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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
175/195

第175話 ギャングの事情



 「ごくろう、みな、下がってくれ」


 クーゴの声に、黒服たちは一礼して部屋を出て行く。背後で扉が閉まった。


 事務所には、クーゴとレイラの2人きり。


 「ミル、嬉しいぜ」


 クーゴは言う。 


 「いなくなった時、心配したんだぜ。必死に探したんだけどな。別の星に行って顔を変えた? そこまでする必要なかったんだけどな。所詮警察(サツ)なんて、たいしたことはできやしねえ。お前は本当に心配性だな。ま、これでみんなで兄貴のお迎えができるってわけだ」


 兄貴。スキッドのことか。確か釈放出所まで、あと9日だ。


 「あの、私」


 レイラは言う。これ以上、巻き込まれちゃいけない。


 「申し訳ないんだけど、ミルじゃないから」

 

 「おいおい」


 と、クーゴ。レイラがミルであることを、疑う様子は無い。


 「どうしたんだ? 戻ってきたのに別人だと言ったり。俺をからかっているのか? まだ心配だから、様子見てんのか? 何の問題もないんだぜ。親分(ボス)がいない間、縄張り(テリトリー)は俺とジロモがしっかり仕切ってる。警察(サツ)にも、よその一家(ファミリー)にも、誰にも手出しされてねえ。だから堂々と兄貴をお迎えできるんだ。ミル、お前さえいればな。兄貴が戻ってきた時、お前がいなかったら、まったく、俺たちの顔が立たないんだぜ」


 「だから、私ミルじゃないから。本当に」


 レイラは言うが、


 「何言ってんだよ!」


 クーゴは声を荒らげる。


 「頼むから、そういう遊びはもう終わりにしてくれ。俺の立場も考えてくれ。ひょっとして顔変えたってことは、1度はここを抜けようと思った、そういうことなのか? でも戻ってきてくれた。また一緒にやろうぜ。顔を変えたことなんて誰も気にしてねえよ。この世界じゃよくあるからな。新しい顔の画像も、さっそくスキッドの兄貴に送ってるぜ。兄貴、新しい顔のミルに会うの楽しみにしてるってさ」


 教育更正処分で拘置中のスキッドにも、画像、いってるんだ。ギャングだから、刑務所内にも秘密のルートがあるんだ。スキッドがレイラの顔を、自分の女、ミルの顔だと覚え、会うの楽しみにしている。それはそれで、まずい気がする。


 クーゴは事務所の机の上の大型端末を起動させる。


 「ミル、見てくれよ。俺がしっかりここを引き受けてたからな。兄貴のいない間の収入(あがり)も、問題ないぜ」


 ギャングの事情。もう、付き合っていられない。


 「何度も言ってるけど、私、ミルじゃないから。悪かったわね。それじゃあ、これで帰らしてもらうから」


 レイラは、クーゴに背を向け、(ドア)のノブに手をかけるが、開かない。鍵が、かかっている。


 「おっと、ミル」


 背後からクーゴ。


 「今日ばっかりは、どうしても、ミル、お前の好きにさせるわけにはいかねえんだ」


 レイラの背に、ナイフを突き立てる。


 「さあ、わかったろ」


 クーゴが、レイラの耳元で囁く。


 「言うことを聞いてくれ。どうあってもな。今は、俺が親分(ボス)だ」

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