5.訓練施設
5.訓練施設
「いよいよ明日から入居が始まりますね。これで狭い仮宿舎ともお別れできます……。」
半年ほどの漁村生活を終え、堤防の仮宿舎に戻ったころは世の中は冬支度の冷え込みだった。この世界では当たり前だがクリスマス等の冬の行事はないし、聞いたところでは年末年始の長期休暇なんてものもないそうだ。というよりも……年越しとか年始……という風習はないらしい。
こちらの世界では日本でいう年度明けの4月……俺がこの世界へ召喚されたころの季節だが……そこが年の切り替えで、学校などの学年もその時に繰り上がるし、年齢も誕生日ではなく年度で増えて行くそうだ。
いわゆる数え年……かな?生まれてすぐに1歳となり、年度が開けると2歳になる。何月というのか聞いたがよく発音できない言葉だったが、日本でいう3月に生まれた子供は翌月の4月で2歳になるし、4月生まれの子供は、1年経って年度明けにようやく2歳だ。
クリスマスだって正月だって元の世界の俺には全く無縁の行事だったが、今年こそは……という期待があったのだが、無残にもその目論見は崩れてしまった。雪は降るのか聞いたところ、平地では多くても年に一二回程度で、積もることなど滅多にないそうだ。それでも北の山脈は冬には雪化粧となるらしい。
「ああ……まあ、今の宿舎の広さがあれば、人一人住むには十分なのだがな……だがまあ……流石に子供を含めた家族で暮らすには狭すぎるからな……新居で暮らせるのは有り難いぞ……。」
漁村ではログハウスに2段ベッドの12人部屋での生活だったが、堤防の寮では1畳半程度の個室生活だ。
事務長の話では、この世界の一般的な家族持ちの住居は2K程度であり、そこに5人家族とか多ければ7から9人家族が暮らしているそうだ。決して一部屋が広いわけではなく、6畳から8畳間程度でその暮らしのようだ。だから12畳2段ベッドで8人部屋の城の寮など、余裕で暮らしやすかったと豪語していた。
それでもついに新居のビルが完成したのは喜ばしい。何と地上11階地下2階建て……各階移動には水車の動力を利用したエスカレーターが完備され、ついでに水車の力を使ってポンプを動かし屋上タンクまで川の水をくみ上げて浄化した水を送り、蛇口をひねればいつでも新鮮な水が得られる上水システムも完備している。
川の水の浄化槽と各家庭の排水処理施設は、地下1階に設置した。
水車の動力と言っても、機械式で長い可動軸を歯車でつなげて住居ビルまで持っていく……なんて考えていたのだが複雑で凄まじく難しく、連続雷魔法でメッキしていたことを思い出し、銅線コイルを鉄棒に巻き付け強電流を通し磁石を作成。磁石を回転軸先端に取り付け周囲4ヶ所に電磁石を配置し、水車の動力で回す。
電磁石のコイルの配線をまとめれば、そこに電荷が生じる……つまり発電だ……発電した電気を被覆した銅線で配線し、住居ビルのエスカレーターのモーターを回す。小学生の夏休みの自由研究などでやった、モーターを風車の回転する力で回して発電する……の応用……言ってしまえば電化を行った。(案は俺が出したが、全ては事務長が試行錯誤の上やってのけたのは言うまでもない)
河川敷の水車から動力を数十m先の住居ビルまで運ぶより、一旦電気に置き換えたほうが楽と気がつき、小さな発電所を何ヶ所も作ることになった。おかげで上水用のポンプも賄えたが、河川敷は水車だらけとなった。
本格的な上下水道完備の都市など、この世界では恐らく初めてのことだと思う。俺が話す前の世界での暮し状況を事務長がことごとくメモを取り、こんな風でしたよ……的な内容を実験しながら読み解き、実現していくのだから、本当に感服する。
だがしかし、上水の殺菌用の塩素……と言ってもどのようなものなのか、俺だって全く知らない。カルキとか塩素とかいう言葉は、TVCM等で時たま聞いたフレーズだったので、覚えているだけだ。
取り敢えず川の水は漁師町と同様に、大きめの砂利→小さめの砂利→砂→布を用いた物理ろ過(こちらの世界で行う一般的な浄水手順)を行い、それに解毒魔法……恐らく雑菌やウイルスなど除去可能なはず……を施してから再度目の細かな布で濾過して浄化されたことにした。
更に更に……ソーラー発電は無理でも太陽熱をつかった温水器なら……と考え、真っ黒く塗ったガラス配管を住居ビルの屋上に張り巡らせ、暖められた温水は共同浴場へ回し24時間かけ流しとした。おかげで夏場は昼間のみならず、夜遅くまで風呂釜に火を入れる必要性がなさそうだ。
風呂釜の燃料は建築資材の端切れを取っておいて使用し、いずれは不要となったログハウスを解体して、その廃材を利用する計画だ。(薪ストーブ)
