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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
131/195

第131話 ざわめく街



 とうとう裏街(アンダーグラウンド)に着いた。


 シン・トーキョー星の大繁華街の1つ。


 広く、とても深い区域(エリア)


 レイラとアスターシャ、エアカータクシーを降りる。



 宵闇をかき消す明るいネオン、イルミネーションの洪水が2人を歓迎する。この街は、夜の顔が本当の顔なのだ。


 「賑わってるね」


 レイラ、あたりを見回す。


 これから活気づいていく時間だ。


 街に刹那の快楽を求める人々が、次々と吸い込まれていく。


 面紗(ヴェール)の下のアスターシャの表情は、見えない。しかし、迷いなく歩き出す。レイラもついていく。今日は、アスターシャの追憶と感傷(センチメンタル)に、とことん付き合うのだ。


 街のメインストリート。雑踏の中、2人は歩く。


 裏街(アンダーグラウンド)。といっても、普通のショップや、飲食店、ゲームセンターで賑わっている。もちろん、それだけではない。夜の蝶が舞う店も多く、違法な地下賭博場もあるはずだ。客引きに、たむろする酔っ払い。昼も夜も関係なく、へべれけになっている人間は、この街に多い。



 アスターシャの格好。思ったより、目立っていない。さすがに面紗(ヴェール)をしてる人は見かけないが、何しろ裏街(アンダーグラウンド)だ。型破りな格好、トリッキーな服装(コーデ)の人は、いっぱいいた。面紗(ヴェール)の少女など、それほど目を引く存在ではない。なにかのテーマの衣裳(コスプレ)だと、思われているようだ。この街で人目を惹くには、もっとパンチの効いた格好でないとダメだ。



 アスターシャは、ずんずん進んでいく。メインストリートから、横路へ。そしてさらに狭い裏通りへと、曲がっていく。迷いは無い。携帯端末(パッド)で、地図の確認もしない。道順を、しっかりと覚えているようだ。



 「ここに、入ろう」


 ややくすんだ色のビルの前で、アスターシャは立ち止まる。どぎついネオンが輝いている。


 「地下に、酒場(バー)があるんだ。何回か、ミルに連れられてこの街に来た。その時、ここに入ったの。ミルの、お気に入りの店だったみたい」


 ちょっと妖しい雰囲気がする。ミルのお気に入りの店なら、そんなものだろう。


 「うん。いいよ」 


 「あの、お願い、レイラ」


 「なに?」


 「あなたに、なるべく、ミルそっくりにして欲しいの」


 「そっくりに?」


 アスターシャは、レイラに、どこにどう座るか、何を注文するか、そしてどんな身振りをするか、などなどを説明する。


 「わかった、いいよ」


 と、レイラ。


 今日は、アスターシャの追憶と感傷(センチメンタル)に付き合うと、決めたんだし。


 「それで、私は」


 と、アスターシャ。


 「ちょっと離れて座るね。ミルの姿を、しっかり見ていたいの」


 「え?」


 戸惑うレイラ。どういうことだろう? 店の中で、離れて座る? それってつまり。今日は、アスターシャは、レイラとおしゃべりをしたいのではなく、ただ、ミルを感じたい、ミルとの想い出、感傷(センチメンタル)に浸りたい。ミルらしく振る舞うレイラは、追憶の走馬燈の情景、ということか。そうしたいなら。別にいいだろう。



 2人は、地下への階段を降りる。


 酒場(バー)。けばけばしい装飾の扉を開けて入ると、中は意外と広かった。ダンスフロアがある。暗い照明。重低音の音楽。


 まだ、宵の口。


 客は、少ない。


 レイラは、カウンターの隅に座った。


 アスターシャは、もう一方の端に、座る。


 2人で店に入って別々に座るって、なんだか変だけど。


 アスターシャは、レイラを見つめている。


 面紗(ヴェール)の下の表情は、見えない。


 ミルのお気に入りの店。


 ミルの世界。



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