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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
188/195

第188話 最後のピース



 次の日。アスターシャとの約束の最後の日。



 レイラは朝から、気もそぞろだった。


 あまりよく眠れなかった。


 この日も下着モデルの仕事だったが、どうも身が入らない。


 

 「どうしたの? レイラ」


 ドン・ハルキサワ事務所のトレーニングルーム。


 ネクリが声をかけてくる。いつも元気いっぱい、愛らしさいっぱいの同僚モデルだ。


 「ボーっとしてないで。モデルなんだから、はい、背筋をピンとして!」


 慌てて姿勢を正すレイラ。


 「あ、ごめん」


 「それに顔色も悪いよ。もっと、ちゃんとしっかりメイクして!」


 レイラ、鏡を確認。メイク、確かに粗が目立つ。これじゃだめだ。何しろ、昨夜の今日である。集中できないのも仕方がない。


 「うん、実はあんまり寝てなくて」


 「え?」


 ネクリ、レイラの顔を覗き込む。


 「レイラ、どうしたの? 私たちの仕事、健康づくり体作りが基本よ。あ、さては」


 うふふ、と笑うネクリ。


 「彼氏ができたのね」


 「え?」


 「あ、図星だった?」


 「そ、そんなんじゃ」


 まごつくレイラ。


 「違うの?」


 ネクリは悪戯っぽく、


 「じゃあ、今日、仕事の後、一緒にご飯食べに行く?」


 「あ、今日の夜も、ダメなの」


 「ほーら、やっぱり」


 ネクリはそれ見たことか、と。


 「やっぱり彼氏ね。毎晩毎晩、お熱いのね。でもレイラ、気をつけて。彼氏に熱中するのはいいけど、男で失敗するモデルは多いのよ。この世界、誘惑がいっぱい。ちゃんと足元を見てね。それじゃあ、私、撮影だから」


 「う、うん」


 レイラはネクリを見送りながら、肩を落とす。


 少し離れて。


 カオリが一心不乱に、ウォーキングのお尻の振り方をチェックしていた。



 ◇



 昼、ギルバンから通信(メッセージ)があった。


 「頼まれたこと、調べたぜ。情報(ネタ)屋から話を拾った。昨日のギャング、クーゴだけど、忽然と姿を消したそうだ。しかも、一家(ファミリー)の金庫が、空っぽになっているのが分かったんだと。クーゴが、持ち逃げしたんじゃないかっていうんで、大騒ぎらしい」


 予想通りの展開だった。


 クーゴが言ったことが事実なら、当然そうなる。


 ミルに罪をかぶせて殺す。これが失敗した以上、逃げるしかないだろう。


 と、いうことは。


 昨夜、クーゴがレイラを殺そうとしたのは、自分の切迫した事情からだった。クーゴが逃亡した以上、もう、レイラは安全なのではないだろうか。親分(ボス)の女ミルだと思われたところで、別にいきなり殺される理由はない。ミルをいきなり殺す理由のある人間が、そう何人もいるとは思えない。スキッドが出所するまでは、まだ7日ある。


 よし。


 アスターシャに付き合おう。


 レイラは、アスターシャに通信(メッセージ)を送る。


 「今夜、付き合うから。裏街(アンダーグラウンド)、行こうね」


 「ほんと、ありがとう! 凄くうれしい」


 返信からアスターシャの興奮が伝わってくるようだった。


 もう一つ。


 ギルバンが、気になることを言っていた。


 アスターシャに頼まれた護衛(ボディーガード)の任務は、昨日1日で、終了だと言うのである。


 「おかしいな、まだ、今日1日あるのに」


 少し不審である。今日は今日で、別の護衛(ボディーガード)を頼んだのだろうか。それとも今日行くところは全く危険がないから、護衛(ボディーガード)はいらない、という判断なのだろうか。


 よくわからない。



 1日のモデルの仕事を終え。


 ロッカールームで着替えたレイラは、アルデランタ邸へ、向かう。



 これまでのことを、反芻する。


 双子の姉妹、ミルとアスターシャ。姉のミルは、ギャングの親分(ボス)スキッドの女となった。妹のアスターシャは、大富豪アルデランタ家の養女となった。スキッドの一家(ファミリー)が一斉摘発を受けたので、ミルは遠くの星へ逃亡し手術で顔を変えた。ミルの新しい顔は、レイラとそっくりだった。


 姉を想うアスターシャは、新しいミルそっくりのレイラとともに、裏街(アンダーグラウンド)で追憶と感傷(センチメンタル)の巡礼を始めた。ミルは、新しい顔の画像を、妹や、ギャングの仲間たちに送ってきた。裏街(アンダーグラウンド)に帰ってくるつもりなのか? それはわからない。


 そして、今日、裏街(アンダーグラウンド)巡礼の最後の夜。



 あれこれを整理するレイラ。


 これだけだ。わかってること。


 だが、引っかかる。


 

 なにか見落としてないか?



 なんだろう。必死に考えてみてもわからない。


 カオリの言う通り、この話には、思いもよらぬ裏がある。意図、作為がある。だとしたら、それは何か?


 わからない。


 絵合わせ(パズル)の最後の欠片(ピース)が、どうしても埋まらない。



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