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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
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第180話 2人の大幹部



 スキッド一家(ファミリー)の本部事務所に、ジロモはいた。好都合なことに1人だ。


 「よう、ジロモ」


 声をかける。


 トロンとした目で、ジロモはクーゴを見て、


 「クーゴか。今日は何だ? 縄張り(テリトリー)で何かあったか?」


 「何もねえよ。相変わらず、順調だ。クラブで1人、ラリってぶっ倒れたけど、どうってことない。店の者には、あんまり(クスリ)打ちすぎんなと、言っておいた」


 「お前は細えな」


 と、ジロモ。


 「誰がぶっ倒れようが、そんなの気にする必要ない。俺たちの商売だ」


 「親分(ボス)のいない間、一家(ファミリー)を任されたのは俺だ」


 クーゴは胸を張る。


 「もうすぐ親分(ボス)が出てくるんだ。一家(ファミリー)を疵一つ無い状態にして、お迎えしなくちゃならねえ」


 「ちぇっ」


 と、ジロモ。


 「一家(ファミリー)機械(メカ)じゃない。そんなにいつも綺麗にきちんとしてなくてもいいさ。お前はちょっと神経質すぎるんだ。それに親分(ボス)のいない間戦争(ドンパチ)にならなかったのは、俺が睨みを利かせていたからだぜ」


 「おいおい」


 と、クーゴ。


 「裏街(ここ)の連中が怖れているのは、スキッドの兄貴だ。刑務所(むしょ)にいても、みんな兄貴を怖れている」


 「そうだ」


 ジロモもあっさり認める。


 「それには違いねえ。兄貴あっての一家(ファミリー)だ」


 猛獣(バケモノ)と怖れられる殺し屋ジロモの、スキッドへの忠誠は絶大だった。親分(ボス)への裏切りは、この男も絶対に許さない。


 やっぱりこいつも消すしかないんだ。


 クーゴは頭の中で、忙しく算段をしている。


 一家(ファミリー)の大幹部クーゴ。ビジネスの柱、故買屋稼業を仕切っている。電子ビジネスにも手を広げている。飛ぶ鳥を落とす勢いだ。工業専門学校の落ちこぼれの自分が、今や誰にも畏敬されている。


 それもこれも、親分(ボス)の信頼があるからだ。スキッドを(バラ)して自分が(トップ)になることは、とても考えられなかった。荒くれギャングたちを仕切り、押さえつける力量度量器量は自分にはない。スキッドの威光があってこそ、思うままに仕事ができるのだ。大幹部の地位がある。


 親分(ボス)の信頼を失なったら。築いてきたものを、全てを失う。それどころか命も危ない。


 だから。 


 一家(ファミリー)金庫(かね)を抜いた不始末を隠すため、かけがえのない仲間のミル、そして、目の前のジロモを、始末しなければならないのだ。


 「悪いな、ジロモ」


 クーゴは、内心、呟いていた。


 ジロモを(バラ)す手筈。もう考えてある。ここから、兄貴(スキッド)自慢の秘密通路を使って、地下〝工場〟に連れて行こう。


 あそこはクーゴの城。なんとでもできる。


 直接の戦闘だったら、絶対にクーゴは、ジロモにかなわない。


 だが、そこが付け目だ。ジロモはクーゴのことを、非力な技術屋(メカニック)と見下している。いつも隙だらけなのだ。


 自分の城で(トラップ)を仕掛け、この凄腕の殺し屋を(バラ)すのは、わけがない。


 「ジロモ」


 クーゴはにっこりとして言った。


 「ちょっと話があるんだ。ここじゃまずい。場所を変えよう」


 親分(ボス)の最愛の女と、片腕と頼みにするジロモを(バラ)す。そして何食わぬ顔で、親分(ボス)の下で働く。クーゴ一世一代の勝負である。


 できるだろうか? いや、やるしかないのだ。


 もう、後戻りはできないのだ。

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