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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
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第144話 路地のギャング 〜3年前の出来事(2)



 冬の凍てついた夜も。


 スキッドと並んで歩くミルの浮き立つ心を凍らせることはできなかった。


 「ねえ、スキッド」


 頬を上気させて、ミルは言った。


 「施設を飛び出してから、あなた、ずっとここにいたの?」


 「ああ。ここに飛び込んで、根城にしてた。ちょっと少年更生院(がっこう)にも行っていたけどな」


 スキッドは、横のミルを見て、考え込んでいる。無邪気で、可憐な子だ。


 「ミル、今日はもう遅い。俺の寝ぐらに来い。でも、明日には施設に戻るんだ」


 「なぜ?」


 「さっきのでわかっただろう? ここは危ないところだ。ここにいちゃ、だめだ。帰るんだ」


 「やだ」


 ミルは、きっぱりと言う。


 「おい、ミル」


 スキッドは、言葉を切った。誰かの責任を持つなんて、自分にはできないんだ。しかし、邪慳に突き放すことはできない。


 しばし無言のまま歩く2人。


 

 曲角に来た時。


 「よお」


 声をかけられた。


 狭い路地。薄暗い街灯。


 前に、茶色のコートの男が立っていた。かなり背が高い。


 「なんだ?」


 と、スキッド。素早く相手を見定める。20歳前後。額に疵がある。右の拳には、銀色のメリケンサックが光っている。


 単なるハッタリ野郎じゃないな、相手の風貌から、スキッドは踏んだ。喧嘩慣れしている。これは気をつけないと。


 「お前ら」


 額に疵の男は言う。


 「そっちから、フラフラと腹を抑えて走ってくる酔っ払いがいた。話を聞いたら、女と、それとつるんでる男に嵌められて(かね)を巻き上げられるところだった、そう言うじゃないか。いい商売しているな。ここが誰の縄張り(テリトリー)か、わかってるのか?」


 「商売なんてしてない」


 ミルが言った。

 

 「あの酔っ払いが絡んできたのよ。それで、助けてもらったの」


 「へえ」


 茶色のコートの男、ミルをジロリと見る。ミルは、()っとして、思わず、スキッドに身を寄せる。 


 「いろいろ言いたいことがあるみてえだな。うちの事務所で話を聞こう。お嬢ちゃん、この街は初めてか? ここにはいろいろ(ルール)ってものがあってな。特にうちは、上品な商売をやってるんだぜ。一般市民のお客様に、迷惑をかけちゃいけねえな。商売したいなら、ちゃんと許可を取って、払うもの払ってするもんだ。まあ、たまにその辺わかってない坊ちゃん嬢ちゃんがやってきて、ことを起こすけどな。だから俺みたいな教育係がいるんだ。わかったか? さ、来い」


 茶色のコートの男、ミルの方へ一歩踏み出す。スキッドのほうは見もしない。


 スキッド、素早く頭をめぐらせる。


 この辺りのギャングについてなら、スキッドもよく知っている。この男は、初めて見る顔だ。でも、その口ぶりからすると、ここの縄張りとするギラミ一家の人間らしい。新入りか? それとも、流れ者が街のギャングを装っているのか?


 どちらにしても。ここの(ルール)をわかってないのは、この男のようだ。


 「おい、やめろ」


 ミルに手を伸ばそうとする茶色のコートの男に、スキッドは言った。


 男はゆっくりと、スキッドの方を向く。


 ニヤリとしているが、全身警戒態勢。コートの下。力が漲っているのがわかる。


 喧嘩はお手の物ってことか、戦い慣れてるな。スキッドは、鋭い視線を走らせる。


 いいだろう。


 血を流す覚悟。いつでも、できている。



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