18.真の敵国は?2
18.真の敵国は?2
「機織り機の原理は……勇者に教えていただいてわかっており、既に国産第一号から十号までの機織り機が完成して稼働しております。貴国から輸入した機織り機よりもはるかに高速で、長尺物や織り幅の変更も簡単にでき、倍は生産量が上がっております。
丁度今年で貴国から派遣されている技術者や職人らの5年契約が切れますので、延長はせず期末をもって契約打ち切りという事で帰国願う予定です。以降は保全も段取り替えも我が国で行いますし、故障の際に保証を要求することもありません。保全部品も自国内で調達予定です。
ですので……今更過去のことを表立って主張しても……とも考えたのですが、ハーゲル王子様がここ迄主張なされるのであれば、こちらからも言わせていただきます。
貴国から継続的に派遣されていた技術者及び職員らの高額な給料は、本来発生しえなかったものと御認め戴けましたよね?まあ……働いていたのですからその間の平均賃金はお支払いするつもりですが、現状のエルムグリム国内の平均賃金の何と5倍も支払わされていたのです。
そのため4倍分は本来発生しなかったはずとして、過去に遡って返却請求させていただきます。勿論……これまでの期間分……2百年間……借用という形にして利息もいただきますよ……当然ですよね?何だったら慰謝料も請求したいところですが……それはまあ我慢します。
それこそ国際法廷へ訴え、共同裁判官として魔王国と妖精国と獣人国から派遣していただきましょう。貴国の裁判官は、当事国ですから不適ですのでね……。
各国ともに貴国から輸入する機織り機に関しては、自国内生産でも高額と悩まされているはずですから、その技術は不当に独占しているものであると、ここで公にしようではありませんか。」
事務長は何と過去2百年間にわたって積もりに積もっていた不満を、ぶちまけるかのようにまくし立てた。
機織り機に関しては紡績工場を見学したときに、機織り機の前に偉く身なりのきれいな職人がたむろしているなあと、質問して初めてそれがタッタルンから派遣された職員だと知った。
そうして機織り機は専門の教育を受けた者しか触れないと決められていて、わざわざ高い給料を払ってタッタルンから来ていただいているのだと聞いて驚いた記憶があったのだが、その時はそれだけ。
ところが開腹術の検証のためのアルコール消毒と専用手術着を揃えようとしたところ、蜘蛛の糸を紡いだ特殊糸では、機織り機にかけられないから布地にはできないと断られてしまった。そこで、機織り機に関する根深いノウハウの問題を知ったのだ。だったらと……俺の記憶の限りの機織り機の原理を説明した。
俺は小学校の時の夏休みの自由研究で、小5の際に河川敷の土手に生える稲系の雑草の茎を集め、乾燥させた後で叩いてまとめ、束ねて編みこんで草鞋を作った経験があるので、糸を紡ぐやり方も知っている。
小6の時には手製の織機を作って、小さなテーブルクロスを編み上げて提出したので、一本置きの縦糸を交互に上下させながら横糸を滑らせていくという機織りの原理も知っている。
というか……その程度のことはちょっと考えたらわかりそうなものだと俺は思うのだが……機織り機の原理は教えてもらったのではなく、大まかに考えた後は試行錯誤で自分で設計して自分で作り上げた。
俺はコツコツと一人で地道にやるという作業が、合っているのだとその時に自覚した。
そこでいつものように俺は日曜大工で小学生の時の記憶を思い出しながら手製のミニチュア機織り機を作り、事務長に見せて原理を解説してやったら、事務長が本番の機織り機を数日で設計した。
