第185話 脱出
「さあ、行くぞレイラ」
ギルバンの声にも緊張が走る。
今度こそ絶対脱出しないと。
「今だ」
ギルバンは腕時計に仕込んだのレーザーナイフを起動させる。赤い炎のような光の刃が現れる。
スパスパっと。
いつもの鮮やかな手並みで、ギルバンは自分とレイラの拘束具を切った。
ほんの一瞬だった。一秒かかっただろうか。レイラも思わず見惚れる。
「走るぞ」
ギルバンは先刻クーゴが出ていった道に沿って、駆ける。レイラもそれに続いた。
背後では機械やロボットがギシギシ音を立てて動き出すのが聞こえたが、振り返らない。
扉の一つにたどり着く。
閃光が走る。
「レイラ、危ない」
ギルバンがレイラを抱えて伏せる。後ろからロボットが撃ったのだ。何とかかわした。閃光は扉に穴を開ける。
ギルバンは、レーザーナイフで扉の錠を切る。次の瞬間、2人は外へ飛び出した。
「やれやれ、何とかなったな」
ギルバンの額にも、さすがに汗がにじんでいる。
2人は、やっと停めてあったギルバンのエアカーにたどり着き、乗り込む。すぐに発進させた。もう誰も追って来れない。裏街を全速力で飛び出す。夜のライトがぐんぐん後ろへ遠ざかる。地下〝工場〟では、機械にロボットたちが、まだ騒いでいるのだろうか。
「ありがとう」
レイラは言う。助けてもらったのだ。命が危ないところだった。
「悪かったね。あなたも、危ない目に合わせちゃって」
「別にいいんだ」
ギルバンは涼しい顔をしている。
「俺は本職の探偵だ。報酬をもらって自分で受けた仕事をしただけだ。特別割増を請求しなくちゃな」
うふふ、とレイラ。
「たっぷり請求しなよ。探偵ってあんまり尊敬したことなかったけど、これからは尊敬することにするね」
「俺は特別さ」
と、ギルバン。ズボンのポケットからウイスキーの小瓶を取り出す。
「探偵だってやくざな連中は、いっぱいいる。ま、人を見ることが大事だな。飲むか?」
「要らない」
レイラは、差し出されたウイスキーを断る。
「そうか? じゃ、俺1人で飲るぜ」
と、ギルバンは、ウイスキーを瓶からゴクリと飲む。
私立探偵がウイスキーの小瓶をいつもズボンのポケットに突っ込んでるって、いつの時代の人間だよ。レイラは思う。やっぱりこいつは、50億年以上、遅れているんだ。人を見る、か。見かけじゃ、ギルバン、凄腕探偵には、とても見えないんだけど。
2人を乗せたエアカー、夜の街を疾駆する。




