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− ALICE

全てを捨てても君の隣に居たい

パチュリーは驚いていた、目の前にいるアリスという少女に。捨食の魔法、捨虫の魔法は習得した。だが、覚える速度が速すぎるのだ。言ってわずか5秒くらいであろうか、その時点ですでに習得していた、アリスの眼は輝いていた。まるで餌を期待する犬のように、パチュリーはひとまず安心して本を読み始めた。アリスも本棚から本をとり、読み始めた。



「あの時も貴女は救われていなかったのね」

パチュリーはアリスに近づきながら言う、距離は近いが、まだまだ遠い、しかも棘の密度が濃くなる。あと、少し––––––––で、手が届くのに…。パチュリーは構わず進む、アリスは叫び続ける。哭き声は森を駆け抜ける。



「転移まであと少しね」

レミリアは自分の部屋で言った、パチュリーは椅子に座る。そうね、パチュリーは返した。実はもうそこに行く為の魔法陣は作ってある、あとは幻想郷が近づくタイミングに合わせて魔法を使うだけ。幻想郷がこちらの世界に干渉してくるのが明日。なのだが、

「あの子(アリス)もそろそろ放すべきよ、外に」

予想していた通りのことを言われる。パチュリーは反論しようとも思わなかった。私もそう思っていた、あの子を紅魔館(ここ)で閉じ込めておくには惜しい。年齢はそろそろ20歳になるだろうが、困ったことに何も知らない。そんな無垢な存在をここで閉じ込めるのは悲しいことだ。だから私とレミリアは話し合った。話し合いは思いの外素早く進んだ、彼女は幻想郷で放す。そして

「記憶の操作はいつ行うの?」

レミリアは尋ねた、そう、記憶の操作。これが結論である、と言っても全てを削除したのでは、あの子があまりにも哀れだ。そこで記憶を消すのではなく編集を加える。今日から私は彼女を育てた人ではなくただの本繋がりの友人となる。一般的な家事や料理もできるようにする、何一つ悲しいことはない、小説のように離れ離れになるわけでもない。なのにどうして–––––––––––こんなに、悲しいの?パチュリーはそれが分からない。

「明日…」

パチュリーは小さくそう言い、部屋を出た。その足取りは重かった、レミリアは何も言わなかった。


暗い図書館

パチュリーは寝ているアリスをそっと持ち上げ、前の魔法陣に座らせた。アリスは眠そうな声をあげる、パチュリーは構わず魔法を起動させる、魔法は音もなくアリスの頭を侵食する。アリスが少し呻く、パチュリーはこの子のためと自分を説得し続ける、でも心にある空虚が消えない。パチュリーは背を向けてトボトボと歩く。

「また…パチュリーと本の読み合いっこしたいな…」

アリスの寝言が図書館に響く、声は小さくすぐに図書館の本がそれを吸収してしまった。パチュリーは歩みを止めた。涙が何故か流れ始める、今はその理由は分からない。パチュリーは逃げるように椅子に座り、久しい眠りについた。



「アリス」

パチュリーはアリスの目の前に立った、腹部には棘が深々と突き刺さっていた。顔は優しく笑顔である、アリスはしゃがんだままである。嗚咽はまだ止まらない。パチュリーは口から血を吐く、構わず進む。退けば何も変わらない、私も変わるの。この子は私の大切な部分、失くしたくない。

「何よ今更!私を笑いに来たの?笑えばいいわ!そうよ!あの時あの女から骸布を奪い去ったのは私よ!あはははTHE blackナイトな、世界?いや、門?生存刑?いや救援要請!911?え?え?死ぬの?んじゃ、絞首刑、君殺して我闇を聞くか、あはは、面白いねぇ。愚かなとぅわいすにーどるは何も気付かない!”自分”が喰われていることに!永遠を求め、穢れた身体を捨てよ!要るのは君じゃなくて、君の脳だ!あはは公転周期は変わるよ、汚い兎は神のお裁きによって四肢を奪われる!」

アリスが知識を吐き続ける、パチュリーは何も答えずアリスに近づき、ついにアリスの前に来た。距離は約14cm、棘は消え失せていた。アリスが消したのかは分からない。アリスはまだ目を擦っている。嗚咽は留まることを知らない。涙は在庫切れらしく、声しか出ない。だが傷は消えない。パチュリーはしゃがんでアリスを抱き締めた。こんな都合のいいもので埋め合わせができるなんて思ってない。アリスは暖かく、冷たい。パチュリーはただ抱き締める。心の何かが音を立てる。かたかたかた震えのよう。

「ごめんね…こんなお母さんで…ごめんね…」

パチュリーは泣きながら答えた、アリスの嗚咽が止まる。パチュリーはまだ泣いている。アリスの頭から寒気が消えた。


アリスはふと昔読んだ書物を思い出す

例え君がどれほど遠くなっても、僕は近くに居るよ。

もしかしたら遠過ぎて君は僕を忘れるかもしれない。

でも僕は君を忘れない。ああ、そうだ一つ君に頼みたいことがあるんだ、もし君が僕を忘れる、と言ったが逆もあり得るだろう。その時は笑って僕が君を迎えるよ。逆のトキは君が僕を笑って迎えてね。次会うときまでまたね。

Twice Needles Lay「ヒト殺しの未来」より


「お母…さん」

アリスは小さく言った、その顔はよく分からない。そしてパチュリーの抱擁を返すように、強く抱き締めた。雲は消え去り暖かい太陽の光が二人を包んだ、すこし日は沈んでいた。


「信じられないわね」

魔女は言う、天蓋は壊れている。亀裂は巨大になり、どんどん天が消えていく。入って来たのは忌まわしいもの。希望、狂気(きぼう)と違う要らないもの。狂気を失い魔女は死んでいく。向こうからアリスが歩いてくる、顔は決意に満ちていた。魔女は悟る、もうこの子は迷わない。

「符号(ふうけい)を変えるのかしら?」

魔女は尋ねる、身体はどんどん蒸発していく。アリスは頷く、魔女は引き攣った笑みを浮かべ下にしゃがみ込む。アリスも一緒にしゃがみ込む、動作も同じ。蛇のように倒れる。魔女の頭に?が浮かぶ。

「ねぇ」

「何よ」

「方向は間違ってたけど、ここまで育てて、生きさせてくれてありがとう」

「何を言ってるのやら…私は狂気の道化師。ピエロは誰も愛さず、誰にも愛されない」

「何を言ってるのやら、は貴女よ。もし貴女が居なかったら私は死神に殺されていたわよ。道化師って死も弄べるのね」

「身にあまる言葉光栄だよ、アリス マーガトロイド殿。一足先に死神と戯れてくるよ、あと最後に」

「うん」

魔女の身体は殆ど残っていなかった、首だけであり、声帯も消えたのか言葉が聞こえない。陽射しは全ての闇を無慈悲に消した。アリスの眼から涙が流れる。知っている感情がまた消えた。それが何より悲しい。

「狂気という素晴らしい居場所を私に与えてくれてありがとう」

ピエロはそう言い残し喜劇を終えた。



アリスは何とか立ち上がる、状況は何も変わらない。

パチュリーも立ち上がる、だが傷が痛むらしく速度がいつもより遅い。アリスは一瞬でパチュリーの傷を治した。二人は笑う、そして歩みを始めた。

過去篇か〜とか言ってたら一瞬で終わりましたw

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