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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
182/195

第182話 工場の王



 「なんで、あんたが?」


 レイラは唖然となった。


 紛れもなく、目の前にいたのは私立探偵ギルバン。何度か顔を合わせたことがある。


 「助けに来たぜ」


 ギルバンは事もなげに言う。そして強化ナイフを取り出すと、レイラの拘束具をスパッと切った。毎度ながら鮮やかな手捌き。


 自由になったレイラ、手足をさすりながら、


 「ありがと……で、どうしてここにきたの?」


 ギルバンは何でもない、という顔で、


 「どうして? そりゃ、依頼されたからさ。俺は私立探偵だ。報酬をもらって依頼を引き受けた以上、きっちりと仕事はする。そういうことだ」


 「依頼? その、いったい、誰に頼まれたの?」


 「アスターシャって、お嬢様だ」


 ギルバンは言う。


 「レイラ、お前が裏街(アンダーグラウンド)でゴタゴタに巻き込まれるかもしれない。だから、護衛(ボディーガード)をするようにって依頼されたんだ。大金持ちのお嬢様らしく、結構いい報酬だったぜ。聞いてないのか?」


 聞いていた。護衛(ボディーガード)を雇う、とアスターシャは言っていた。でも、それがよりによってギルバンだったなんて。


 レイラは、まだポカンとしている。ギルバンは続ける。


 「クラブで俺はお前を監視していた。お前が奥に連れていかれるのを見ていた。これは何かあると思ったね。どこかへ連れていかれるんじゃないかと。で、店の外で、張っていたんだ。そしたら、ガレージからエアカーが出てきた。それを追跡してきたってわけさ。ここ、工場か何かなのか? 周辺を探ってたら、表の(シャッター)の他にも、隠し扉がいくつもあった。それを見つけて、やっとこじ開けて中に入れたってわけさ。間に合ってよかったぜ。あんまり大丈夫じゃなさそうだな?」


 「大丈夫……だよ。あんたが来なかったら、本当に危なかったけど」


 何はともあれ今は。ギルバンが救世主ヒーローなのだ。この男に護衛(ボディーガード)を依頼したアスターシャの判断、正しかったということになる。


 「さ、行くぞ。ここは物騒なギャングの(アジト)だ。まだ全然安全じゃない。早く行こう。立てるか?」


 ギルバン、手を差し出す。レイラ、おとなしく、つかまった。手を引かれて立ち上がる。


 「俺のこじ開けた隠し扉の外にエアカーが停めてある。すぐだ」


 歩き出す2人。


 助かった。


 レイラが、そう思った時、


 後ろにいた、細長い体型の人型ロボット。その手がゆっくりと動いた。そして、その指先から閃光がほとぼしる。


 「きゃっ!」


 「ギャッ!」


 レイラとギルバン、背後からまともに電撃を喰らった。ショックで床に倒れる。ビリビリとして体が動かない。


 「おい」


 上から声がした。


 「ここから逃げられると思ったのか? 逃げられねえよ」


 足音が近づいてきた。現れたのはクーゴだった。目をギラギラさせている。


 「工場(ここ)は、俺の城だ。俺は工場(ここ)の王だ。ここじゃ誰も好きにはさせねえ。工場(ここ)じゃ誰も俺に勝てねえ。ここじゃ、みんな俺に這いつくばるんだ。 2重3重に(トラップ)が張ってあるからな。工場(ここ)を守るためなら、俺は何だってする。殺人(コロシ)なんて、なんでもねえさ。たとえ、俺の大事な姐さんだとしてもな」


 床に転がる2人を見下ろすクーゴ。


 地下〝工場〟の王。


 臣下の機械(メカ)たちは、無機質な無言。


 レイラとギルバンに電撃を食らわせた細長いロボットは、赤い目をチカチカとさせている。



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