17.真の敵国は?
17.真の敵国は?
「国際法では漁業権など境界を明確に区切ることができないものは、大陸内各国の共通の資産として扱うとあるな?大陸棚の海域までは国境線の延長上までが領海だが、大陸棚を超える部分に関しては共通の資産として、毎年各国の最大漁獲量を定めている。
まあ……魔王国に関しては漁業の技術がなかったから、我が国において魔王国分の漁獲を上げ、手数料を除いた後の収益を送っていたがね。」
ハーゲル王子は俺の目の前まで来て、なんだかわけのわからん話を始めた。
「はっ……はあ……そうなんですか?」
「ハーゲル王子様……勇者は国際法には精通しておりませんので、代わりに私がお答えいたします。
仰る通りでございます。海の生き物には国境など関係なく回遊など移動するものが多いですから、それらがどの国の資源であると明確に取り決めることは出来ません。その為、海に面している海岸線の長さによって、各国の漁獲量を割り当てるという会議でしたね。
近年の漁獲高から割り出した資源を枯渇させないための最大漁獲量を決めれば、それに海岸線の長さの比をかけ合わせれば各国の割り当てが明確になりますからね。
海に面する土地を持たないわが国では、大陸棚の領海も持たず、更に各国で案分される漁獲量の割り当ても御座いませんでした。その為海産物は非常に高価で、庶民には手の届かない物でした。
その海産物を不正に貴国から輸入し、旧議長らは莫大な収益を上げていたのですね……。
ですが昨年の戦勝から我が国も領海を取り戻し、昨年から漁獲量の割り当て会議にも出席させていただいております。更に漁業という事に不慣れなもの同士、協力し合って技術力を向上していこうと約束し、これまで貴国に委託していた魔王国も漁を始めるために、会議に参加するようになりましたね。」
そうなのだ……大陸全体の漁獲量の割り当て会議という存在すら知らなかったこの国だが、昨年末にお隣の妖精の国からの通達で会議のことを知り、議長国である妖精の国からの招集を受けタッタルンへ事務長らが出向いて会議に出席したのだ。
そこで会議に参加したことがなかった魔王国のことを知り、急遽伝令バトを送って魔王にもリモートで会議に参加していただいたと後で事務長から聞いた。
そんな会議のことは露知らず、勝手に漁業を始めていたのだったが、その時点では大陸棚どころか近海漁のみでセーフ……なんせ外洋に出られるだけの大型船は建造中で、出たくても出られなかったからな。
棚田を作って出た土を使って埋め立てを行い、絶壁だけだった魔王国の海岸線に平地を作り、そこにため池を作っていずれエビの養殖を始める為に養生中だが、ついでに船と漁網も貸し与えて、小鬼たちにも漁をするという事も教え始める予定だ。これも……山ばかりの国で飢えないための方策なのだ。
だが……おかげでタッタルンでは割り当て漁獲量が減り、減収だろうな……なんせ魔王国の海岸線は非常に長いからな……恐らく全漁獲高の三分の二は割り当てとして持っていたはずが、その半分以下の四分の一程度に落ちたらしい。その恨み言を言うのかな?
