第125話 取り替えた顔
「私、ここで何不自由ない生活をさせてもらっている。信じられないくらい。夢の世界よ。お母様には、本当に感謝している」
アスターシャは語る。
「これまで出会った人、みんなに感謝してるわ。孤児院の人にもね。でも、自分が満ち足りた暮らしをしていると、一層、ミルが恋しくなるの。どうしても会いたい。一緒に暮らしたい。たった1人の姉なんだもん。ミルも、裏街とか危ない世界じゃなくて、ここでのんびり一緒に、穏やかに暮らしてほしいの。お母様だって、きっと認めてくれる。私たち、ずっと幸せに暮らしていける。でも、どうやって探しても、ミルは見つからないの」
また、行方不明。尋ね人か。
レイラも、そもそも失踪した下着モデルのナミエを追って潜入捜査をしているんだ。
しかし、ミルは、自分の意思で姿を消した。星を出て行ったと言う。それも、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性があるとの話。
本人自ら帰ってこない限り、探すのはほとんど無理だろう。何か事件を起こして、警察の厄介になるのでもなければ。
刑事としては、そう判断せざるをえない。
ミルが。裏街で、暗黒街住人とつるんでいたというなら。何らかの犯罪に手を染めている可能性もある。事件をやらかして、逃亡せざるを得なかったのかもしれない。目の前で姉を想うアスターシャには悪いが、レイラは刑事として、冷徹にそう分析した。
「それが、急にミルから、通信が来たの」
「えっ?」
と、レイラ。なんだ。ちゃんと連絡取れたんだ。とりあえず、まるっきりの行方不明ではない。
「今、遠くの星にいる。過去を精算するため、手術で顔を変えた。ただ、それだけ書いてあった。そして、手術で変えた後の顔が、添付されていたの。それが、さっきあなたに見せた画像よ」
「は?」
レイラの頭、混乱する。どういうこと?
アスターシャは、続ける。
「私とミルは、一卵性双生児。もともと顔は本当にそっくりだったの。だけど、ミルは、手術で顔を変えた。送られてきた画像を見て、これが今のミルなんだって、私ずっと自分に言い聞かせていたの。そしたら、新しいミルにそっくりなレイラ、あなたに出会ったの」
なんだ? どういう状況?
レイラ、混乱を鎮めようと。何とか整理する。
アスターシャとミルは、二卵性じゃなくて、一卵性の双子。やっぱりもともと顔はそっくりだった。ところがミルは、星を出た。そして、ここの生活と完全に決別するために、手術で顔を変えた。変えた顔の画像を、アスターシャに送ってきた。それが偶々、レイラとそっくりだった。
そういうことか。
なんだか、いろいろ混乱している。あっちの顔と、こっちの顔が似ていて。顔を変えても、また誰かとそっくりな顔。そんなこともあるんだ。宇宙は広いな。
ふと、思った。
大金持ちアルデランタ家の、今は亡き令嬢。ミルも、その子と顔がそっくりだったんだ。そういうことになる。ひょっとしたら、ミルがこの家の養女になっていたかもしれないんだ。裏街のミルでなく、お嬢様のミルに。
運命って、本当にわからないものだ。




