第145話 ギャングの闘い 〜3年前の出来事(3)
「俺はスキッド。グルーリン一家の者だ」
スキッドは、名乗る。グルーリンは、スキッドの親分だ。ギャングのメンバーである以上、筋を通さねばならない。
「それが、どうした」
茶色のコートの男は、へっへっ、と笑う。
「知らねえな。小僧。誰かの名前出しゃ、こっちがビビると思ってんのか? これだから、ガキはいけねえな。ち、しけた街だぜ。やっぱし俺みたいな教育係がここには必要なんだ。おい、小僧、俺の名前を教えてやる。ゴレヌってんだ。とっとと帰れ。俺はそのお嬢ちゃんに、用があるんだ」
なんだ、この男は。
スキッドは、呆れる。
グルーリンの名前を知らない? 街のギャングについて何も知らないのか? ギラミ一家の者じゃないんだ。ゴレヌだって? 確かに、聞いたことない。
やっぱり流れ者のギャングが。それならば。こいつこそ、ここで勝手な商売をさせるわけにはいかない。
ミルはすっかり怯え、スキッドの後ろに隠れている。
ゴレヌが、言う。
「おう、小僧、どけよ」
「街から、出て行くんだ」
スキッドは、静かに言った。
ゴレヌの目が、見開く。もう、言葉を交わす時間ではない。
「ミル、離れるんだ。逃げろ。さあ、早く!」
背にぴったりとくっついている少女。スキッドは振り向かずに言う。
ミルは、はっとして、後ろへ駆け出した。
よし。ひとまず、ミルは守れた。スキッドは、ほっとする。でも、普通なら足が竦んで動けないところだ。すぐに走れた。あの子、意外と肝が据わっているな。そんなことも、思う。
◇
狭い路地に立つ2人。
ゴレヌは、メリケンサックを嵌めた右の拳を突き出し、斜に構えている。
銀色に光るメリケンサック。だが、あれは誘いだ。
スキッドは、ゴレヌの左手が、すうっと後ろに隠れるのを、見逃さなかった。
後ろにも武器を隠している。流れ者が、街のギャングと抗争しようというのだ。仲間を呼ばれる前に、一発で決めようとしてくるだろう。
隠している武器が何かを考える時間はなかった。
スキッドも、ジャケットの下、右の腰に、光線銃を提げている。しかし、それを抜くのでは、相手の方が一瞬早い。
冷静に計算する。
今、怖いのは。相手に先を取られること。
スキッドは、ゴレヌの左腕に腕に飛びかかった。この腕を封じなければいけない。
いきなり飛びかかられて、ゴレヌも不意を突かれたようだ。スキッドが先手をとれた。ゴレヌの左腕をとらえる。左手が握っていたのは、
やはり、光線銃だった。
一瞬遅れていたら、スキッドが撃たれていただろう。
ゴレヌは、何か叫ぶと、右手を振り上げる。自分の左腕にしがみつくスキッドの背に、メリケンサックをぶち当てようというのだ。
しかしスキッドは、ゴレヌの左腕を掴むとそのまま捻り上げ、自分を巻き込むようにして、路上に、ゴレヌを投げ倒す。
もつれながら倒れる2人。ゴレヌのメリケンサックは、空を切った。
光線銃が、カラカラと乾いた音を立て、路上に転がっていった。




