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12.軍事協定

12.軍事協定


「それで……他にも……開腹術関連で、患者に痛みを感じさせないための催眠魔法とか、傷口を縫合する接合魔法など……魔王国と言語の違いがあるので、研修生らに呪文を教えることが出来なかったのです。魔族の方たちの呪文を教えて頂けないものかと……小鬼たちが使っている呪文は、魔族語ですよね?」


 とりあえず、第一の用事を告げておく。


「おお……そんな事でしたか……研修生らから研修内容の報告は研修中も定期的に受けていて、彼女らは開腹術だけで手いっぱいという報告だったので、別途催眠魔法に特化した小鬼と、接合魔法に特化した小鬼を、30名ずつ育てております。


 半数以上はすでに取得済みのようなので、ハルシュー殿の施術にも立ち会わせるつもりでおりました。」

 なんと……すでに手配済み……しかもハルシューさんの施術にも間に合いそう……


「それはありがとうございます……助かります。それでその……」

 いよいよ本題を切りだす……


「いえいえいえ……全ては魔王国存続の為ならば……こちらこそ……お心遣い感謝いたします。」

 催眠魔法や接合魔法の指導をお願いしたら、逆に気づかいを感謝されてしまった。


「それはそうとですね……先ほど仰っていたようですが……ギレージュ殿がエルムグリム侵攻を提言したという事で……その背景に……」


「はっはい……確かにギレージュがエルムグリム侵攻を魔王様に提言したのは事実です。


 丁度、穀倉地帯西部山脈の物理結界魔法が140年経過してようやく薄まって、防御効果が著しく低下しておりましたしね……さらに百年前から準備していた魔導船……余りに年月が経過し過ぎて、いい加減朽ち果てる懸念もありました。


 ギレージュがタッタルンに出向いた際、穀倉地帯での収穫が落ちている旨の相談をしたところ、タッタルン王から結界がすでに有効でない旨教えていただき、ならばと……エルムグリム侵攻を思い立ったのだと聞いております。勿論タッタルンはその際見て見ぬふりをするという確約を頂いたうえで……。


 ですがあくまでもギレージュは小鬼たちの事を思いやってのことでして……決してエルムグリムに恨みを抱いてその復讐のため……といった私怨ではございません。どうかその点だけはご考慮頂き……。」


 魔王国がエルムグリムに進攻しようとした背景に、タッタルンが絡んでいたことを確認しようとしてきたのだが、密約など決して打ち明けてもらえるはずもなく、あいまいな答え方をされるだろうと俺は思っていた。


 だからどうやって聞き出せばいいのか、言い方を考え考えあぐねていたら……なんとあっさりタッタルンの関与と、その時の密約内容も教えてくれた。


「やっぱり……魔王国進攻に際して、タッタルンは見て見ぬふりをするという密約があったのですね?」


「いえ……別に……密約という事ではなく……魔王国とタッタルンは友好国で、しかも軍事協約も取り交わしていましたから、当たり前ですが外敵に際しては共に戦うのですが、妖精国や獣人国ならともかく、エルムグリムはタッタルンと同じく人間族の国なので、流石に共同で攻め込むことは出来ない。


 だから前回同様タッタルンは魔王国の侵攻を見て見ぬふりだけする……という、約束というよりお断りの連絡を頂いたのです。それで仕方なく、魔王国単体で攻め込んだのです。」

 ダッフンバルト2世はあっさりと……とんでもないことを告げた……なんと……


「ちょ……ちょちょっと……確認ですが……魔王国とタッタルンは、共同で戦うという軍事協定を結んでいたのですか?」


「はい……そうですよ……ですが先の敗戦以降はエルムグリム支配下にありましたから、当然ながらタッタルンとの軍事協約は無効になったと、廃棄通達がタッタルンから送られてきましたけれどね……。」


