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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
179/195

第179話 標的は2人



 「ミル、もう一つ、あの世への土産にいいものをやる」


 クーゴがニヤリとして言う。


 「なに?」


 どうせ、ロクなものじゃないだろう、と思ったが、果たして、


 「ジロモだ」


 「え?」


 「ジロモ。あいつを、お前にプレゼントしてやる」


 ジロモって確か。レイラは警察の記録(データ)を思い返す。スキッド一家(ファミリー)の大幹部で、凄腕の殺し屋用心棒だ。プレゼント? なんのことだ?


 「つまり、こういうこと」


 と、クーゴ。


 「俺はあいつも(バラ)す。あいつが生きてると、いろいろ邪魔なんでね。お前とジロモの死体は、もちろん隠す。そしてお前たち2人が手を取り合って、一家(ファミリー)(かね)を持って一緒に逃げた。そう親分(ボス)に報告するんだ。なかなかいいだろ? お前、あいつとも仲が良かったからな。仲良く一緒に、あの世に行くといい」


 やっぱり、まともな話じゃなかった。


 どういう事情か知らないけど。


 ギャングってのは、平気で血を流すものなんだ。警察の記録(データ)で、わかってたことだけど。


 「さあ、ミル、お祈りするんだな」


 と、クーゴ。


 「俺はこれから、ジロモを()ってくる。確実にあいつを仕留めたら、次はお前だ。今夜中に全部カタはつける。ことは迅速に。それが兄貴(スキッド)の教えだ。お前も覚悟を決めとけよ」


 そういうと地下〝工場〟にレイラを残し、出ていった。



 ぽつんと1人残されたレイラ。


 とりあえずほっとする。


 いきなり殺されなくてよかった。


 でも。手足はがっちり拘束されている。逃げられない。


 クーゴが一仕事して戻ってきたら、今度は本当に殺される。


 抜け出さなきゃ。時間は無い。



 ◇



 クーゴはジロモを探していた。


 ジロモも殺さねばならないのだ。


 最初に一家(ファミリー)の帳簿の不正を見られたのは、ジロモだった。


 

 「おい、これは、なんだ? ちょっとおかしくねえか?」


 クーゴが帳簿の操作をしている時、大型端末を後ろから覗き込んだジロモが言ったのだ。


 「え? なにが?」


 何気ない風を装うクーゴだったが、ジロモは妙な目をしていた。


 「お前、やってることおかしくないか?」


 「そんなことないぜ、なに言ってるんだ」


 クーゴは心底驚いた。ジロモは戦闘員としては裏街(アンダーグラウンド)随一だが、頭のほうはからっきしダメで、帳簿だ会計だのことがわかるわけないと高を括って、堂々とジロモの前で不正帳簿操作をしていたのである。


 「おいおい、ジロモ、お前、(かね)の出入りなんて、何もわからないだろ。俺様は電子犯罪だってやってのけるんだぜ。俺の仕事にケチつけるなよ」


 強気で言い張った。


 「そりゃ確かにそうだ」


 ジロモは言うが、まだ納得できない様子で、


 「とにかく、親分(ボス)が出てきたら、きっちり報告するからな」


 と言った。


 クーゴは冷やりとした。まずい。


 血の巡りの悪いジロモに足を掬われるなんて!


 その時クーゴが考えたのは、ジロモを(バラ)してジロモが一家(ファミリー)(かね)を盗んで逃げたことにする、そういう筋書きだった。だが。いろいろ無理がありすぎだ。ジロモが細かい金庫(かね)の操作を自分でやるのは絶対に不可能だからだ。それは、みんなが知ってること。そこで、ちょうど現れたミル。ミルなら、スキッドから、金庫(かね)を任されていたのだ。ミルが金庫(かね)を抜いたことにする、何の問題もない。


 そして、ミルと、クーゴのやばい秘密を知ったジロモを(バラ)し、2人が一緒に逃げた、という話にする。それしかない。


 クーゴは決めていた。


 ミルもジロモも、大事な仲間、心を許しあった兄弟分であった。


 「でも、1番大事なのは俺だ」


 自分が生き延びるためには。


 大切な仲間でも、裏切り、殺さねばならない。そうしなければ、自分が()られるのだ。


 それがギャングの道なのだ。



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