さらにかけ流した廃湯は川に放流する前に住居ビル隣にガラス張りの温室をつくり、保温用とすることにした。これによりバナナなどの熱帯亜熱帯性果実なども、採取可能となるはずだ。
生活排水の処理には、活性汚泥(自然界にある好気性菌などを用いて浮養分を処理した後ろ過して川へ流す)……といった仕組みを小学生の時に見学した排水処理場の説明をうる覚えていたので、処理施設を作ってみた。排水はスーパー堤防内に配管した共同下水管を用いて、下流域にまとめて排水することにした。
電気による照明こそないが、かなり先進的な住居施設は入居前から大注目され、事務長は設計方法から工事の手順まで事細かに記述し、それらは城下町の整備に利用されるという事だった。
魔王軍の侵略を予期して住民を疎開させ住居を破壊した城下町は、新国境沿いの防護壁兼用の高層ビル住居が完成後、整備が開始されることになった。
新国境の住居ビルは地上55mで堤防の高さ3mを含めると川面からはなんと58mの高さとなり、魔王国の魔道船でも容易に超えられない高さとなった。
住居ビルは全部で40棟、各階に4LDK住居が20戸、地上11階建てなのだが1階は食堂と公衆浴場と保育所などが完備されるため住居は2階から……合計2百戸……全部で8千戸分準備された。
一応各戸にもキッチンはついているのだが共働きが基本の社会……食堂や浴場が皆の希望として多かったため採用された。廃墟となった国境の町で食堂などを開いていた夫婦が、各棟食堂のスタッフとして雇われることになった。更に小中高と学校の校舎も同様にスーパー堤防の上に建てられ、移住者を待つのみとなった。
魔王国進攻からほぼ1年余りで、戦後の復興の兆しが見えて来たようだ。王都の復興にはもう1年余りかかりそうだが、それでも取り戻すことが出来た穀倉地帯ではすでに麦や米が豊作となっており、国力は以前よりも豊かに強くなったと皆が喜んでいる。
「では……お元気で……。」
「レルムもな……。」
「ようやくお城へ帰れるな……。」
「9ヶ月間、ご苦労様でした。」
特級魔導士のレルムと王国軍将軍兼兵士長は、国境警備警備の任を解かれ王都へ帰ることになった。
代わりに1900名の僧兵が派遣され、既に駐留中の百名の僧兵と合流し、50名ずつ各住居棟に居住し、非常時には地下2階に籠り魔法結界を張る任務に就く。
既に駐留中の350名の魔法兵士は、8名若しくは9名ずつ居住棟に配置されることになった。
駐留中の49名とさらに派遣の僧兵の妻として帯同した70名の元連絡係の女の子は、各棟の屋上にて昼間の国境警備を行い、夜間は交代で僧兵が魔法結界を張ることになった。これで頑健な国境警備が行われることとなり、レルムと兵士長がお役御免となったのだ。
やはり……というか、ボウガン兵として国境警備に残った連絡係の女の子たちは、若いせいか全員が花嫁ドラフトの指名がかかり、全員が誰かしらの嫁となったようだ。ああ……売れてしまうのだったらあの子もこの子も指名しておけば……なんて後悔もなくはなかったが、まあいいさ……先は長い。
結婚適齢期の兵士らにそれとなく聞いてみたところ、誰もが1人の嫁を貰った程度で、重婚推奨と言いながら複数の嫁を貰えたのは10人に一人もいないという事が分かった。皆本当に好きな人この人……だけ指名したのかと尋ねたら実はそうではなく、10名以上は名を連ねたのが大半のようだ。
まあ……そこそこ時間があったから、その間に今付き合っている子に対しては指名するよと言っておいただろうし、そういった子がいなくても指名したいけどどうかな?程度は相手に聞いてから1番指名を絞ったのだろうと思う。以降は気になるかわいこちゃんの名前を連記したのではないだろうかな……。
人それぞれ好みは千差万別……とはいうものの、好みの女性の名を挙げれば重複する人が多いようで、それでも今回は受ける側も拒否権があったので、何とか公平に一人ずつはゴールにたどり着いたと言える。複数人のハートを射止められたのは、どこにでも一人ぐらいは学園の王子様みたいなのがいるから、そいつだろう。
第1次ドラフトは12000人余りの指名を一人ずつ確認していき1年近くかかったようで、取り敢えず今回の指名確認の手順をまとめて効率化を進め、来年以降は年に2回……半期ごとに指名カードを配布する事を目標にしていくと、なったようだ。
薙刀兵として帯同し国境警備で残った工房の女性50名は、技術者故なのか……事務長はじめ20過ぎで結婚適齢期を外れそうな年齢の方も多いためか、実を言うとまだ半分以上指名されずに残っている。どれも粒ぞろいの美女ばかりだというのにだ……だからまだまだ全然……ご指名したい子は大勢いる……。
