浴場でアイーシャいじり
ちゃぷ…
「「「「はぁああぁぁぁあぁぁ……」」」」
並んでお湯に浸かり、空気が抜けるように声が漏れる4人。
メイが発見したこの浴場はそこそこの広さがあり、4人並んでも常連客の邪魔にはならなそうだ。遠慮なく遠くまで足の伸ばす。
ちなみにここまで道案内をしたソラはアイーシャとアイリスからたっぷり撫でて貰い、今は少しぬるめのお湯の入った桶の中でふやけている。
「その子がドラゴンだって聞いた時は驚いたけど、こうして見ると感情豊かで可愛いわね」
ぐい~っと首を反らしてソラを見るメイ。
前にメイたちと一緒に仕事をした際は上空から偵察をしたりアイーシャに魔力送ったりしていたソラ。ハネトカゲではないとわかってはいたが、今回まさかのドラゴンだと判明し、心底驚いたものだ。
「私たちの言葉わかってるみたいですしね~…。すごく賢い子ですぅ…」
ソラと同じくふやけた表情でアイーシャが話す。
「サニアさんの魔法で意思疎通はしないんですか? そこまで自我が強いなら普通に会話できそうですけど…」
アイリスがサニアに質問する。昨日トマスから思念での意思疎通について少し教えてもらったので疑問に思ったようだ。
「それについてはですね…、どうやらドラゴンは魔法に対してかなり強い抵抗力があるらしくて、すごく集中しないとレジストされちゃうんですよ。ソラちゃんと協力してがんばってもほんの少し意識がわかる程度なので、それなら行動や細かい動きから感情を読んだ方が遥かに確実な感じです」
「へー…、意思疎通の魔法も万能ではないんですね…」
サニアが「ん-」と伸びをしながらする説明を聞き、アイリスは興味深そうにソラを覗き込む。
「ヴァルクスさんが思念で会話してくれてましたしぃ…、ソラちゃんもそのうち会話してくれるかもですよぉ…? 何年先かはわかりませんけどぉ…」
「…ヴァルクスって鉱山に居たっていうドラゴンだっけ? ほんと…貴方たちの話には驚かされるわ…」
溶けるアイーシャの呟きにメイが苦笑いする。
一昨日の女子会の時にアイーシャたちが旅で経験したことはほとんど共有されている。ヴァルクスが特別人族に友好的で、その他のドラゴンはその限りではないことまできっちりと。もちろん他言無用だ。
「ところでアイーシャ、貴方いつからカルと付き合ってるの?」
「ぶー!!!」
ごぼごぼごぼごぼ
メイの唐突な言葉にアイーシャの口から大量の空気が噴き出した。
「ななななな何言ってるんですか!? 私とカルさんはそういうんじゃないですよ!」
「え? そうなの? でも昨日抱き合ってたじゃない」
意外そうに首を傾げるメイ。
そしてアイーシャは別の事実にも驚く。
「見てたんですか!??? って、そうじゃなくて…! えーとえーと…!」
サニアとアイリスを交互に見ながら慌てるアイーシャ。しかしサニアもアイリスも申し訳なさそうに口を開く。
「ごめんなさいアイーシャさん。私も見てました」
「わ…私も…、すみません…」
「ななななななな…!」
アイーシャの顔がみるみる赤くなっていき、あっという間に真っ赤になる。
「良い雰囲気だったのに…。ねぇサニア、この2人本当に付き合ってないの?」
「えぇ、信じられないことに事実です。私も最初勘違いしてましたし」
「嘘でしょ…」
サニアの補足に信じられないといった表情のメイ。
アイーシャが堪らず話題変更を申し出る。
「こ、こういう話は良くないと思います…! ほら! 色恋沙汰でパーティー解散とかよく聞くじゃないですか! ダメですよこういうのは!」
「あら、私は応援してますよ? トラブルで解散は無いので安心してください♪」
「ぐぐぅ…!」
アイーシャの必死の抵抗もサニアにあっさり払い退けられる。
「アイーシャはカルを異性として意識はしてないの? あんなに良い雰囲気だったのに?」
メイが更に踏み込むと、アイーシャはぶくぶくと顔半分をお湯に沈めていった。
その視線は揺れる水面を見つめており、必死に考えを整理しているようだ。
この状態でつっつくのはさすがに可哀想なので、とりあえずアイーシャはそのまま放置することにしたメイ。次はサニアに矛先を向ける。
「サニアはどうなの? カルは"有り"か"無し"か」
「ぼふっ」
ぶくぶく…
サニアへの質問にアイーシャが反応する。そんなアイーシャをクスクス笑いながらサニアが答え始める。
「正直吝かではないですね♪ いっぱい褒めてくれますし♪ 何より頼りになりますしね♪」
「へ~、随分高評価じゃない。アイーシャ? もたもたしてると取られちゃうわよ?」
「ぼぼぼぼぼ…」
ぶくぶくぶくぶく…
ぷーっと頬を膨らませ少し涙目になっているアイーシャ。…少しいじめ過ぎたかもしれない。
するとここまで静観していたアイリスがプンプン怒って口を挟んだ。
「もう、2人ともいじわるし過ぎです! アイーシャさんが可哀想ですよ!」
「ぼぼぼぼぼ…」
ぶくぶくぶく…
水中で何か言いながら、すぃーっとアイーシャがアイリスに抱きつきに行く。
「よしよし…」とアイーシャの頭を撫でるアイリス。
その光景を見てサニアとメイは顔を見合わせ、互いに苦笑いした。
「アイーシャごめんね、もうこの話はしないから許して?」
「ごめんなさいアイーシャさん、許してください」
そう言って2人もアイーシャにくっ付きにすぃーっと移動する。
2人にくっ付かれたアイーシャは尚もふくれっ面だが涙目は直っており、"私は怒ってますアピール"をしているようだ。
その様子にサニアとメイはクスっと笑い、アイーシャの頬の膨らみが萎むまで謝り続けるのだった。