なんでもかんでも魔法主体で考えるこの世界の人は……単純な構造のものでもどうやって作っているのか、見ただけでは理解できないようだ。それでも魔法を使って毛糸などを編み上げることは出来るのだ。
それでも大きなサイズは無理なようで……縦糸を並べて空中に固定しそこに横糸を上下に通していくのだが、頭の中でイメージできるサイズまでが限界で、それ以上になると最初のころの糸の絡みが保てずに分解してしまうのだそうだ。なのでタペストリーサイズの編み物までしか、魔法では作れないようだ。
2百年前までは、つぎはぎだらけの服を着ていたのであろうな……。
だがしかし……その……縦糸を固定して置いて横糸を上下に通していく……という原理から、機織り機を考えついてもいいと思う……実際他の大陸では考えついているのだからな……なのにあまりにも魔法に頼り過ぎなこの大陸の人には、そういった発想は苦手なようだ。
「ちいっ……だが派遣した職員や保全の人間は一般人だから、給料が高額だと主張するのであれば、その請求は支払ったそいつらにすればいいではないか……恐らく2百年間も遡れないだろうがね……。」
「いえいえ……そうではありませんよ……保全の技術者も段取り替えの職人も全て貴国の公務員の扱いで、その給料は全て貴国政府にお支払いし、そこから個人あてに支払われることとなっております。個人契約であれば、5倍もの給料なんて支払いませんよ……なので請求は貴国政府あてにさせていただきます。
エルムグリムは王国であったり共和国連邦であったり、また王国に戻ったりしておりますが、変更の都度国際法の承認を更新し、機織り機の契約に関しても更新しております。その為……この契約に関してはタッタルン王国とエルムグリム現王国が契約の当事者でありますから、直接請求が妥当と考えております。」
事務長がきっぱりと言い放つ
「ば……馬鹿な……2百年間も遡ってなどと……出来るものか?当時の支払い明細など存在するのか?」
「存在致しますよ……我が国は資料をなかなか廃棄しないようでして……5百年前の貴族の方々のお手当の領収書まで存在致します。
それによるとですね……現行支払っている給料とあまり変わらない額のようでして……2百年前ですからね……驚きですよ……まあ……それだけ我が国が発展できていない……魔王国におびえながら細々と暮し続けていたという事ですよね。物価が上がっていない代わりに給料もほとんど上がっていない……。
国際法では国と国の貸し借りは年度内は無利子とし、年を跨ぐ借款は両国間の同意がある場合のみ特別に認めるとあり、利息は年率10%複利を相当とすると定められております。
2百年前当時の支払額に利息を加えて複利計算するだけでも相当な高額になりそうで、これまでの支払い全てを計算すると……恐らくこれまで支払った機織り機の代金をも上回る金額になることが予想されます。
国際法では借款及び支払い義務が発生した債務に関しては、当該年度内の支払いが義務であり、期を跨ぐ支払いは認められないと決められております。ご検討をお願いいたします。」
「そんなもの……支払えるはずないではないか……。」
さっきまで高圧的だったハーゲル王子は急に力が抜けるように、うなだれてしまった。
「これこれ……そんなにも無理難題を押し付けては……お客人もお困りだろう。もう少し……相手のことを考えて、話してあげなさい。」
「そっ……そうですよね?2百年前からの支払った給料を利息を付けて返せなんて……無茶苦茶ですよね?