しかも通商条約とやらで高額で取引されていた、エルムグリムからの売り上げも本日のうちあわせで正式に解消されたのだからな……多大なる減収減益……ううむ……刺されないかな……。
ちなみに海に面した土地が戻ったとはいえ、エルムグリムの海岸線は非常に乏しく、案分比は確か十六分の一程度だったような……それでも大陸棚部分の地引網や底引き網漁の漁獲高は、これまでのエルムグリムの海産物の流通を遥に凌駕する量であり、皆満足しているので問題なし。更に養殖も始めたしな……。
その上……外洋漁業が始まれば、魔王国はエルムグリムと共同で外洋漁業を行うと宣言してくれている。試験的に始めた大陸棚での漁の収益が、これまで委託していたタッタルンから送付されていた総量を、たったの数回で上回る計算のようだ。(これにはタッタルンから輸入する海産物が非常に高額という理由もあるが……魔王国では外洋漁業で受け取った収益を使って、必要な都度タッタルンから高い海産物を輸入していたのだ。)
海産物は間に合っていると主張する魔王に対して試験的操業を提案し、埋め立て途中の海岸線で底引き網漁を行ってみたのだ。高速打撃魔法を扱える魔導士はいないが、代わりに力が有り余っている子鬼たち……8人乗りカヤックのような手漕ぎの長いボート2隻を並べ網を引いたら、思わぬ漁獲量に魔王も驚いたのだ。
魔王は埋立地のエビの養殖計画も含めて感謝しているようで、外洋漁業での漁獲は当面の間、エルムグリムと魔王国で折半でもよいとまで言ってくれている。
これに対してタッタルン側は外洋での漁で上がった収益であり、魔王国側の大陸棚での漁は実施していなかったとし、更に大陸北方に位置する魔王国では外洋の漁獲量も少ないのだと主張した上で、それなら現物で引き渡すとも反論したが、魔王国は今後自分たちで漁を行うと漁業権を取り戻したわけだ。
これにより魔王国とエルムグリム共同の外洋での漁獲量割り当ては、おおよそ半分の二十分の九となった。
おおっと……こんなこと考えている場合ではない。式典があったから正装という事で、俺はいつものステンレス製の鎧兜ではなく、稽古用の簡易甲冑を身につけていて、しかも王様の面前なので帯刀していない。
対するハーゲル王子は前回同様きらびやかな衣装を身にまとい、外国の要人なので帯刀を許されている。
タッタルンの剣は、エルムグリムと同様にお飾りのなまくらなのであろうか……もし違ったらどうする?
これら全ては俺がこの世界に来てから起こったことだから、お前が悪いのだーっ成敗してくれるーなんて……なったらどうしよう……兵士長はちょっと頼りないしな……やっぱり自分の身は自分で守るしか……。
「海産物だけではなく、国際法では地下資源に関しても定められておるな?地下資源の埋蔵が国境をまたいで確認された場合は、当事者国間の埋蔵量を調査したのち、その比率によって案分するとある。
その他国際法では、各国共有の資源財産に関しては、基本的に分けられるものはその比率で案分し、分けられないものは共通の資産として扱うとある……これはいいかね?」
ところがハーゲル王子はまたもや訳の分からん国際法について、俺の鼻先で話し始めた。だから……俺は国際法は知らんというに……。
「はい……その通りでございます。」
事務長が代わりに応じてくれた。
「先ほども主張したが、召喚者はこの世界に一時代にたった一人だけ。つまり勇者様はこの世界での共有の財産……失礼、人をもの扱いしてはいけないな……共有の客人という事になる。
どうやら勇者様のお力で魔王国を退けた後は、勇者様とともに魔王国に対してもお力を注いでいらっしゃるようですな?農業支援に酪農、林業に今度は共同で漁業ですか……魔王国も発展し続けておるようですな?
おかげで月に一度は連絡が来ていた魔王との国際会議も廃れてしまったと……わが父タッタルン王も嘆いて居られる今日この頃だ。
いい加減勇者様を手放していただきたい……何度も申し上げるように、勇者様は共有の客人なのですからね。これまでの2年間はエルムグリム王国と魔王国の両国間のために尽力なされた。
今後2年間は我がタッタルンのために尽力していただく番だ。我の主張は間違っているかな?
