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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
129/195

第129話 アウトローのコーデ




 「レイラとお出掛け! ミルと街歩きした時のこと、思い出すよ。本当に、2人ですごく楽しかったよ!」


 アスターシャ、はしゃいでいる。


 こうしてみると、本当に無邪気な女の子だ。複雑な境遇を背負ってはいるけど、今日はその翳は、見えない。



 レイラとアスターシャ。


 2人で待ち合わせて、裏街(アンダーグラウンド)へ行く日だ。


 レイラは、昼間は下着モデルの仕事があった。宵闇の頃、アスターシャと出会う。同僚モデルたちから、レイラ、夕食いっしょに行かない? と誘われたのを、用事があるからと断って、急いできたのだ。裏街(アンダーグラウンド)が本格始動するのは、夜だ。だから、夜に行くのが、1番いい。


 待ち合わせの場所、先に来ていたアスターシャ。黒のワンピースを着ている。


 「待った?」


 ハアハアと息をするレイラ。


 「そんなことないよ。さあ、行こう」


 アスターシャは、うふ、と笑う。


 すごくいい笑顔だ。生き生きしている。レイラは思った。この少女の追憶と感傷(センチメンタル)にとって、今日のお出かけは、とても重要なんだ。やっぱり、一緒に行くことにしてよかった。


 「ねえ、レイラ」


 踊るような足取りのアスターシャが、言う。


 「裏街(アンダーグラウンド)に行く前に、あなたに、プレゼントしたいの」


 「プレゼント?」


 「うん。散々、私のわがままに付き合ってくれたんだもん。プレゼントぐらいしないと」


 なにか楽しい企みを考えてほくそえむアスターシャ。レイラを服飾店(アパレルショップ)へ引っ張り込む。



 「これかな、いや、こっちかも」


 レイラのために服を選ぶアスターシャ。本当にうれしそうだ。そして、とても真剣。


 いろいろ着せ替えをさせられた挙句。


 「うん、これ! これで決まり! レイラ、すごくいいよ!」


 「う、うん」


 鏡で、自分の服装(コーデ)をチェックするレイラ。

 

 キラキラした青地の大胆なキャミソールに、黒のハーフパンツ。そして、軽い真紅のジャケット。


 「ちょっと、チグハグ感があるな」


 レイラの、第一感。


 トップ下着モデル事務所の周辺では、あまりしない格好だ。


 しかし。これにも、一本筋の通った主張のようなものを感じる。


 「さあ、次!」


 アスターシャは、さらに、張り切る。


 今度のお買い物は、装飾品(アクセサリ)。ジャラジャラとした、首飾り、耳飾り、胸飾りを、ぶら下げさせられる。みんなキラキラで、黄金と宝石の細工物。髪には、大きな羽飾り。


 「これって、さらに方向性が……」


 レイラはたじろぐが、アスターシャは、出来栄えに大満足である。


 「いいよ、レイラ、本当に素敵! もう夢みたい!」


 夢?


 レイラは、ふと気づく。


 「アスターシャ、あの、これってさ、ひょっとして、ミルの服装(コーデ)だったりするの?」


 「うふふ、気づいた? そうよ」


 アスターシャは、レイラをうっとりと見つめている。


 「ミルが街で、どんな格好してたか、必死に思い出したの。やっぱり、もう一度見たかったの。かっこよかったミル。誰よりも素敵なミル。あなたに、本当に、今日はミルになってほしくて。あ、これ、結局、私へのプレゼントになっちゃったよね。あなたにプレゼントするって言ったけど」


 「う、うん、いいよ。へえ、こういうのも、意外とイケてるんじゃないかな」

 

 レイラは、微笑んで見せる。


 なるほど。この服装(コーデ)、ストリート系、というより、暗黒街(アウトロー)系ファッションだ。派手で、挑発的で、崩れてはいるが、強い主張がある。こういうのが好きな人もいるんだ。


 ドン・ハルキサワ事務所は、〝高級感〟を売りにしている。だから全然方向性が違う。でも、ファッションなんだから。いろいろあっていい。たまには、違うのを着るのもいいだろう。気分を変える、視点を変える。それも悪くない。


 これが、ミルなんだ。


 全身鏡を見ながら、レイラは、思う。


 裏街(アンダーグラウンド)のヒロインの子。


 飾り立てながらも、どこか、子供っぽい。



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