第184話 本職の男
暗い地下〝工場〟の中で機械とロボットに囲まれて。
がっちり拘束されたレイラとギルバン。
相変わらず危機である。
「とにかく、ここをすぐに脱出しなきゃ」
とレイラ。
「クーゴの気が変わって、すぐに殺しに来るかもしれない」
「あいつ焦ってたぞ」
ギルバンは思案顔。
「まだ殺しをする決心がついてないように見えた。それに配下も引き連れずにきた。訳ありだな」
的確な推理を披露する。
「あいつ、技術屋って言ったよな。戦闘員じゃない。それで、拳も弱かった。殺人ってのは度胸が必要だ。いざとなるとビビっちまう奴には、無理だ」
レイラは、
「追い込まれたら、一般人だって殺人くらいするじゃない。クーゴはギャングのゴタゴタで追い込まれてるのよ。度胸だ覚悟だ言ってる場合じゃない。絶対に私を殺すから。殺して死体を隠して、勝手に逃げたことにするんだって」
「なるほど」
と、ギルバン。工場の中を見回す。機械やロボットが、こっちを睨んでいるような。
「死体処理か。確かに、これだけ工作機械があれば、摺り潰すのも、切り刻むのも、溶かすのも、何でもできるな。死体の処理っていうのは、一般人にはかなり厄介なんだか、工場の王とか称してる奴にはお手の物だろ。これはやばいね」
「でしょ? だから早く逃げなきゃ」
「逃げる、か。レイラ、脱出方法、何か考えはあるのか?」
うーん、とレイラは考えて、
「2人で頑張って身をよじって、もがいていれば、拘束具が緩むんじゃないかな」
「さすがは下着モデルのお嬢さんだ」
ギルバン、呆れたように、
「それじゃ、絶対無理だぜ。あのギャングが俺たちを切り刻みに戻ってくるほうが早い」
本職の刑事であるレイラは、またまた自尊心を傷つけられたが、
「じゃあ、どうするの? 何か考えがあるの?」
「ああ」
ギルバンは、平然と、言う。
「俺は本職の探偵だぜ。それに、あのギャング、技術屋で、経済犯罪担当なんだよな? 戦闘員じゃない。命のやり取りの場数を踏んでいない。いろいろ基本ができてないぜ。抜けてるところがいっぱいだ」
「どういうこと?」
まだ希望はあるのか? と目を輝かすレイラの耳元に、ギルバンは、口を寄せる。
「よく聞いてくれ。俺の手首の腕時計には、レーザーナイフが、ついている。それで、拘束具は切れる。だが、あいつは、2重3重の罠を仕掛けてあると言っていた。単なる脅しじゃないだろう。ここの機械どもが襲ってくる前に逃げるんだ」
「うん……大丈夫かな?」
「ああ、クーゴの奴も、平然と工場歩いてただろ。ちょっと身動きしたらすぐ切り刻まれるとか、そういう仕掛けではないわけだ」
「なるほど。罠、防げるの?」
「あいつが出て行ったルートを、そのまま行けばいい。それが安全な道だ」
「わかった」
「よし、レイラ」
ギルバンの眼が光る。
「一瞬で、拘束具を切る。そしたら、すぐ走る。お前も全力でついてくるんだ。いいか、ちょっとでも遅れたら、殺られると思え。切り刻まれるか、摺り潰されるか、溶かされるか、焼かれるか、それはわからないが、とにかく俺たちは終わりだ」
「ついて行くよ」
レイラは頷く。
「任せて。走るのは自信がある」
「よし、いい子だ」
宇宙警察のエリート刑事である自分に上から目線のギルバンに、レイラはキリキリするが、今はそんなこと言ってる場合ではない。
なんであれ頼りになる男なのだ。
とにかく、脱出最優先。




