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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
135/195

第135話 聖地巡礼第2夜



 「さ、行こ」


 と、アスターシャ。今日も、黒のワンピースに、黒の帽子と、顔を隠す黒の面紗(ヴェール)


 その姿を見るのにも、慣れた。レイラがミルと同じ格好をして現れただけで、ミルの仲間に声をかけられた。昔のミルとそっくりの双子の妹アスターシャが顔を出して現れたら、えらい騒ぎになるだろう。何回か一緒に街に来たというから、双子の妹のことは、知られてはいるのだろうけど


 レイラの今日の服装(コーデ)。また、キャミソール。肩から腕を丸出し。さらに大胆に露出している。そして今度は、タイトスカート。ピシッとタイトな服に、腕輪や、胸飾り、耳飾り(イヤリング)、ジャラジャラ、キラキラとぶら下げている。


 「ねえ、ミルと全く同じ格好ってのは、まずいよ。覚えてる人いるみたい。変な人に絡まれてトラブルになったら、あなたも巻き込まれちゃうかもしれないし」


 と、レイラ。この前のことを思い出しながら言う。


 「そうね」


 と、アスターシャ。自分が選んだレイラの服装(コーデ)の出来に、大満足の表情。 


 「この前と違って、全く同じにはしてないから。ミルのイメージね。新しいミルだったら、こんなのが似合うかなって私が考えたの。どう?」


 「そうなんだ。うん、これ、いいよ」


 レイラは、たくさんぶら下がっているアクセサリーをしげしげと見て、


 「意外と気に入ったかも。あまり普段しない格好に挑戦するのって、面白いね」


 本職(プロ)の下着モデルである。仕事でのトリッキーな服装(コーデ)には、慣れているが、モデルになって、まだ日は浅い。普段の私服、おしゃれはしているが、そこまで人目を惹くことは考えていない。ここまで大胆な格好で街歩きするのは、初めてかな、とレイラは思った。



 夜の裏街(アンダーグラウンド)。追憶の聖地巡礼2回目。


 行く先は、地下のゲームセンターだった。


 ゲームセンターといっても、子供は立入禁止。バーもあれば、奥のカードゲームルームで賭金をしている者もいる、大人の遊戯場。


 レイラとアスターシャ、けばけばしい電飾の扉をくぐり、中に入る。



 ◇


 

 やたらとまぶしい照明。昼よりも明るいな、とレイラは、目をしばたたせる。


 今日は、夜も遅い時間に来た。中はごった返している。熱気と汗、香水の匂いが渦巻く。目がチカチカしている者もいる。さっそく違法薬物(ドラッグ)をキメてるのか?


 レイラ、周囲の様子を伺いながら、ゆっくりと歩く。少し離れて、アスターシャがついてくる。今日は、いろいろ歩いてゲームをしてね、離れてついていくから、と言われている。


 ミルっぽくゲームをする? よくわからないけど、とりあえずいろいろやってみればいいんだ。


 レイラは、まずは勝手知ったるクレーンゲームに取り掛かる。このゲームは普通だ。いつもやってるように、ぬいぐるみを取ろうとするレイラ。


 かわいい熊のぬいぐるみに、狙いを定める。



 ふと、気づいた。


 アスターシャの視線。いや、そうじゃない。アスターシャのいる方の、反対側から、視線が。


 それとなく伺う。見てる。はっきりとこっちを見ている。デニムの男。若い。まだ少年のようだ。


 なんだ? ちょっと距離を置いてクレーンゲームを見るのが、ここで流行なのか? いやいや、なんでもない。こういうところじゃ、誰かを見たり、見られたり、当然だし。


 デニムの男の視線をずっと感じる。どうも落ち着かない。レイラは、クレーンゲームを何度も失敗し、そこを離れた。



 ゆっくり歩く。店内に並ぶゲーム機。狭い通路。すれ違いざまに、肩が触れそうになる。わざと迷路のように入り組んだ店内になっている。隠れてあれこれするのに、絶好の場所。



 ついてきている。


 デニムの男。かなり近い距離で。別に、姿を隠して尾行するつもりはないようだ。ふらふらと、レイラの後ろについて来る。 


 「一夜のお相手探しか?」


 それがたぶん、一番ありそうな可能性。そうだったら。すぐ断って、場所を変えよう。


 背後に注意を向けていたレイラ。不意に脇から現れた男に、ぶつかりそうになった。


 「おっと、危ねえな」


 だいぶ酒が入っているのか、男は顔を赤くしている。大柄だ。


 顔をくっつけるようにして、レイラを覗き込んでくる。


 「おい、嬢ちゃん、気をつけるよ」


 ニヤリとして、酒臭い息を吐く。


 「見ねえ顔だな。ここは初めてなのか? ここは嬢ちゃんが遊びにおいでになるようなとこじゃ、ねえんだぜ。ここのことが、よくわかってねえなら、俺が教えてやろうか?」


 レイラの腕をつかむ。 


 落ち着いて腕を払おうとしたレイラだが、その時、


 「やめろ」


 デニムの若い男だ。すぐ後ろに立っていた。


 「お前、この人が誰か、わかってるのか?」


 え?


 何を言ってるんだ? レイラ、何のことかわからない。デニムの若い男。初めて会うはずだ。私の事、誰だかわかっているの?


 なんで?



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