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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
139/195

第139話 ギャングの異名



 下着モデルの寮に帰ったレイラ。


 自分の警察証を使い、宇宙警察のデータバンクに、アクセスする。


 スキッド。何度も聞いた名前。裏街(アンダーグラウンド)のギャングだという。この男について、調べるのだ。


 スキッドのファイル。すぐに出てきた。かなりの量のファイルだ。レイラは、丁寧に、目を通していく。


 スキッド。裏戸(バックドア)のスキッドの異名を持つ。



 ◇



 スキッドは、まだ若い。18歳だった。


 孤児院出身。13歳のときには、施設を飛び出した。方々で問題を起こし、すぐに、少年更生院に入れられた。そこでは更生ではなく、悪い仲間を作るのに、役に立っただけだった。15歳のときには、裏街(アンダーグラウンド)で、ひとかどのギャングとなった。


 最初は、いかがわしい店の用心棒や、少年少女の恐喝に強盗、違法薬物の売人をやっていたが、やがて、腕っ節の強さ、冷静沈着な判断力、仲間を集め支配する統率力によって、メキメキと頭角を現し、他のギャング団と抗争をしながら、自分のギャング団とその縄張り(テリトリー)を持つようになった。裏街(アンダーグラウンド)でも、最も若いギャングの親分(ボス)の1人である。配下のギャングは、50人前後とみられている。故買屋稼業に、自前の地下賭博場を、仕切っている。


 一般市民に対しては、強盗恐喝などは行うが、殺人(コロシ)はしない。一方、ギャング同士の抗争や内輪揉めでは、容赦なく、冷酷に血を流す。裏街(アンダーグラウンド)のギャングの掟に忠実なのだ。


 裏街(アンダーグラウンド)を監視する星系警察は、これまでに、少なくとも3件の殺人に、スキッドが関与していたと見ている。だが、殺人で検挙することはできなかった。証拠を残さないのだ。殺人だけでなく、他にも重大な犯罪容疑があるのだが、立証できない。せいぜい微罪軽罪で引っ掛けて、勾留するくらいだが、もちろんそれではスキッドは、びくともしない。


 抜け目のない若いギャング。完全に警察を出し抜いていた。そして、ギャングとの抗争でも、絶対にヘマはしなかった。襲撃された時でも、すぐに姿を消す。そしてしっかり獲物を狙い定め、用意周到に手はずを整えて、逆に襲いかかる。報復する。神出鬼没だった。足跡を残さない。犯罪の証拠も、自分の居所も、消すことができた。対抗するギャングを恐れさせ、警察も舌を巻いていた。


 裏戸(バックドア)のスキッド。


 その神出鬼没ぶりから、ついた異名である。いつも自分の隠れる裏戸(バックドア)を持っている。


 

 レイラは、スキッドの画像を見つめる。


 流れるような銀髪を逆立てた、赤い瞳の男。なかなか美形である。


 警察のデータには、スキットの画像がたくさんあった。要警戒犯罪者の大物のようだ。無数の容疑がかけられている。


 年代順に見ていく。


 孤児院時代の画像があった。まだギャングにはなってない。どこか、寂しそうな顔。


 15歳。裏街(アンダーグラウンド)の小さな喧嘩で、初めて警察に勾留されたときの画像。幼さを残すが、すでに、不敵な面構え。


 そして、ギャングとして名を挙げ、ボスになっていく過程の画像。自信に満ちた風貌。早くもボスの貫禄が出てきている。銀髪で、赤い瞳の若きギャングのボス。


 スキッドのギャング団のメンバーについての情報も、あった。


 レイラが、今日見た顔が出てくる。


 ジロモ。スキッドの用心棒。20歳。殺し屋だ。スキッドの命令で殺人(コロシ)の実行役をこなしているとみられているが、こちらもボスのスキットが周到に証拠を消しているので、逮捕有罪になったのは、傷害罪での1度きりである。


 あれが殺し屋だったんだ。レイラは、カードルームでのことを思い返す。長身の男。不格好な大きな頭。大きな拳。トロンとした目だった。だが、命令されれば、迷いなく殺人(コロシ)を請け負う。


 やっぱり危険な場所だったんだな。今さらながら、身震いする。


 そして、クーゴ。今日会ったデニムの男。18歳。レイラを仲間のところに引っ張っていった男。


 元工業専門学校生。グレて学校をやめ、ギャングになった。手先が器用で機械(メカ)いじりが得意。盗難車や、盗難品の電子機器の解体修理、闇の転売に、その才能を発揮している。最近では、電子マネー犯罪にも手を染めている。


 その他のギャングのメンバーのファイルを、レイラは、丹念に追う。


 優秀な手下を従え、裏街(アンダーグラウンド)のボスの1人として、名を轟かせていたスキッドだったが、転機がきた。


 半年前だ。


 有力な密告があった。警察にとって手強い相手だったスキッドのギャング団も、遂に一斉に逮捕された。確かな情報があったため、さしものスキッドも逃げることができず、不意打ちを食らって捕まった。警察は、今度こそは、犯罪を洗いざらい調べ上げて、一味を長期刑にしてやると意気込んだが、やはり証拠を固めることができなかった。


 ジロモやクーゴは、すぐに釈放となった。


 スキッドについては、警察が執念の捜査を行ったが、結局、重大事件は立証できず、短期の教育更生処分となり、数ヶ月の収監となった。裏戸(バックドア)のスキッドの足跡、またも警察は追うことができなかったのである。



 スキッドが出所するのは。


 今から、10日後だ。


 なるほど。スキッドの仲間が(ざわ)めいていたわけだ。



 そして。


 レイラは、なおも、ファイルを追う。


 ミル。


 スキッドの女。



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