「ばっ馬鹿な……タッタルンはエルムグリムとも協定を結んでいて……しかもその際の敵国は魔王国であり、魔王国進攻の際はタッタルンは海軍を使って穀倉地帯から魔王国へ攻め込むという約束までしていたのですよ。なのに……魔王国が攻め込んできても何もしなかった……それこそ見て見ぬふり……ですよね?」


「まさかそんな……あり得ませんよ……タッタルンと魔王国との軍事同盟は……遡ること240年前の、魔王国建国当初からなのですよ……そもそも最初にエルムグリムに攻め込んだのだって、タッタルンからエルムグリムは魔族の子を奴隷として売買していた張本人の国だと聞かされ、解放のために攻め込んだのです。」


「やはりそうでしたか……それで……魔族の子はエルムグリム国内に大勢、捉えられていたのでしょうか?」


「いえ……2百年前の最初の侵攻時は王都迄攻め込んだのですが、魔族の子らを何処かで隠しているという事実はつかめませんでした。そのうちに異世界から大魔導士が召喚され、魔王様はそ奴の口車に乗せられて一騎打ちとなり敗れてしまいました。


 仕方なく兵は撤退することとしましたが、穀倉地帯半分の領有権を取得したのです。当時は穀倉地帯半分の収穫だけで我々魔族の取り分を除いても、十分に小鬼たちへ分配できていたのですが……やはり人間たちが日々手をかけて耕した田畑であったからこそ……と言った事なのでしょうね。」


 平然と話してくれているという事は、魔王国もエルムグリムもタッタルンに完全に騙されて、双方でつぶし合っていたという事になる。そうして裏で友好国の振りして自分らが有利な交易をしていたわけだ……。


「そっその……かなり過去になってしまいますが、240年前の建国当時からのタッタルンと同盟の協定文書とか……とってありますか?なければ最新の……戦争前のタッタルンとの協定書だけでもいいですけど……。」


「ええ……そりゃあもちろんございますけど……240年前のものと言っても、現王さまが結んだ文書で私も立ち会いましたからね……ですがその……他国との外交文書をお見せするわけには……。」


 これまで平然と何でも話してくれていたダッフンバルト2世だったが、流石に少し困ったように、顎に手を当てて思案し始めた。そりゃあそうだろ……外国との軍事協定とかなら第3国には最高機密だろうからな……。


「エルムグリムはエルムグリムで……タッタルンとかわした外交協定書があるので、それを魔王様にお見せいたします。仮にタッタルンが魔王国とエルムグリム両方と軍事協定を結んでいて、その上で両国間が争うように誘導したとするなら、これは重大な背任行為……というか正に犯罪ですよね!」


「それは確かに……ふうむ……少々魔王様と検討させていただけますか?」


「はい……こちらはこちらで事務長に話して、王様を説得してもらいますので……結果は改めて連絡させていただきます。」


 すぐさま魔王城へ戻り、事務長に今聞いたことを全て話して聞かせると、事務長も絶句していた。


 なんせタッタルンが裏切っていた明確な証拠が存在していたのだ……すぐに事務長はペンを取り、王様への文をしたため始めた。なんともまあ……意外過ぎる急展開……ううむ……開腹術どころではな……いや……開腹術の成否だって非常に重要だ……なんせ小鬼という一つの種族の存亡にかかわっているのだからな……。


 少し時間を置いてから……椎茸などが実った材木を頂いたことも打ち明けた。丁度晩御飯となり、なんと松茸ご飯が振舞われたため、材木のことを思い出すことが出来たわけだ。事務長に養殖実験をお願いしておいた。



 それから2日後……予定日を6日後に迎える妊婦が、手術室に運ばれてきた。予定日はあくまでも予定日であり数日はずれるため、内臓を食い破られないよう早めに開腹術を行うこととした。


 執刀医はハルシューさんであり、催眠魔法も接合魔法もハルシューさん一人で唱えられるが、修得した魔法の効果確認も兼ねて、魔王国で養成した小鬼の僧兵に唱えさせる段取りとなった。施術中に催眠魔法が解けて苦しみだしたり、術後に接合魔法がすぐに解けてしまっても困るので、皆がいるうちに試しておく。


