許さん、殺す。だが俺にはマイルは殺せない、この状態から回復するのは無理だろう。師匠として情けないが任せるしかない。目を閉じてもう眠ろう、疲れた。目が閉じた。
「申し訳ないけど、その肉体は有効活用させてもらうウサ、簡単には死なせないウサ」
最後に聞こえた。そして死んだ。
遅くなりました。ごめんなさい




