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双棍のトラベラー  作者: コルミ
はちみつと風と光
190/202

社交界のハリケーン

 「ふぅ…」と溜め息を吐くカルドラ。言われっぱなしも癪なので2人にも"似たような質問"をしてみることにした。


「お前らはどうなんだよ。付き合ってる相手とか、婚約者とかいないのか?」


 それを聞きダンテは手をひらひらさせる。


「ないない。俺の生活は訓練、遠征、酒飲みだぞ? 色気が入り込む余地が無ぇよ」

「…結構モテてるくせに」

「お? そうなの?」


 アルスの暴露にカルドラが目を輝かせる。


「ダンテは面倒見が良いからね。助けた王宮の使用人にファンが多いのさ」

「なるほど」

「それを『付き合ってる』とか『婚約者』の話に持ってくるのは違くねぇか?」


 首を傾げるダンテ。そのままアルスに話を振る。


「アルスはどうなんだ? "貴族の出"なら縁談とかあるんじゃねぇのか?」

「へ~、アルスって貴族出身なのか。確かにそういう雰囲気あるな」


 アルスの元の身分を知り、普段のきちっとした彼の振る舞いに納得するカルドラ。

 そしてアルスは少し困った表情をする。


「……うーん、まぁ、…そうだね。騎士になった身だからそういうのは縁が無いと思ってたんだけど、最近父が話を持ってきた」

「お! まじか! 相手は?」


 まさかの情報にウキウキしながら質問するダンテ。カルドラもワクワクし、水を飲みながら続きに耳を傾ける。


「"フェルステラ家のご令嬢"だそうだ。フェルステラご夫妻は有名だからダンテも知ってるだろ?」

「ごふっ」


 相手の家名を聞きカルドラが水を噴き出す。ハリケーンガール・リィナの顔が脳裏を過る。


「ん? カル、大丈夫か?」

「ごほっ、あぁすまん。気管に水が入っただけだ。続けてくれ」


 ダンテが心配してくれたので適当に返事をし、話の続きを促す。

 そしてカルドラが大丈夫そうなのを確認し、ダンテはアルスに向き直る。


「えーと…、フェルステラっていうと、あのすっげぇ人の良さそうな2人か。…あれ? 娘なんていたのか? 息子は何度か見たことあるが…」

「あぁ、僕は存在は知ってたんだけど見たことがなかったから父に聞いたら、式典などでは隅で大人しくしてるから目立たないそうだよ。昔の二つ名からは想像もつかない変化だよ」

「……二つ名ってなんだ?」


 おおよそ貴族令嬢の話題では出なさそうな言葉が顔を出し、気になって恐る恐る質問してみるカルドラ。


「僕は会ったことが無いから現場には"遭遇"してないんだけど。昔、フェルステラ家のご令嬢は社交界で"ハリケーン"の二つ名で恐れられていたよ」

「ハリケーン…」


 ダンテが何とも言えない顔をしている。


「家名持ちの貴族は王族に近しい名門だけど、そんな名門の令嬢との縁談が僕なんかの所に回ってくるってことは、おそらく昔のイメージが強くて普通の貴族からは敬遠されてるんだろうね」


(社交界でハリケーンって呼ばれるって…、あいついったい何やらかしたんだよ…)


 アルスの話を聞き、目を細かく泳がせながら水をチビチビ飲むカルドラ。まるで妹のやらかしの報告現場に偶然居合わせてしまったかのような心境だった。


「で、アルスはその縁談どうするんだ?」


 ミードに口を付けながらダンテが聞く。


「僕としては騎士の仕事に集中したいから断りたかったんだけど、縁談の仲介者が父が世話になっている人らしくてね。会うだけ会ってくれと押し切られてしまった」


 やれやれ…といった表情のアルス。


「じゃあ王都に着いたら見合いするのか。ハリケーンが相手じゃ気が抜けねぇな」

「昔の話だよ。父の話ではここ数年は"別人の様に"お淑やかになっているらしい。過去の評価のせいで今を見て貰えないというのは可哀想な話だ」

(アルス…、それたぶん仮面だぞ…)


 ダンテの茶化しに冷静に返すアルスだが、そもそもリィナの根っこがずっと変わっていないことを知っているカルドラは、アルスの同情が的外れだという事実を何とか胸の中に止まらせる。


「まぁ見合いでは出来るだけ穏便に断ってくるよ。相手方には申し訳ないけどね」

「(たぶんその心配は無いと思うぞ…)」ぼそ…

「ん? 何か言ったかい?」

「いや? 何も言ってないぞ?」


 思わず漏れてしまった言葉を誤魔化し水を飲むカルドラ。

 リィナの性格を考えれば貴族の嫁になるための縁談など絶対にしないはずだ。フェルステラ邸がある町での事件の後、フェルステラ家はリィナに繋がっていた"鎖"を外すと言っていた。おそらくアルスのところに行った縁談はその事件の直前に出た話なのだろう。

 それならばフェルステラ家の方から"お断りの話"が出てもおかしくはない。アルスが気を病む必要は全く無いのだ。


「ま、気楽に行って来いよ。きっと良い方向に転がるさ」

「ふふ、随分楽観視するね。何か根拠があるのかい?」

「ただの勘だよ」


 カルドラのいい加減な応援でアルスが少し笑う。そしてそのタイミングで注文した料理が運ばれてきた。

 中途半端な時間なので軽食くらいの量だが空気を切り替えるには十分で、3人は和気あいあいと料理を食べ始めた。


 ちなみに当のリィナだが、カルドラたちと合流すべく昨日屋敷を旅立ち、現在は峡谷の町を目指し街道を爆進中である。

 アルスは明日の朝王都に向けて出発するため、見合いは絶対に成立しない状況なのであった。

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