そもそも……給料を支払った記録だって、本当のものなのか疑わしい。タッタルンでは公文書でも保管期限は10年と定められており、継続的な案件は常に更新された最新のものが保管されているだけです。
なので10年以上前の支払い分に関しては、確認のしようがないので無効ですよ……。
我が国にも資料がある過去10年間分に関しては、過剰にお支払いいただいた分は全て返却いたそう。勿論利息だってつけてね……我にだってその程度の約束を交わす権限はあるのでね……だから裁判にはならない。いいですね?」
しょぼくれた王子を見るに見かねてか、王様が口を開いた。途端に王子が復活する。
「そうであれば、2百年前にエルムグリム王国が支払った、外洋航路用の造船費用を返却願います。こちらに関しましては当時の契約書が今手元にございますよ……当時の両国王の印も押されております。
この文書は永久保管と表紙に記載されておりますから、もし貴国で保管されていない場合は、それだけで契約違反となります。当時両国が積み立てた金額も、きちんと記載されております。当時の我が国の国家予算1年分のおおよそ半分程度がつぎ込まれたようです。
その時の公平な配分が捻じ曲げられて、履行されていないわけですからね。それがタッタルン王国からの一方的な通達で……しかもそれが魔王国からの侵略をようやく跳ねのけたばかりで、同盟国との友好な関係を維持するために多少のことは我慢しなければならなかった立場を主張すれば、認められるのではないでしょうか?」
「これこれ……だから……そんな2百年も前の契約に関して請求するなどと無茶なことを……だがまあ……魔王国に征服されかかった当時の我が国の事情を説明すれば、タッタルン王国からの無茶な要求ものまざるを得なかったという事も、理解できるな……国際裁判とやらに申し立てだけでもしてみるか?」
「ちょちょっと……嫌だなあ……王様迄一緒になって……無茶な申し立てをするなんて……お考えをお改め願えますか?2百年も昔の契約を持ち出すなんて……はっきり言って無茶苦茶な理屈ですよ。」
事務長の主張を王様も少し取り入れるつもりになった様子だが、途端にハーゲル王子がダメ出しをする。
「まあ待て……ハーゲル王子殿……勇者殿の処遇について、無茶な理屈を並べ立てておるのは、貴殿ではないのかな?なぜ勇者殿が貴国へ出向いて、貴国の発展のために尽力せねばならないのかな?」
「それは……勇者様が貴国や魔王国のために尽力しているのを見て、是が非でも我が国においでいただき、我が国のために尽力していただこうと……何度も主張しておりますように、勇者様はこの世界共有のお客人ですからね。貴国のために2年間も働いたわけですから、今後2年間はわが国のために働いていただきます。
何か無茶な要求をしておりますか?」
王様からの問いかけに、ハーゲル王子ははつらつと答えた。
「それが無茶な要求と申しておるのだ……我が国では勇者殿に、我が国の発展に寄与して欲しいなどと一度も要望しておらん。それどころか大魔導士様と勘違いして召喚してしまい、それに気づいてからは魔王国軍に対抗するために尽くしてくれとすら、要望しておらん。」
「ほ……本当なのですか?」
王様の言葉に驚いて、ハーゲル王子が俺の顔をまじまじと見つめる。
「はっ……はあ……本当ですよ……おっ俺は……特に何も指示がなかったので、俺の……考えを事務長さんに伝えただけで……だけど……それがあんなにうまくいくなんて……考えてもなく……。」
素直に当時の様子を頷きながら答える。
「今お聞きいただいたように魔王軍に対抗する武器などは、何も頼まれていなかった勇者殿が自ら進んで提案なされたのだ。それはまあ……魔王軍に征服されてしまっては、わが身も危ういと考えられたかもしれないがの……戦闘参加も頼んでいなかったのに、いつの間にか非戦闘員のはずの女性らとともに加わっていた。
軍に入ったからには指揮系統に組み込まれて頂いたようだが、あくまでも自主的なものじゃ。
魔王軍撃退後の国境警備に関わる建造物用の鉄筋コンクリもそうだし、スーパー堤防とか申すものやその住居ビルに関しても、なにもこちらから要望していないのに勇者殿が自ら進んで提案なされた。
