第140話 ミルのファイル
ミル。
正式な本名をミル・フレイザーという。
スキッドのギャング団のファイルに、ミルのデータもあった。
孤児院出身。3年前、15歳で裏街に出て、スキッドの女となり、それ以来、ずっとスキッドの側にいた。
アスターシャの言っていた通りだ。
ミルの画像もいろいろあった。アスターシャとそっくりの顔だ。紫の瞳。豊かな藍色の髪。昔、スキッドと一緒に撮られた画像。まだ幼く、自信なさげに見える。
だが。スキッドが頭角を現し、手下を従え、自分のギャング団を構えるようになると、ミルも次第に自信に満ちた顔になってくる。派手な身なりをするようになってくる。
アスターシャは、裏街のミルのことを、「肩で風を切っていた」「したいように振る舞っていた」と言っていた。
それはそうだろう。ギャングのボスの女なのだ。
ミルの経歴。スキッドとの関係については書いてあるが、逮捕歴は、まだなかった。微罪での一時勾留が何回かあるだけである。ギャングのボスの女という立場だ。全く犯罪行為に手を染めてないということは、考えにくい。だが、大きな事件には、関わっていないようだ。スキッドが、ミルが犯罪に関わるのを、極力避けていたのだろうか。
半年前の一斉摘発でも。
ミルに逮捕状は、出ていない。
だが。
ミルは、裏街から、消えた。他の星へ逃げて手術で顔を変えた。
警察の追及を恐れたのか? いや、それだけではないだろう。自分を守ってくれるボスのスキッドが捕まったことで、身の安全の危険を感じたのではないだろうか。ギャング同士の抗争も、激しいのだ。
ボスの女も、狙われる立場にある。顔まで変えたと言うのは、よほどの危険を感じたのだろう。
しかし、一旦、姿をくらましたミルだが。結局、自分には逮捕状は出なかった。仲間のギャングたちもすぐ釈放され、スキッドも短期の収監処分になっただけだった。
それでミルは、安心した、ということか。
この星に、裏街に、戻ってくるつもりになった。
その様子見に。
新しい顔の画像を、妹のアスターシャや、仲間たちに送ってきた。
ただ新しい顔の画像を送ってきただけ、というのはどうも中途半端なやり方にみえるが。ミルも、まだ帰ってくることを、迷っているのかもしれない。しかし、完全にスキッドと、裏街のギャング達と決別するつもりなら、せっかく変えた顔をみなに教えることは、ありえないだろう。
ミルは、帰ってくる。いや、もう、この星都に、ひょっとしたら裏街のどこかに、潜んでいるのかもしれない。
ほぼ、間違いなく。ミルはスキッドの出所前に仲間たちのところに現れ、一緒にボスの出所を出迎え祝うのだろう。
スキッドの出所、10日後だ。
レイラとそっくりの顔のミル。すぐ身近にいるのかも。




