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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
178/195

第178話 血と金と女



 レイラにも、やっと状況が飲み込めた。


 目の前のクーゴ。確か18歳。まだあどけなさの残るギャング。追い詰められているのだ。レイラを本物のミルだと思い、自分の不始末を押し付け罪をかぶせた上で殺そうというのだ。


 血と(かね)と女。


 これが、ギャングの世界。


 状況はわかったけど。あまり嬉しい立場じゃないことは、よくわかった。


 目の前のクーゴにとって、自分は何が何でも殺さなければならない人間。


 レイラは、なるべく落ち着いて言ってみる。助かるためには、とにかく説得しなくちゃ。


 「ねえ、ちょっと、その話なんだけど」


 「なんだ?」


 「なんだか、危険すぎるような気がするの」


 「どうして?」


 「そう簡単に、お(かね)の操作を、他人に押し付けることができるとは思わないの。それにスキッドは、すごく頭が切れるんでしょ? そんな筋書き(ストーリー)で、騙せるとは思えない。徹底的に調べられたら、きっとボロが出る」


 「そうか?」


 クーゴの顔色が変わった。計画がバレたときの恐怖を感じているらしい。

 

 「きっと無理よ」


 レイラ、ここぞとばかり真剣に、


 「誰かを殺して罪を擦り付けるなんてダメ! そんなの法と正義が絶対許さないんだから」


 「おいおい」


 つい刑事の癖を出したレイラに、クーゴは呆れたように、


 「なんだ、ミル、忘れたのか? 俺たちはとっくに法と正義を無視する稼業に染まってるんだぜ」


 「……とにかく、そんなのダメ! 絶対うまくいきっこないから!」


 「うーん……」


 考え込むクーゴ。


 「じゃ、どうすればいいんだ? 親分(ボス)一家(ファミリー)(かね)使い込んじゃいました、許してくださいって言うのか? それで助かるかな? 絶対にそれはないぞ」


 スキッドは一家(ファミリー)の仲間を大事にするが、裏切りや(ルール)違反には容赦なかった。功労者幹部であっても、親分(ボス)を騙そうとした者には血の制裁である。


 「組織(ファミリー)を守るのに必要なのは統制だ。甘いことをしたら、すぐに一家(ファミリー)はガタガタになる」


 いつもそう言っていた。


 ギャングの事情はよくわからないけれど。レイラは言った。粘り強く説得。


 「逃げることね」


 「逃げる? 高飛びか。いや、俺も最初に考えた」


 と、クーゴ。


 「そう。ギャングのお(かね)の出入りなんて、警察も裁判所も問題にしないから。誰も殺さずに逃げるなら、犯罪にはならない。逃げなさい」


 またまた、ついつい刑事の口調になるレイラに、クーゴは、


 「ダメだ!」


 きっぱりと言う。


 「俺だってギャングだ。勝負するときには勝負する。この〝工場〟だって俺のものだ。俺が作ったものだ。誰にも渡しはしねえ。せっかく命懸けでここまできたんだ。全部捨てて、ビクビクしながらずっと隠れて暮らすなんて、絶対に嫌だ。バレたら? その時は、その時だ。覚悟してるぜ。やっぱり、筋書き通りにするからな。悪く思うなよ。ミル、お前もギャングの世界に生きてきたんだ。血を流す覚悟はできてるだろ? お前のことは、決して嫌いじゃなかった。むしろ好きだったぜ。だから最後も楽に殺してやる。苦しんだりしないようにな。それが俺がお前にできる、最後のことだ」


 うーん、説得失敗か。


 青ざめるレイラ。宇宙警察の刑事ともあろうものが、ギャングのゴタゴタに巻き込まれて地下でひっそりと殺されちゃうなんて!


 絶対にやだ!


 どうしよう。必死に考えるレイラ。



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