こちらとしては間違ったとはいえ召喚してしまい、元の世界には戻れない身の上……せめて健やかに過ごしていただきたいと、働かなくても食べて行くのに困らない勇者の称号を与え……まあ実際に戦争時にはそれくらいの功績は上げられたのではあるがな……住みたい土地に住んでいただいただけだ。
魔王国の支援も勇者殿が自ら進んで提案された事柄だし、こちらから何かしてほしいなどと要望したことなど一度もないし、これからも変わらない。
だから……貴殿が勇者殿に我が国のためにお力をお貸し願いたい……とか、尽力してくだされ……等と強要しながら連れて行こうとするのだけは阻止させていただく。
その為には裁判であろうが、なんでもしようと考えておる。
いずれ……勇者殿がこの大陸内の国を旅してみたいと願い出たならば、警護をつけて各国訪問の旅へ出してやろうとは考えておる。確固たる安全を確認したうえでな……だが勇者殿が望まない限りは、この国から出ることはない。他国に移住したいと願い出たならば……本心からと理解できればそれを断らん。
貴殿は先ほど、貴国は我が国よりも豊かな国だとおっしゃられたな?その豊かさは……長年に渡って我が国から……妖精国や獣人国からも同様かも知れないが、搾取し続けたおかげではないかと……すでに勇者殿には見破られておるであろう……そのような国へ出向きたいと勇者殿は思うであろうかな?」
事務長1人が頑張ってもらちが明かないと判断されたのか、今度は王様自らが辛らつな言葉で応戦する。いつも穏やかで優しい王様でも、タッタルンの方が豊かだと目の前で主張されたことは、腹に据えかねたのかもしれないな……。
「分かりました……交渉決裂ですな……本日は帰らせていただきますが、貴国との今後の関係含め、わが王ともじっくりと話し合ったうえで、対応を検討させていただく所存です。では、これにて……。」
ハーゲル王子は、ようやく俺を掴んでいた手を離し、すたすたと開けた扉からVIPルームを出て行ってしまった。残されたのは異常な静けさだった……前回の来訪時もそうだったが……何とも……台風のような人物だな……。
「王様……ご助力いただき、誠にありがとうございました。」
事務長が深々と頭を下げ、俺も続いて頭を下げた。
「なんの……勇者殿の処遇に関する事であるからな……何よりも勇者殿の意思は尊重せねばならん。それが誤って、この世界に召喚してしまった我が国の必須の義務なのじゃ。だから……あれくらい何のことはない。じゃがまあ……うまくまるめこめたのぅ……ふっふっふっ……。」
大活躍の王様だったが、結果には大満足のご様子だ……王様すごい……。
「ありがとうございました。
それでですね……ハーゲル王子がちょっと漏らしたことで……すごく気になる点が……。」
「うん?なんだ?タッタルンがエルムグリムよりも豊かな国と言ったことは王様が指摘されたし、文美雄がタッタルン行ったならば、今度はエルムグリムへ帰りたくはないと言い出すかもしれないなどと言った事か?」
俺の問いかけに事務長は、あまりピンときてはいない様子だ。
「いえ……そうではなく、魔王とタッタルン王が国際会議をしていたという事です。以前は月に一度は連絡があったといっていましたよね?かなり頻繁に連絡を取り合っていたと思えますよね?」
「ああそれは……ハーゲル王子様との話にも出ていたが、魔王国はタッタルンに漁業権を委託していたから、タッタルンの領海で操業する際は必ず連絡をしていたはずだ。そうでなければ領海侵犯という事で、漁船が遠距離魔法攻撃を受けてしまうであろうからな。
王子様は魔王国の領海では操業していないなどと言っていたが、恐らくそれは嘘だろう。エルムグリムが取り戻した穀倉地帯南側の海岸での地引網漁の漁獲を見ても分かる。あの辺りはかなり良い魚場だ。漁をしていないはずはないからな。魔王国への支払金額の点で指摘を受けたから、あのようなことを言ったのだろう。」
なるほど……そんな考え方も……だが……
「でも……今もうすでに魔王からの連絡は来なくなったといっていましたよね?小鬼たちが漁を開始するのは埋立地に堤防とふ頭をエルムグリムが建設してあげて、船着き場が完成してからだから来季からですよね?