さっ……期が変わる今が一番適切と思われます。我とともにタッタルンへ参りましょう。」
突然ハーゲル王子は手を伸ばして俺の右手を掴むと、強い力で俺を引っ張って連れ出そうとする。抵抗しようとしたらさらに2人のお付きのものが俺の両側について拉致。連れ去ろうとし始めた。あーれー……
「お待ちくださいハーゲル王子様……仰っていることの意味が分かりかねます。」
すぐに事務長が引き留めてくれて、扉の前の衛兵たちが立ちふさがり、王子たちが出て行こうとするのを防いでくれた。ふうっ……たすかったぁー……
「分かりかねるー……だと?どういう意味だ?」
ハーゲル王子が、今にも掴みかからんと目をぎらつかせて事務長を睨みつける。
「ですから……勇者がこの世界共有の客人であるという事は認めます。ですが勇者を召喚したのはわが国であり、勇者が我が国の客人として生活し続けることを、他国から揶揄される理由はありません。
そもそも召喚魔法自体が我が国秘伝で……しかもわが国ですら廃れかけていた秘伝中の秘伝の魔法なのです。貴国には召喚魔法がないので、召喚者が存在しない環境で召喚したくても召喚できなかったはずです。
勇者が貴国へ出向きたいと考えているのであれば、それを引き留めることは出来ないでしょうが、勇者は貴国へ行くことを望んでいないでしょう。そうだな?」
「はいっ……勿論です。エルムグリムを離れたくありません。」
事務長の問いかけにすかさず答える。有無を言わせず連れて行かれては困るからな……。
「その為……技術を輸出いたします……としているのです。
国際法には共有財産は分配、若しくは互いに情報公開して技術を持ちあう……とありますが、その技術で作り上げたものを正当な対価で輸出することも認めるとあります。
魔王軍に立ち向かった際に勇者が提案した武器の数々は、技術供与で十分なものに関してはそのサンプルを提供し、製作上の問題点に関しての質問に鋭意対応してきました。投石器のように勇者がその製作技術を隠したいと判断したものに関しては、製造コストを対価として輸出致しました。
勇者が提案した蒸気機関による鉄道に関しましては、その技術の大半が我が国技術者の試行錯誤によるものであり、勇者の知識だけによるものではない為、鉄道の線路を含めた工事自体を請け負うとしているのです。
こちらに関しましては、製造コスト以外にも技術料を上乗せさせた価格を設定させていただきますが、不当に高額にするつもりはございません。あくまでも国際取引として、納得できる範囲に止めるつもりです。
以上の対応で、御認め戴けますようお願いいたします。」
「駄目だね……それでは勇者様という共有の客人の恩恵を、各国で共有しているとは言えない。」
事務長が俺の意思を尊重してタッタルンへは行かないと断り、さらに俺が提案した鉄道技術だって輸出するのだからいいだろうと答えたにもかかわらず、それではだめだとハーゲル王子の俺を掴む力が増した。
「どういう意味でしょうか?」
「分からんか?うーむ……賢者の称号を頂いているのであれば、既に気付いているはずだぞ。
勇者様は魔王軍の侵攻に伴い、貴国に召喚されたな?」
「はい、そうですが?」
「そうして様々な武器……これまで魔法一辺倒のこの世界の住民では到底考えつきもしなかった、物理力を利用する武器……を提案された。それにより百万もの大群の魔王国軍を撃退することができ、この世界での戦い方が一新されつつある。
更に新国境整備のために高層住宅建築技法を提案し、続いて魔王国と友好関係を築こうと食料支援をまずは提案し、飢餓状態を解消。更に農業支援に酪農、林業支援に果ては漁業に関しても支援を始めた。おかげで今ではエルムグリム王国と魔王国は、友好国ですらある様子だ。
この大陸内での脅威でしかなかった魔王国の懐柔も出来つつあるが、それらは全てエルムグリム王国と魔王国の実情を、勇者様が把握されたうえでの指導であったはずだ。
鉄道だってそうだ……大勢の魔導士を要する魔導船を持たない貴国の幹線を構築しようとして、勇者様がご指導なされたに相違なかろう?
