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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
130/195

第130話 覚えている顔、新しい顔



 買い物を終え、すっかりミルの服装(コーデ)になったレイラ。


 2人は、エアカータクシーを呼んだ。


 裏街(アンダーグラウンド)へ向かう。



 「ねえ、アスターシャ」


 と、レイラ。


 「その、今日、一緒に裏街(アンダーグラウンド)に行くっていうのは、あなたの姉のミルの想い出の追体験をする、そういうことだよね」


 「うん」


 と、アスターシャ。 


 「レイラ、あなたと一緒だと、本当にミルと一緒にいるみたい。そんなふうに思えちゃうの」


 「うーんと、ミルは、この星を出て、手術で顔を変えて、私の顔になったんだよね。あなたが一緒に街歩きしたミルと、私は別の顔。それでいいの? 思い出がおかしくならないの?」


 「そうじゃない」


 アスターシャは、首を振る。


 「私は、今のミルと、一緒にいたいの。ミルは過去にいたんじゃない。今も、ちゃんといるんだもの。だから、ミルの新しい顔のあなたの姿を、しっかりと目に焼き付けて、胸に刻んで、とっておきたいの。絶対に忘れないようにするの。それで一緒に来てって、お願いしたの」


 そういうものか。


 なんだか、複雑な感情だけど。


 アスターシャは、新しいミルの顔を、送られてきた画像でしか知らない。それがたまたまレイラとそっくりだった。そこで、画像だけでなく、生きているミルの姿で思い出を作り、いつか再びミルに出会うまでとっておきたい。


 会えない姉への想いが紡ぐ、絡み合った感傷(センチメンタル)


 ま、街に付き合えば、それでいいんだ。


 難しいことを、考える必要はない。



 ◇



 裏街(アンダーグラウンド)の手前で。


 アスターシャは、バッグから、黒の帽子を取り出し、被る。


 「どう?」


 帽子には、黒の面紗(ヴェール)がついていた。顔を隠せる。


 「なぜ、面紗(ヴェール)なの?」


 面食らうレイラ。


 アスターシャ、うふ、と笑い。


 「ほら、私とミルは、双子で、同じ顔だったでしょ。街の人は、ミルの昔の顔を、当然、覚えている。ミルと同じ顔の私が歩いてたら、みんなにミルだと勘違いされるかもしれないじゃない。今日は、誰にも邪魔されず、街を歩きたいの。厄介事は、嫌なの。それで、顔を隠すの」


 なるほど。それもそうだ。


 ミルは、裏街(アンダーグラウンド)で、暗黒街住人(アウトロー)筋と付き合いがあったのかもしれない。まだ、半年前のことだ。みんなが覚えているミルの顔のアスターシャが行ったら、騒動になる。ミルが突然、星を出て姿をくらまし、手術で顔を変えたのは、犯罪トラブルがらみの可能性が、あるのだ。


 アスターシャが、顔を隠していく。


 確かに必要なことだ。


 でも、面紗(ヴェール)って。 


 それはそれで、目立ちすぎないかな。


 レイラ、少し、心配になる。



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