 念のため当面は腹膜や子宮壁などの内臓部の縫合は、魔法と糸(蜘蛛の糸ならあとで自然と溶けるので、抜糸の必要性がないと俺が提案した)併合とした。接合魔法が不慣れで、後で内臓がはみ出てきても困るのだ。


「小鬼たちの新生児は1300から1500g程度と、人間だったら未熟児の分類に入る大きさだった。だが小鬼の母体の小ささと六つ児という事を考えると、これが正常なのかもしれない。


 予定日ほぼ1週間前の開腹術だったが、無事に元気な赤ちゃんを取り出せました。」

 術式開始から5時間後……ハルシューさんが疲れ切った顔をしながら手術室から出て来た。


「そ……それで……母体は?母親は助かったのですか?」


「ああ……流石に六つ児ともなると、小さな術野から全員取り出すことは不可能で、小鬼の妊婦の子宮位置も内臓の配置もほぼ人間のものと変わりはなさそうだったのだが、最初に腹を横に大きく裂いて、それでも足らずに縦にも開腹した。縦横の大きな傷跡になってしまったが、母体は無事です。


 今後も安全性を考えて、今回のように縦横両方に開腹するのが最良なのかもしれない。


 初めてのことばかりなので母体の産後の経過がどうなるのかまだ分からないが、恐らく回復するはずですよ。」

 ハルシューさんが開腹術の成功を冷静に告げた。


「や……やったぁー……やりましたね?」


「ああ……はい……これは本当に、革命的な出来事ですよ……小鬼たちの人生観が大きく変わるのですから……これでもう……小鬼女性の結婚と出産が義務とはならなくばかりか、恐怖の対象で人生の終着点であったのが、ただの通過経路になるのです……本当に喜ばしい。


 これもひとえにエルムグリム王国の皆様方のおかげです。魔王様になり替わり、お礼を述べさせていただきます。」


 俺たち同様手術室前の通路で待っていたダッフンバルト2世は、感極まって天を仰いだあと、ハルシューさんから順に俺たちに向けて頭を下げ続けた。小鬼たちの出産に関して頭を悩ませていたのは、俺だけではなかったという事だ……彼らはもう何百年も前から……


「ふん……こんなもの……たまたまですよ……たまたま人間たちのやり方で旨く行っただけであり、下手をすると母子ともに助からないという最悪の結果だって起こりえたわけですからね……そんなに喜ぶことではありません。貴重な小鬼の妊婦を平然と実験台に使うという……ほんに人間という生き物は恐ろしい……。」


 ダッフンバルト2世と俺たちが手を取り合って喜んでいたら、通路の向こうの角から聞きなれた声が近づいて来た。ギレージュだ……魔王のご乱心から俺たちの下へは顔を出していなかったが、流石に開腹術の結果が気になり見に来たのだろう……。


「ギレージュ……馬鹿なことを申すな……この結果を遥前から予言し、開腹術の成功確率を高めたうえでご提案頂き、その上で小鬼らの研修生を募ってご指導いただいたのだ。


 至極的確で成功確率の高い合理的なお考えで、我々に救いの手を差し伸べて下さったのだぞ!それなのに、なんだお前は……お客人の前で悪態ばかりつきおって……無礼と思わぬのか?


 いい加減にせんと、本当にお前を処罰しなければならなくなるぞ!」


 いつも通りのギレージュの悪態だが、今回はダッフンバルト2世も厳しく叱った。そりゃそうだろ……小鬼たちを救える可能性がそれこそMAXにまで上がった、ハルシューさんの功績を少しは讃えろよ!と、俺も言いたい。


「人間なんて……決して信用してはいけない生き物だからですよ……最初は腹を減らして地面ばかり見ながらうろつく浮浪児に握り飯を与え……腹一杯食いたければついてこいと騙し、連れていかれた先で檻の中で監禁生活ですからね……王子だって覚えているでしょ?


