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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
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第191話 身代わり



 アスターシャ、自分がミル・フレイザーだと名乗った少女は光線銃(ブラスター)を握りながら、勝ち誇ったように笑う


 「レイラ、どうしたの? 幽霊でも見るような目をしちゃって。これから幽霊になるのはあなたよ。いや、あなたはミルの、私の幽霊としてここに現れた。そういうことかな。うふふ。こんな話、わけわからないよね。わけわからないまま死ぬのって嫌でしょ? やっぱりちゃんと教えてあげるね。あなたがなんで死ぬのかを」


 うん。それは助かる。レイラは思った。この状況。自分の頭で考えても絶対何もわかりっこない。こんな絵合わせ(パズル)、見たことない。誰にも解けない。


 アスターシャは続ける。


 「私はミル。間違いなくミルなのよ。孤児院出身のミル。そして、裏街(ここ)で、ギャングの女になったミル。ここの親分(ボス)のスキッドの女にね。親分(ボス)の女って、そりゃ楽しかった。スキッドは、私を大事にしてくれた。私のために何でもしてくれた。そう、最高だった。でもね、私にもっとすごい幸運が舞い込んだの。気分転換に、裏街(ここ)を離れて街歩きしてた時、呼び止められたの。あなたは私の死んだ娘にそっくりだ、ぜひ、うちの養女にならないか、ってね。それがお養母(かあ)様よ。アルデランタ家のお養母(かあ)様。びっくりしちゃった。調べたら、アルデランタ家って古い由緒の、とんでもない大金持ちなのよ。そこのお嬢様になれる。信じられない! 私、その話に飛びついたの。ギャングの女より、よっぽどいいじゃない? そうでしょ? それが半年前のことよ。で、考えたの。裏街(ここ)の関係を引きずって、大金持ちのお嬢様になるなんて絶対に無理。すっぱり切れなきゃいけない。でもスキッドが、そんなこと許すはずがない。スキッドは、誰よりも私を愛していた。私を自分のものにしたがっていた。私を手放すなんてありえない。裏街(ここ)を出るなんて、許さない。でも、私はどうしてもアルデランタのお嬢様になりたい。どうしようかなって。それで思いきった勝負をしたの。一家(ファミリー)を売ったの。警察(サツ)に密告したの。スキッドのこともね。それでみんな逮捕された。私は裏街(ここ)を出てアルデランタ家に行って、ミルは他の星に逃げたことにした。でも、警察(サツ)って本当に無能!」


 アスターシャ、いや、ミル・フレイザーは、怒りに声を震わせる。


 「警察(サツ)は証拠不十分とかで、みんなをすぐに釈放しちゃったの。そしてスキッドも、短期刑(ションベン)にしかならなかった。ほんと、何やってるの! スキッドは大勢人を殺した凶悪犯。ありとあらゆる悪事に手を染めている。そんなのみんな知ってるじゃない! それできっちり長期刑(おつとめ)にできないなんて!」


 れっきとした宇宙警察の刑事であるレイラとしては、なんとも面目ない次第である。だが、警察としては、ちゃんとした証拠がなければどうにもならないのだ。「みんなが知っている」だけでは、誰かを訴追有罪にすることはできない。それが法の正義というものである。そうは思ったが、とても正論を言える状況ではない。


 怒りに満ちたミル・フレイザーは、


 「やっと夢の大金持ちお嬢様になることができた。でもスキッドは、無能な警察(サツ)のせいで、すぐに出所しちゃう。そうしたら、私を探す。追いかけてくる。どこまでも追いかけてくる。絶対に私を見つける。そういう男なのよ。私が一家(ファミリー)を売ったことを、突き止めるかもしれない。私はお嬢様でいたい。本物のお嬢様になりたい。そのためには、スキッドとギャングとの関係を、全部精算しなくちゃいけない。それで結局、考えたの。私が死んだことにする。それしかない。ミルが死ねば、もう、追いかけてこない。追いかけてくることができない。私は完全に、関係を断つことができる。これしかない。誰かを、私の、ミル・フレイザーの身代わりとして殺そう。そう思った時、レイラ、あなたが目に留まったの」


 アスターシャは、一旦言葉を切る。その手の自動照準追跡式光線銃(ブラスター)は、ずっとレイラを狙っている。


 どうすることもできない。レイラは、ただ話を聴いているしかない。


 えらいことに巻き込まれちゃったな。


 本当に。ありえないミルの物語(ストーリー)に、頭がぐるぐる回る。



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