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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
190/195

第190話 死の13階段の上で



 ホールの2階。結構広い。


 ここも木目調。


 (テーブル)と椅子。カウンターもある。カウンターの奥の棚には、酒瓶が並んでいる。奥には、いかめしい木製の裏戸(バックドア)がある。


 今日は使っていない。賑やかな1階と違って、誰もいない。綺麗に片付いている。


 ミルの(アジト)


 レイラは、がらんとしたスペースを中ほどまで進み、振り返る。


 アスターシャは、階段を上りきったところに立っている。


 その手には、光線銃(ブラスター)が握られていた。


 銃口はレイラに向いている。


 「何をしているの?」


 アスターシャが光線銃(ブラスター)を隠し持っているのには、気づいていた。護身用だと思って気にも留めていなかったんだけど。なんで私に向けてるんだろう? レイラは訳が分からない。


 アスターシャは片手で銃を握り、もう一方の手で面紗(ヴェール)をめくると、くっくっと笑う。


 「わからないの?」


 アスターシャの紫の瞳、爛々と光っている。


 「撃つのよ。あなたを」


 「撃つ?」


 自分に向けられた銃口。冗談で言ってるように見えない。この銃は。レイラは見てとる。自動照準追跡式だ。近距離なら、標的(ターゲット)を自動でロックオンし、吹っ飛ばす。つまり銃の使い手の腕前は関係ない。避けようとするのも無駄だ。アスターシャが引き金を引いたら、どうやってもおしまい。


 「ねえ、ふざけないで」


 と言うレイラに、アスターシャは笑みを浮かべながら、


 「ふざけてるわけじゃない。本気よ。ずっとこのために、今日まで準備してきたの」


 「なんで? どうして私を撃つの?」


 「あなたが、ミルだからよ」


 アスターシャは、カッと目を見開く。


 「レイラ、あなた、本当にうまくやってくれたわ。本物のミル・フレイザーよ。あなたはミルになり切った。なってくれた。私の想像以上にね。あなたの顔がミル・フレイザーの顔だと、もう、裏街(ここ)のみんなが知っている。あなたが死ねば、それはミルが死んだということ。ミルは、死ななきゃいけないの。だから、あなたにミルになって死んでもらうの。そういうことよ」


 「え?」


 訳が分からない。わかるはずがない。


 「あの、アスターシャ」


 意味不明なことを口走るアスターシャに、レイラは、


 「ミルは、あなたのお姉さんなんでしょ? なんで死なきゃいけないの? それに、本人は別のどこかにいるんだから、私を殺しても、意味ないよ」


 アスターシャは、また、くっくっと笑い。


 「違うの。ミルは、私の姉なんかじゃない。どこか遠くにいるわけでもない。私よ。私がミルなの。私がミル・フレイザーなの」


 「はあ!?」


 何言ってるんだ! 目の前にいるアスターシャが、ミル・フレイザーだって!?


 だめだ、もうついていけない。


 レイラ、頭がパンクしそうになって、ただただ自分に向けられる銃口を見つめている。



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