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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
189/195

第189話 最後の巡礼



 「レイラ、来てくれて、本当にありがとうーっ!」


 夜のアルデランタ邸の前で。


 飛び出してきたアスターシャは、レイラに抱きついた。


 「これで最後だよ」


 レイラは言うが、アスターシャは抱きついたまま、


 「うん、うん、レイラ、あなたって、本当にミル、ミルそのものよ。私のミル。永遠に私のミル・フレイザーだからね」


 興奮して、紫の瞳が異様に輝いていた。



 2人は無人エアカータクシーを呼んで乗り込む。


 「ねえ、アスターシャ」


 レイラが訊く。


 「護衛(ボディーガード)、今日はいないの? 昨日の人、今日は来ないって言っていた」


 「うん」

 

 と、アスターシャ。


 「今日行くところは、本当に安全なの。護衛(ボディーガード)なんて、要らないから」


 

 裏街(アンダーグラウンド)


 夜になると、活気が出る街。今日も、燦然たるネオンにイルミネーションに飾られて、真昼のようだ。シン・トーキョー星随一の歓楽街不夜城である。


 「綺麗だね」


 アスターシャが言う。今日も黒のワンピースに黒の面紗(ヴェール)。レイラは、露出の多いミルの服装(コーデ)。ギャングの女。



 ◇



 今日の行く先。大型の飲食店(レストラン)。珍しく地下ではない。


 1階が大きなホールになっていて、一般客で賑わっていた。割と健全な雰囲気だ。


 床も壁も木目調。


 ホールの中央に、広い、これまた木目の階段があり、2階へと続いている。


 レイラは、今日の行く先をあらかじめアスターシャから聞いて、下調べしておいた。


 ここも無論、スキッド一家(ファミリー)縄張り(テリトリー)


 1階は普通の飲食店(レストラン)。2階はギャングの溜まり場である。ただ、半年前の一斉摘発以来、ギャングたちはここを避け、2階も使っていないと言う。


 一般客の喧騒。特に危険はなさそうだ。


 「レイラ、2階へ行くよ」


 アスターシャが言う。


 「2階、今、使ってないんじゃないの?」


 「うん。お店の人に連絡して聞いたら、使ってないけど、ちょっと覗くのは、いいって。前にミルに連れて行ってもらったのは、2階なの。だから、どうしても2階に一緒に行きたくて」


 ここの2階。


 ギャングの(アジト)だ。ミルが一家(ファミリー)構成員(メンバー)たちと、盛り上がっていた場所。でも、今日は使っていない。いいだろう。問題ない。


 お嬢様の追憶と感傷(センチメンタル)の仕上げ。



 レイラは、広い木目の階段へ。


 アスターシャは、少し離れて後ろからついてくる。


 「先へ行って、レイラ。ミルは、いつもずんずんまっすぐに、私を引っ張っていってくれたの」


 レイラは頷いて、階段を上る。本物の木製らしく、足で踏むと、キュ、キュ、と音がする。


 無意識のうちに階段の数を数えていた。



 1つ、2つ、3つ、



 おや。


 2階へ上がった。


 階段は全部で13段だった。


 13段。


 死の13階段。


 そうだ。レイラは、思い出す。


 確か、大昔の絞首刑台の階段は、13段と決まっていたのだ。


 ギャングの(アジト)に上るのに、死の13階段?


 ジョークのつもりか?


 ともかく。


 上ったのだ。


 死の13階段を。


 追憶と感傷(センチメンタル)の巡礼。


 最後の場所。



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