 犬猫たちと変わらぬ飼育される側の生活……いや……身体的虐待を考えれば犬猫以下……王子たちは運よく内乱の混乱時に逃げおおせたようだから……その後のさらなる虐待を分かっていないのですよ!


 人間なんて生き物は……この大陸から抹消してしまわなければならない、最悪の生き物なのですよ!

 いい加減……気づいてください!」


「なっ……今のお話から推測すると、ギレージュ……さんは……いや……ダッフンバルト2世王子様も同じく……人間に捕らわれて、檻の中で生活していたという事ですか?」


 なんと……ギレージュだけではなく、さほど人間に恨みを抱いているようには見られなかったダッフンバルト2世までもが、人間の奴隷となっていた時期があるというのか?


 いや……でも……ギレージュに人間の奴隷になっていた時のこと聞きたくてうずうずしていたのだが、どうやって聞き出せばいいのかとっかかりに悩んでいた。なんせ情報元からは口止めされていたからな。


 だが……こうやって自分から切り出してくれたのは有り難い。


「まあ……私の場合はほんの70年間ほどでして……しかも飼われた先のお嬢様にかわいがられたため檻の中の生活ではなく、部屋を与えられて毎日の食事も人間と同じものでした。


 お嬢様がお年を召されたときに内乱が発生し、政治的不安からか奴隷の虐殺などが起こり始めたためか、お嬢様が家人に内緒でこっそりと逃がしてくださいました。部屋を与えられていたとはいえ、足には鎖がつけられて拘束はされていましたからね……鎖を外し北部山脈まで逃げ延びれば生きられると教えて頂きました。


 何とか騒乱に紛れて北部山脈に到達し、そこで逃げ延びてきていた魔王様はじめ多くの魔族たちと出会ったのです。」

 ダッフンバルト2世が、奴隷だった過去を明かしてくれた。


「その……魔族の子であったからだと思いますが……檻とか鎖に繋がれるとか……犬猫であればまだしも両手が自由に使える魔族……ましてや魔法が使えるわけでしょ?逃げられなかったのでしょうか?」


「ふん……人間に捕らえられた私たち奴隷が、どのようなひどい仕打ちを受けたのかも知らずに……よくもそんな口がきけますね?」


「まあまて……本当にご存じないのだから仕方があるまい?異世界から来られた勇者殿なのだからな。」


 俺の発言に今にも掴みかかって来そうに苛立つギレージュを、ダッフンバルト2世がとどめてくれた。なんか……おれ……気に障ることを言ってしまったのか?


「魔族の子は幼い時は大人の人間に比べて体も小さく力も弱く、さらに魔力も弱いのです。さらに禁呪の護符を体中に貼られ……魔力を封じられていた訳です。流石に鎖を引きちぎれるほどの力は持ち合わせておりませんでした。


 ところがギレージュの場合は、護符ではなく体中に禁呪の呪詛を入れ墨として入れられて、絶対服従させられ飼われていたようです。


 私のように魔力封印の護符を貼り付けられただけなら剥がせば効力が消えたのですが、ギレージュのように全身に入れ墨を施されてしまった場合は……それはもう……一生消えません。」


 なんと……魔力封印の護符の代わりに入れ墨を……とんでもないことしやがる。ギレージュが人間を恨む気持ちも分からんでもないな……あれ?


「でっですが……終戦時に講和条約結ぼうとしてだまし討ちにあった時……ギレージュ……さんは普通に飛行術使っていましたよ、入れ墨だから魔力の封印は一生解けない筈ですよね?」


 そうなのだ……ギレージュはあの時一人だけで断崖の崖上まで飛行術で上って行ったはずだ。あれはもしかすると他の魔族らが飛行術を掛けていたとでも言うのか?そんな事……一体何のために?