その技術を我が国に持ってきたところで貴国の二番煎じでしかなく、わが国独自の発展にはつながらない。決して鉄道技術が欲しくないと言う訳ではなく、我が国においでいただき、我が国の弱点を克服するためのご指導を頂きたいと、そう主張しているのだ。それこそが共有の客人を活用するという事ではないのか?」
ハーゲル王子は俺の腕をつかむ力をさらに増し、お付きも追随して無理やりにでも俺を引っ張って行こうとし始めた。体が上方へ浮き、床から足が離れて行きそうで……やばい。
「ま待って……おお俺は……たたタッタルンには……行きたくない……です。だから……諦めて……。」
腹に力を込め、最後の力を振り絞って連れて行こうとされるのを拒否する。
「残念ながら勇者様……あなた様のご意志はこの際関係ないのです。なぜならば……エルムグリム王国へ召喚されたとき、あなたは自ら望んで召喚されましたか?自らを異世界へ転送する魔法も存在するかもしれませんが、召喚魔法というのはこちらから呼び出す一方通行の魔法です。
なので魔王軍侵攻に伴い召喚されたあなた様は、魔王軍撃退後もこの世界に留まっておいでです。なぜならば元の世界へ戻す魔法は、この世界には存在しないからです。
なのであなた様は望んでこの世界に召喚されたのではなく、この世界からいきなり召喚されたはずです。
そりゃあまあ……もしかすると召喚の手続きで召喚相手の同意を得るルールというものが存在するのかも知れませんが、それにしてもエルムグリム王国のことをよく知らされずに、大群の魔王軍に攻め込まれているから助けてほしい程度の情報を受け、この世界に召喚されたはずです。
なのにあなた様は今では満足しておられ、自らエルムグリム王国を離れたくはないとおっしゃられている……同じことですよ……出向いたことのない我がタッタルン王国に対して違和感や脅威を覚えていらっしゃるかもしれませんが、それはつまり食わず嫌いに他なりません。
もしかして我が国に対してあることないこと吹き込まれていませんか?エルムグリム王国が、そのような姑息な手を使うとは思えないのですが念のため……。
おいで頂いて数日お過ごしいただければ、我が国がどれだけ快適で住みやすいかご納得いただけるはずで、今度はエルムグリム王国へは戻りたくはないとおっしゃられるかも知れませんよ。
先ほどもご提案させていただきましたが、我が国への来訪時には奥方様方をご同伴されても構いませんし、我が国も重婚は認められておりますから、我が国の女性と結婚なされてもよろしいのです。何十人もの妻を侍らせることができる、大邸宅をご用意させていただきますぞ……。さあ……ご一緒してください……。」
ハーゲル王子は鋭い眼光で扉の前に立ちふさがる兵士たちを退かせ、俺は左右から両脇をがっしりと抱え上げられ、ついには踏ん張っていた足も浮き、無理やり連行されそうだ……。
「お待ち願います。それならば不本意ながら此方からも要求させていただきます。」
「要求……だと?今更、魔王軍侵攻の際の出兵の約束を、守らなかったことを持ち出すつもりか?その件に関しては通商条約の請求先を条約を結んだ当事者にすることで、双方納得したはずだぞ!」
ドアノブに手を差し伸べてドアが開き、今にも連れ去られそうとしていたところでハーゲル王子の動きが止まり、事務長へと振り返ると同時に、凄みをきかせた声で怒鳴る。
「その件ではございません……ご請求したいのは……今から約2百年前のこと、この大陸から初めて外洋航路へ出向こうとしていた時分の契約です。
当時度々来訪する他の大陸からの船舶が持ち込む、様々な美術品に工芸品……日用雑貨に関しても、この大陸の技術では作ることができない高度な技術によるもので、全て高値で取引されておりました。
そうしてついに他大陸の技術を盛り込んだ外洋船舶建造に乗り出しました。ですがその計画には莫大な費用が必要で、とても一国の予算でまかなえるものではなかったようです。そこで当時のタッタルン王国は、お隣の我が国に共同出資を持ち込み、半額ずつ出し合って巨大船舶を建造したようです。
