新婚(?)祝い
宿でたっぷり寝たリィナは今日も元気に走り回っていた。
ギルドで大柄の男と普通の男が腕相撲をしていた話を聞いた。
雑貨屋でペンダントを買った話を聞いた。
馬小屋で4人と3人に別れた話を聞いた。
(カル兄たちはきっと徒歩での移動を選ぶはず、だから3人の方がカル兄たち!)
しかしすぐに男が離脱し女2人で門へ向かったと聞いた。
(もう! カル兄素直に動いてよ!)
情報の中のカルドラに文句を言いつつ、アイーシャとサニアが居たであろう門まで辿り着いた。
(アイ姉とサニア姉がここに来たってことは、この門から出発したはず。でもカル兄は…? この辺りで情報収集を…)
クルッと周りを見渡し、門番が視界に入ったので話を聞きに行く。
「こんにちは! ちょっとお話聞きたいんだけど良い!?」
「おう! 元気良いな嬢ちゃん! 何聞きたいんだ!?」
話し掛けられた門番は元気に応えてくれた。
さっそく質問してみる
「数日前にこの門から3人組の男女が出発しなかった? 細マッチョの男1人とぽやぽや女神官と美人魔導士の3人!」
「あぁ! あの"若夫婦"か! 一昨日ここを出たぞ! いや~良いプロポーズだったなぁ! 今思い出してもニヤニヤが止まらないよ!」
「何? 一昨日の話? 良かったわよねぇ。神官の子すごく嬉しそうで、見てるこっちも幸せな気分になったわ」
「お? 一昨日の話か? いやー白昼堂々見せつけてくれたよな! 揃って初心な感じがして、がんばれーって自然と応援したい気持ちにさせたよな!」
「……えぇ???」
門番が話し出すと周りの通行人がわらわらと集まって来て思い出話をし出した。しかも内容がプロポーズして2人が幸せになって旅立ったという謎のストーリーだ。
「ねぇ…それって本当? 確かに3人組の中の2人なの?」
「おう。美人の姉ちゃんと可愛い系の神官様と細マッチョの兄ちゃんだろ? あの組み合わせはそう簡単には忘れないよ」
「そうですか…」
(つまり…、カル兄とアイ姉がくっ付いた!!! 仲良さそうとは思ってたけど数日でそこまで進展するなんて! 追い付いたらお祝いしてあげなきゃ!)
「門番さんたちありがと! 私その人たちのこと追ってるんだけど、会った時にすぐお祝いできるように買い物してくる! じゃーね!」
「そうか! 良いものプレゼントしてやれよ!」
「早く会えると良いな!」「気をつけてね!」
集まった人たちに温かい言葉を貰い、リィナは再び町中へ走り出した。
「う~~~~ん…」
雑貨屋で腕を組み唸るリィナ。
婚約したらしいカルドラとアイーシャのために祝いのプレゼントを用意しようと商品棚を眺めているのだが…。
「あ゛ー! わかんない! 知り合いの婚約って何プレゼントしたら良いの!?」
頭を抱えるリィナ。貴族社会の教育を受け基本的な教養は押さえている彼女だが、気の置けない間柄への婚姻の贈り物に何が適切かは教わっていなかった。
「お嬢ちゃん、悩んでるわね」
「そりゃ悩むよ! 友達で兄貴分姉貴分で恩人への贈り物だよ!? 変な物贈れないよ!」
雑貨屋のおばちゃんにつっつかれながら真剣に商品を眺める。
「普通ならペアのコップとかマグカップとか、ペアの食器とかも喜ばれるんだけど、トラベラーらしいしねぇ」
「そうなんだよぉ、"荷物は極力少なく"が旅の鉄則、がさばる物は論外なんだよぉ」
そう。贈る相手がトラベラーだという事実がプレゼント選びを難しくしていた。
「となるとお洒落なお酒とかが選択肢になるけど…」
「あの2人がお酒で喜ぶとは思えない! しかもこの町の特産品とかは絶対全部網羅してる! 食べ物も選べない!」
両手で膝を叩き項垂れるリィナ。おばちゃんは「難しいわねぇ」と溜め息を吐く。
すると店の奥から壮年の男が出てきてリィナの肩を叩いた。
ポンッ
「え? なに?」
リィナが男を見ると、彼は拳を自分の胸に当てる仕草をした。
「大事なのは"ここ"だ」
それだけ言って男は店の外へ歩いていった。
それを呆然と見送るリィナ。
「…………そっか!」
何かを理解(?)したリィナは、商品棚へ手を伸ばす。そして"小さなもこもこ"の装飾品を2つ手に取った。
「おばちゃんこれ頂戴!」
「ふふふ、毎度あり。これならきっと喜ぶわね」
「うん! ありがと!」
そして会計を済ませ、意気揚々と雑貨屋を出るリィナ。
「うわ! 嘘でしょ、日が傾いてる!」
しかしプレゼント選びに時間を掛けすぎてしまい、外は暗くなり始めていた。
「仕方ない、もう一泊しよう。明日改めて追跡再開だよ!」
そうしてリィナは両手をぐ~っと空へ伸ばし、宿屋へ歩いて行った。




