第183話 潜入捜査官
レイラとギルバン、またがっちりと手首足首を拘束された。
「誰なんだ、こいつは」
クーゴは不審の眼でギルバンを見る。
ギルバンはしっかりとクーゴを見返して、
「俺はこのお嬢さんの騎士だ。このお嬢さんの危機には、いつでも現れる。おい、貴様の悪事は全部お見通しだ、おとなしく降参しろ」
「ふざけるなっ!」
ガッ、
クーゴが、ギルバンの顔を殴る。
ギルバンは、床に頭を叩きつけられた。
「やめて」
レイラが、
「その人、全然関係ないから。そもそも、私も全然関係ないんだけど」
「ミル」
クーゴは、凄い形相で、
「お前、仲間を連れて戻ってきたんだな? こいつ、どこで拾ってきたんだ? まだ他にも、仲間はいるのか? 畜生、いろいろ調べなくちゃいけねえな。ええいっ、なんてこった」
クーゴ、強気とは裏腹に焦っていた。
ミルとジロモを殺し、金庫抜きの罪を被せる。これは絶対に1人でやらねばならない仕事だった。配下の者を使うことはできない。自分の城である工場で、2人殺して死体を処理するだけ、そう思っていたのだが。
ミルに仲間がいた。クーゴの知らない仲間。
予定が狂った。
ちょっと落ち着いて情報収集をしよう。兄貴の出所まで、あと8日ある。それまでに、決着をつければいいんだ。
「おい」
拘束された2人に、凄む。
「いいか、ここでおとなしくしてろ。お前らが何をやってたのか、調べ上げてやるからな。動くなよ。さもないと今度は本当に殺すからな」
そう言い捨てると、クーゴは足早に地下〝工場〟を出ていった。
◇
「うう」
ギルバンは拘束されながらも、何とか身を起こす。
「大丈夫?」
とレイラ。
「ああ、なんでもねえ。大した拳じゃねえ」
「もう、ふざけた挑発するからよ」
「ギャング相手には、けっこう虚勢が利くんだぜ。こっちが何か手札を握ってるってフリをすればいいんだ。基本だぞ」
「そう? あんまり利いてなかったよ」
「どうかな」
ギルバン、ニヤリとして、
「やっこさん、なんだか動揺してたな。俺の出現に相当びっくりしてたみたいだ。こっちをすぐに殺さなかった。まだまだ、戦えるぜ」
「お気楽ね。私のこと殺すことには決めてるのよ。あなたも確実に道連れになるわね」
「ところでレイラ」
と、ギルバンが訊く。
「あいつ、お前のこと、ミルとか姐さんとか呼んでたよな。なんだ、そりゃ。お前、実はギャングの身内なのか?」
「とんでもない!」
レイラは叫ぶ。
「私はただ、人違いで殺されそうになってるだけよ。あいつらとは、何の関係もないのよ。人違いだって言っても、聞いてくれないの」
人違い。とはいえ、親分の女を演じていたのは、間違いなかったのだが。
「へえ」
事情を知らぬギルバンは不審な顔。
「人違いで巻き込まれたのか?」
「そうよ。ギャングの内部のゴタゴタにね。今いたギャングは、クーゴ。ここの一家の大幹部よ。18歳。技術屋で、故買屋稼業電子犯罪稼業担当だって」
「お前、ギャングの事情に詳しいな?」
「そりゃ、警察の記録で調べたから」
「警察の記録?」
ギルバンは目を丸くする。
「レイラ、なんでそんなのにアクセスできたんだ? お前、下着モデルなんだよな」
しまった、レイラ、少し焦る。自分が実は宇宙警察の刑事であることは、ギルバンにも秘密にしている。言わないほうがいいような気がしているのだ。
「今、そんなのどうでもいいじゃない!」
と、叫んで誤魔化す。
「一般人でもアクセスできる情報源をいろいろ検索してたら、出てきたのよ。情報通みたいなのが、警察の記録を流してるみたい」
「ふうん」
ギルバン、レイラの顔を覗き込んで、
「ひょっとして、もしかして、お前、宇宙警察の潜入捜査官だったりするんじゃないのか?」
ズバリだ。見抜かれた?
レイラ、動揺するが、
「そんなことあるわけないじゃない、私は下着モデルよ!」
「あっはっは」
ギルバンは、笑う。
「そうだよな。本職の捜査官が、ギャングにとっ捕まるなんて、そんなヘマするわけないよな」
本職の捜査官であるレイラはカチンとなったが、そこはぐっとこらえる。
実は刑事ですとは、ますます言えなくなった。