「ああ……ギレージュの場合……何代にもわたって奴隷として人間に閉じ込められて虐待を受け続けたようですが、特に最後の家主がひどかったようで、あまりにひどくむち打ちを続けたがために皮膚が裂け、内臓にまで達する傷が体中にできたようです。


 そのうちにギレージュ本人が魔法を使えることに気がつき、警固の兵を惨殺したのち逃げ出し、北部山脈を目指したと言う訳です。体中の無数の傷により、封印のための呪文の一部が消えてしまって効力を発揮しなくなっているのですね。


 このようにひどい扱いを受け続けた事例は稀で、私が知っている限りギレージュのみです。」

 はあー……聞けば聞くほど悲惨で……ギレージュの人間を憎む態度も納得できるし、やったことを正当化はできないだろうが、気持ちはわからんでもない……。


「魔族の皆さんが人間社会の中で虐待を受けてきていたことが、よく分かりました。でもそれは……過去のことですよね?先ほどおっしゃっていた逃げ出せた時の内乱というのは、どの国のいつの出来事でしょうか?」


 魔王なんて千年以上生きていると言っていたし、ダッフンバルト2世やギレージュだって数百歳のはずだ。その子供時代というのだから、少なくとも4、500年は前だろうな……。


「ああ……恐らくその内乱というのは、約400年前のエルムグリムの内乱のことだろう。

 南の自治領を任されていた当時の第2王子が突然独立を宣言し、タッタルン王国を名乗った。


 それまでこのマッサーラ大陸は人間が中心の大陸国家だったのだが、南方にタッタルンが出来たことにより西方の管理が行き届かなくなり、解放された妖精や獣人たちが集合して、以降続々と独立宣言を行った。


 当時のタッタルン王は奴隷の開放を宣言し、奴隷制度廃止を最大の公約としたからな。


 エルムグリム王が退任し、第1王子が王位継承を行う即位式の前日のことだった。当時はまだ西域もエルムグリムの支配下にあったから、北方と西方及び海上からもタッタルンへ攻め込んで制圧することも簡単にできた筈だ。だが……第1王子は肉親間で争うことをせず、渋々だが独立を認めたと古文書の記載がある。」


 ダッフンバルト2世に変わり、事務長が解説含め話してくれた。なんと……


「で……では……魔族の子らを奴隷として売買し、地下の檻に監禁していたのはエルムグリム王国の人々という事ですか?だから魔王国はエルムグリムを憎み、攻め込んできたのですか?」

 やはり……魔王国とエルムグリムには過去からの因縁があったという事か……。


「まあ……遥か昔のことだ……魔族の方たちにとっては、つい先日のことのように憎々しく感じていることだろうが……決して今のエルムグリム王国のことではない。このことだけははっきりと宣言しておく。


 400年前までだって、エルムグリム王家は奴隷売買には関与していなかった。むしろ否定的な考えだったのだが、一部の貴族連中が自分たちの所領の中で行っていた悪しき習慣だったようだ。


 第1王子がタッタルンの独立を認めたのも、奴隷解放を第1に謳ったからだという説まであるほどだ。大陸の西域ほど、奴隷売買がひどかったというからな……だから西域を所領としていた貴族らが独立運動で追放され、獣人国と妖精国が独立を宣言したとき……勿論魔王国の時も、エルムグリム側は黙認の形をとった。


 すぐさまエルムグリムもタッタルンも奴隷は禁止とし、違反者は極刑に処すると法律を改定したわけだ。

 だから禊が全て終わっているとするつもりはないが……過去のことであるし、今となっては何ともお詫びのしようが……。」


 事務長が神妙な表情で俯き気味に話す……確かに……今から何が出来るものか……難しいな。


「ふんっ……奴隷が過去のことだなんて……勘違いも甚だしい誤解ですよ!今だって、多くの魔族のみならず、獣人や妖精らが人間どもに縛り付けられ、ひどい仕打ちを受けているというのに知らん顔ですか?」

 ギレージュが事務長を睨みつけながら打ち明ける……まさか……


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