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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
187/195

第187話 裏街の始末



 「なんだ、こりゃ」


 クーゴは唖然となっていた。


 地下〝工場〟自分の城。捕まえたミルと仲間の男。自動警報装置のシグナルに駆けつけてみれば、2人は逃げた後だった。切断された拘束具が、床に虚しく転がっている。


 鉄壁の警戒態勢だったはずなのに。


 頭を抱える工場の〝王〟を、機械(メカ)やロボットたちが、申し訳なさそうに見つめている。


 「こりゃ、もうダメだ」


 青ざめたクーゴ、わなわなと震えながら、舌で唇を舐める。


 ミルが逃げた。そして一家(ファミリー)のみんなに、クーゴから聞いた話をペラペラとしゃべったら。


 「まずい。これは絶対にまずい」


 全てが終わったことを、クーゴは理解する。


 地下〝工場〟苦労して築き上げた自分の城、王国。今日これまでだ。築き上げてきたもの、一切合切失う。大幹部の地位も、莫大な収入(あがり)も。


 でも。


 「大事なのは命だ。それだけありゃあ、上等だ」


 クーゴは、地下〝工場〟を飛び出すと、エアカータクシーを呼び、走り出す。途中、何台もエアカーを替えながら逃げる。裏街(アンダーグラウンド)とも、スキッド一家(ファミリー)とも永遠におさらばだ。


 遠くへ。できるだけ遠くへ行くんだ。



 スキッド一家(ファミリー)の本部事務所では。


 縄張り(テリトリー)のゴタゴタを片付けてきたジロモが、クーゴの言っていた話とは何だろうと、ずっと待っていた。



 ◇



 レイラは、やっと寮に着いた。


 なんだか急にぐったりしてきた。刑事として、修羅場はくぐってきてはいるんだけど。ギャングの世界の命のやりとり。やはり重いな。本職(プロ)の犯罪者。一般市民の犯罪とはわけが違う。まだ裏街(アンダーグラウンド)を管轄したことのないレイラには、ズシリときた。


 やっと自分の部屋へ。


 「おや、誰かいる?」

  

 部屋の前に立つ人影。レイラは、一瞬、警戒するが、


 「レイラさん」


 声をかけてきたのは、カオリ。同僚の下着モデル。モデルの寮であるこのタワービルの、隣の部屋に住んでいる。


 「どうしたの? カオリ」


 「心配で待っていました」


 無表情のまま言う、カオリ。


 「遅くまで、夜遊びですか? それにしては、思い詰めた顔をしてますね。このところ、様子がおかしいですよ」


 「……そう? 心配してくれて、ありがと。私、そんなに変かな」


 「はい。いつも自信たっぷりなレイラさんが、ずっと何か迷ってるようにみえます。自分でもよくわからない出来事に、巻き込まれているんですね?」


 レイラはビクっとなる。この子は相変わらず鋭いなあ。確かに。アスターシャの妙な頼みに付き合ってから、なんだかずっと宙ぶらりんな気持ちなんだ。どこに到着するかわからない列車に乗せられているような。


 「レイラさん」


 カオリが、夢見心地な瞳で言う。


 「本当に気をつけてくださいね。おかしな話には、びっくりするような裏があるものです」


 「うん。本当にありがとう。気をつけるよ。じゃ、今日は疲れたから、もう寝るね」


 レイラは、カオリのまなざしを背に自分の部屋に入ると、すぐにベッドに倒れ込んだ。


 ともかく、今夜は無事だった。


 明日で、本当に最後。


 びっくりするような裏がある。そうなのかもしれないけど。



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