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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
138/195

第138話 ミルの新しい顔


 

 「おい、クーゴ」


 不満そうなジロモ。


 「なんで止めないんだよ。さんざん探し回っても見つからなかったミルが、せっかく帰ってきたんだぞ。どうするんだ? ここに顔を出したけど、また出ていかれた、どこに行ったかわからない、もう見つかりません、兄貴に、そう報告するのか? おまえ、どうなるかわかってるのか?」


 甲高い声。トロンとした目、殺気を帯びている。カードルームの暗黒街住人(アウトロー)たち、固唾を飲むが、クーゴは、


 「これでいい」


 静かに言った。


 「なんでだよ」


 「ミルには、ミルの考えがある。どこかに行って、顔まで変えている。まだ完全に俺たちのところに戻ってくる踏ん切りが、ついてないってことだ。今日はちょっと様子を見にきたんだ。なに、裏街(アンダーグラウンド)にいるんだ。問題ない。また、しっかりと顔を出してくれるさ。兄貴の出所の事だって、知ってるんだろう。それで戻ってきたんだ。だいたい、ミルのこと、どうするんだ? 逃げ出さないように、捕まえて、どっかに閉じ込めておくのか? それこそ、兄貴を怒らせるぜ」 


 みなは、黙った。ジロモは、まだ不満そうにしている。物事がすんなり運ばないと、苛立つのだ。


 「ねえ」


 と背の低い女。


 「今の子、ひょっとして本当に別人て事は無いのかな?」


 「それはない」


 クーゴが、首を振る。


 「ミルが手術で変えた顔と、そっくりの女がこの裏街(アンダーグラウンド)にいて、しかも、いかにもミルな格好をしてる。偶然で、そんなこと起きるはずがない。あれは、間違いなくミルだ」


 独り、頭を忙しく動かすクーゴ。


 突然帰ってきた、ミル。これは思いがけない獲物かも。


 

 ◇



 カードルームを飛び出したレイラ。


 ゲームセンターの迷路の中に、潜り込む。


 大きなゲーム機の後ろに隠れて様子を伺うが、誰も追ってこない。


 とりあえず、ほっとした。


 ギャングだ暗黒街住人(アウトロー)を恐れているわけではない。今は、トラブルを起こしたくないのだ。


 「そうだ、アスターシャは」


 どこにいるんだろう。レイラは、慌てて連れを探そうとするが、


 「レイラ」


 ぽんと、肩を叩かれた。


 アスターシャだった。レイラは、一つ息をして、


 「よかった。あなたは、何もなかった?」


 「うん。それよりレイラ、何があったの? あなたこそ、大丈夫だった?」


 「話すよ。とりあえず、外に出よう」


 

 2人は地下ゲームセンターを出て、エアカータクシーに乗りこむ。


 「ねえ、アスターシャ、びっくりすることがあったの」


 「うん。なに?」


 「ミルは、新しい顔の画像を、ここの仲間たちにも、送ってたの」


 「えっ」


 アスターシャは、目を丸くする。


 「本当に?」


 「うん。さっき、私、奥のカードルームに引っ張りこまれた。会ったのは、ミルの仲間たちよ。ミルから新しい顔の画像が送られてきたって言っていた。見せてもらった。あなたに送られてきたのと同じ画像を、持っていた。だから、私の顔を見て、みんな、ミルだと思ったの。私、困っちゃって、別人だって言って逃げ出してきたの」


 「そんな……」


 アスターシャ、考え込む。


 「レイラ、それ、どういうことだろうね。なんでわざわざ、変えた顔を、ここの仲間にも送ったんだろう」


 「私にも、わからないよ」


 レイラがそれを知りたいくらいだ。


 「やっぱり、ここに戻ってこようとしてるんじゃないのかな」


 「帰ってくる……それなら嬉しいけど。それならまず、私の所に来て欲しいな」


 アスターシャは、ミルが裏街(アンダーグラウンド)を離れて、自分とアルデランタ家で優雅にのんびり暮らすことを、望んでいるんだ。


 だが、そうはいかないようだ。


 「ねえ」


 レイラは訊く。


 「ミルの仲間から、スキッドって名前が、よく出るの。知ってる?」


 アスターシャは、一瞬の沈黙の後、


 「ギャングよ」


 目を伏せて言った。


 「ミルは、スキッドの女だったの」



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