今はまだ魔王国は、タッタルンに漁業権を委託しているはずです。確かに東側の穀倉地帯は今ではエルムグリム領ですからね……絶好の漁場は失ったでしょうが、それだって魔王国の海岸線のほんの僅かです。
魔王国の領海内では未だにタッタルンは操業しているはずで、もしかしたら来季から委託契約がなくなるので今のうちにと……乱獲だってしているかもしれませんよ。なのに何の連絡も取り合っていない……。」
「ふうむ……成程……確かになあ……漁師たちからたまに浜辺から遠洋を航行する漁船が見えるとの連絡が入るが、あれはタッタルンの漁船が魔王国東岸の大陸棚で操業するために向かっているのだろう。
そう考えると、魔王国とタッタルンとのこれまでの情報交換とかやり取りの内訳は、漁獲高や漁場での操業の話ではなかったという事になる。確かになあ……年間の操業計画など期初に一度文書を交わせば済む話だ。
だとすると何の話だ?茶飲み話とか趣味の話とは……考えにくいが……。」
俺の指摘に事務長も腕組みして考え込む……
「もしかすると2年前の魔王国の侵攻は、タッタルンは承知していたのではないですか?あるいは承知していたというよりも、タッタルンと共謀していたとか……だからこそ、タッタルンは派兵しなかった。
流石に同盟を結んでいる国に対して、魔王国軍とともに兵を向けることは出来ませんからね。魔王国と共謀していたけれど、兵は出さず見送るという事を約束していた……。
だからこそ、魔王国はエルムグリム侵略に乗り出したのではありませんか?もし仮にエルムグリムとタッタルンの同盟が強固であったならば、魔王国だってうかつに手出しできなかったはずです。その為の同盟ですからね。エルムグリムに百万全軍で侵攻したすきに、本国をタッタルンに叩かれてはたまらない。
かといって兵を半減すると、今度はエルムグリム側の抵抗にあって進めなくなる可能性だってある。本国防衛の心配がないからこそ、魔王国は全軍で侵攻してきたのではないでしょうか?
その為にずっと以前から両国は親密に連絡を取り合っていた……これはあくまでも俺の推測ですけど、タッタルンはこれまでにもかなり汚い手を使って、エルムグリムから金を巻き上げて来ました。機織り機の保全や、海産物の交易等でですね……。」
「まあ……そう言う見方はあるな……多少強引なやり方であったと、王子様も反省していたではないか。」
事務長はこれまでのことは水に流して、致し方なしと考えているのだろうな……
「対する魔王国は……確かに過去からエルムグリムは度々侵略されかけていますが、新国境の堤防工事だってエルムグリムに全面的に任せたし、ログハウス建築や河川敷の耕作指導に関しても不問でした。
更に棚田含め農業、林業、酪農など……技術支援だって何も言わずに受け入れました。加えて漁業に関することだって、小鬼たちにエルムグリムが指導してやって漁が出来た途端に、タッタルンへの漁業権の委託を取りやめて、更に外洋での操業はエルムグリムと共同で行い、当面取り分は半々でいいとまで言っています。
同盟国であったタッタルンの方が不正を行っていたし、エルムグリムに対して非友好的であるのに対し、敵国であったはずの魔王国は、接してみればかなり友好的な国であると、完全に立場が逆転しています。
もしかすると……魔王はタッタルンの国王にそそのかされて、エルムグリムへ侵攻したのではないのでしょうかね?必ず成功するから……と、おだて上げられて……。
俺は2百年前の魔王国の侵攻ですら、タッタルンが裏で手を引いていたのかもしれないと考えていますよ。当時から漁業権は、タッタルンへ委託していて両国は交流があったのでしょう?
魔王国が侵略戦争を仕掛けたおかげで、エルムグリムは同盟を維持しなければならなくなり、立場が弱くてタッタルンの無茶な主張も、受け入れざるを得なくなったわけですからね……。」
「ほっほう……そうなると……真の敵国はタッタルンという事かな?ふうむ……これは参ったのう……。」
「王様……確かに言われてみれば……怪しい点は多々あるように思われます。過去の魔王軍侵攻時のタッタルンとの関係など、古文書を見直してみる必要性があるでしょう。
そうなると……鉄道の輸出など……このまま進めるわけにはまいりません。あれは交通や輸送の革命とも言えますからね。技術は開示しないまでも現物を敵国に渡してしまう訳には……何か理由をつけて延期の方向で動かなければなりませんね。タッタルンから問い合わせ等来た場合は、こちらへ回してください。」
「おお……そうじゃのう……何かいい言い訳を皆で考えるとしよう。そうして今後は付き合う国を、きちんと見定めなければいかんようだな……人間同士の信頼よりも、国としての信頼の方が大事なようだな。」
王様は少し寂しそうに、大きくため息をついた。