その時に交わした契約書は今でも残っていて、他大陸で得た技術や情報に関しては全て共有の財産とし、互いに情報を開示することを義務とするとなっております。さらに他大陸との通商で得た利益も、2国間で均等に配分するとなっております。
数年越しでようやく建造した船で外洋に赴き、こちらからは穀物や果実及び家畜などの農産物を大量に詰め込んで持っていき、半年かけて様々な工芸品に美術品や工業製品などを持ち帰って、多額の利益を上げました。それらは妖精国や獣人国及び魔王国へも輸出されましたが、利益は均等に配分されたと記録されております。」
「なんだ……それだったら契約は正常に履行されておるではないか……何の請求があるというのだ?」
「ところがその翌年……2回目の外洋航路での他大陸訪問時は違っていたようです。前回同様に、こちら側の農産物を持っていったことに変わりはありませんが、帰りには……なんと最新の機織り機……を積んで持ち帰ったと記録にあります。ですがその機織り機は、エルムグリム王国にはもたらされませんでした。
その理由として、タッタルン王国の技術者が1回目の来訪時に数人現地に残り、機織りの技術を学んだ事で扱える特殊技術であるからと……技術のないエルムグリム王国には機織り機は不適と主張されたようです。
仕方なく3回目の渡航の際に現地に技術者を置いて行こうとしたら、現地ではタッタルン王国との独占技術支援契約がされているから、エルムグリム王国の技術者は指導出来ないと断られたようです。
次いで……一方的にタッタルン王国の主張が通り、先ほど申し上げました通りの条文……共有財産は分配、若しくは互いに情報公開して技術を持ちあう……とありますが、その技術で作り上げたものを正当な対価で輸出することも認める……という一文が追加されたと記録にあります。
機織り機の代金は正当な対価で輸出されましたが、保全の技術者や段取り替えの職人に関しては、他大陸で学んだものにしか扱えない特殊なご技能であるからと、高額な給料で雇わざるを得ない契約となりました。保全や段取り替えのの技術も開示すべきと要求したところ、これらは技術というより修業の成果であり、他国と分かち合えるものではないと断られたようです。
当時はまだ隆盛を誇っていたエルムグリムの剣術を比喩に出され、修業を積んだ剣豪の技術を他国に開示せよと要求されてもできないのと同じと主張されたと議事録にあります。
当時は魔王国の突然の襲撃を受け、大魔導士召喚により征服は免れたものの、貴国との同盟が破棄されたなら、すぐまた魔王国の侵攻が始まるものと懸念されたため仕方なく……と、当時の外交担当者のメモが議事録に挟まっておりました。」
「ふん……いずれにせよ、一旦はそれで納得したという事であろう?多少の強引さはあったとは思うが、それも遥か昔のこと……いまさらその点を突いてどうなるというのだ?」
ここまでの説明を受けてもハーゲル王子は、平然と態度を緩めようとしない。
「確かに機織り機自体は貴国内の販売価格と同等に輸入されておりますが、タッタルン王国固有の技術として開示されておらず、未だに保全の技術者のみならず段取り替えの工員ですらも貴国の職人を高額の報酬で雇わねばならないままなのですよ。
自国の工員は糸を現場に運ぶ作業と、織り上がった反物を運び出す作業をするのみとなっております。その為、自国内生産と言いながら、反物は未だに高額となっているのです。
互いに出資し合い、利益は公平に分配するとした契約は、守られておりますか?
ハーゲル王子様はあくまでも勇者がこの世界共通の客人であると主張し、貴国に招き入れることを望んでおられるようですが、まずは貴国が共有とか公平にといった約束事を守ってからにしていただけませんか?」
凄むハーゲル王子にひるむことなく、事務長は辛らつに言い放った。
「わわ……わかったわ……非常に不本意ではあるが……即刻機織り機の技術を開示して、貴国内でも保全や段取り替えが出来るよう、技術指導しようではないか……勿論無償で……そうすれば文句はないな?」
「そうではないのですよ……だから請求するべきかどうか、迷っていた訳です。」
「何を言いたいのだ?」
ううむ……事務長はあくまでも冷静な様子だが、ハーゲル王子は……一触即発と言った感じだ……大丈夫か?




