第176話 思い出の場所へ
なんだか、まずいことになった。
やはりギャングに関わるべきじゃなかった。当たり前のことだけど。
レイラは、そう思ったものの。
クーゴにナイフを突きつけられ、歩かされる。背中に冷たいものを感じる。
「どこへ連れて行くの?」
「こっちだ」
事務所の横の壁、すっと開く。通路が現れる。
クーゴはニヤリとする。
「スキッド兄貴自慢の裏戸だ。ミル、知ってるよな。秘密の通路。便利なもんだぜ。うちの縄張りには、これがいっぱい作ってあるからな。兄貴は俺のことは信用してくれて、教えてくれたんだ。まったく大した兄貴だぜ」
なるほど、これが裏戸のスキッドの縄張りか。レイラは黙って通路に。
すぐ後ろにナイフを突きつけたクーゴが、ついてくる。
少し行くと。
ガレージに出た。誰もいない。
「乗るんだ」
クーゴはエアカーを指す。
「ねえ、本当に私はミルじゃなくてーー」
言ってみるがクーゴは、
「まだ言ってるのか。わかったよ。話は後でじっくり聞くから」
取り付く島もない。
レイラは、ひとまずエアカーに乗り込むが、
「ああっ!」
強い衝撃を感じた。電撃ショックだ。クーゴはナイフだけでなく、電撃銃も持っていたんだ。やられた。
意識が遠くなった。
◇
だんだんと意識がはっきりしてきた。
私、何やってるんだろう。
アスターシャの案内でクラブへ行って。
ギャングの事務所に案内されて。
クーゴにナイフで脅されて、エアカーに連れ込まれて。
電撃ショックを食らって意識を失った。
目を開ける。
「気がついたかい?」
目の前にいるのは、クーゴ。
レイラは床に座らされている。手足はきっちりと縛られていた。身動きできない。
「ちょっと、どういうつもり? 私をどうするの?」
レイラは、きっと睨むが、クーゴは、
「ミル姐さん、そんな顔するなよ。俺は、あんたのことが、昔から大好きなんだぜ」
「私はミルじゃないって」
「もういいよ。そういうのは。さ、ここは、あんたの思い出の場所だぜ」
レイラ、周囲を見回す。
広い。
エアカーがある。ガレージか? いや、各種の大型電子機器に、ロボット、それに工作機械が所狭しと並んでいる。
「おかえり、ミル。俺の〝工場〟だ。俺がここの長だ。覚えてるだろ? 姐さんとスキッド兄貴の、最初の夜の場所だ。忘れられるわけねえよな」
クーゴ、くっくっと笑う。異様な眼をしていた。