1900の僧兵は二千名余りの妻を帯同してやって来た。50名の薙刀兵と僧兵に帯同した各地の工房の作業員の女性50名は、そのまま工房で作業を兼任することになり、駐留中の450の兵士同様、彼らもようやく新居を与えられて新婚生活が始まるようで、初日に合同で結婚式が執り行われた。
俺は10名の嫁を貰うので3戸、他の男性兵は2戸ずつ住居を与えられ、それぞれの妻たちと蜜月生活に入ることとなった。いずれ子供が増えた時には、新棟を建築するんだそうだ。なんせスーパー堤防は距離が長いからなあ……住居ビルはその中央部分に40棟建っているだけだ。
流域の長さ分は住居ビルと同等の高さの壁を立てて、魔導船による国境突破を阻止するようにしてあるが、まだまだ増築する長さは十分あるし、あまり長くすると移動が大変というのなら幅が広いから、2列、3列にすればまだまだビルは建築可能なのだ。
「よよよ……よろしくご指導願います。」
ベッドの前で跪き、三つ指ついて深く頭を下げる。
「よろしくと言われたってあたしも初めてだから、よくわからんぞ。まあ……色々と試してみようではないか……」
「あーれー……。」
なんてことが、恐らく各戸にて行われたんだろうなあ……
とりあえず事務長に手伝ってもらって何とか作り終えた手製の仏壇と、メリアンちゃんの妹たちと事務長で1戸、サッサーちゃんとアーミナちゃん達2人と1戸とし、残り1戸は予備として空き家にしておいた。
同時に穀倉地帯の農耕を行う3千戸の家庭の移住も始まり、元農家の魔法兵とともに穀倉地帯の田畑のみならず、河川敷も畑に開墾してキャベツやニンジン大根などの野菜畑に変えた。広い穀倉地帯へは装甲車で農家の方々を朝晩送り迎えすることになっている。お役御免の装甲車の有効利用だ。
結界が張ってあって農耕向きではなかった旧国境沿いの山岳地帯には多くのログハウスが建築され、牛やヤギに羊などの酪農は既に始まっている。
さらに旧国境の廃墟には20棟の住居棟が建築中で、やがて旧国境の町と荒れ果てた旧穀倉地帯の修復も開始されるであろう。急ピッチで戦後の復興が進んでいくのが、日に日に目で見て分かってくるのはすごい。
「へえー……道場ですか。」
「ああ……堤防が完成して正規建築が出来るとなった時に、武道場建築を要望する声が大きくてな……どうせ住居ビルの施工がすぐに始まるのだから、仮宿舎を広く作り変えるのは無駄という事で、道場や体育館は後回しで、グラウンドを優先的に作ることにしていた。
魔法以外の戦闘技術は古の王令で禁じられてはいたが、それでも子供のころの遊びと言えば、チャンバラや陣取り合戦が主でな……適当な太さの木の枝を拾ってきてはチャンバラごっこをよくやったものだ。」
住居ビル等が建ち並ぶスーパー堤防の中央部分に、大きな三角屋根の施設がいつの間にか建てられていることに気がつき事務長に尋ねたところ、剣術や柔術の道場だと教えられた。他にも屋内競技のための体育館や、弓道場なども隣接して建てられていた。
「やっぱり事務長はお転婆だったのですね……。」
「そうではないぞ。この世界では特に男の子の遊びとか女の子の遊びの区分はなくてな……地域によっては今でいう柔術の真似事のような、組み合っての投げ技や締め技などを競い合う遊びとか、あるいは棒切れを持ってたたき合うチャンバラに、拳による突きや足を使う蹴り技を使う武術など……いずれも古き時代に競い合って技を磨いていた格闘術を絶やさぬよう、子供の遊びとして伝えられていたのだ。
何せ成人してからの武術修得は、王令によって禁じられていたからな。それまでの武術信仰を撤廃しようとする動きに対する、庶民のささやかな抵抗とも言えたな……。だから完全に武術の歴史が閉じていた訳ではなくてな……今回の戦勝を機に復活させようという気運が高まったわけだ。
だがまあ……武術の才能と魔法技術の才能は一致しないもののようでな……今では特級魔導士のレルムなどは、子供のころは体が小さくてな……病弱と言う訳ではなかったが、年下で女のあたしにも敵わなくて、陣取り合戦の時にはいつもあたしの後ろに隠れてあたしが守ってやっていたな……。」
「へえ……事務長さんとレルムさんは幼馴染だったのですね?そうして事務長さんの方が強かった……だからか……多分レルムさんより事務長さんの方が3,4歳は年下ですよね?なのに事務長さんの方がいつもレルムさんに命じるのは、そういった幼いころからの関係性からなのでしょうかね?」
事務長は美女中の美女だから意外と年齢不詳というかわからなかったのだが、30前後と思われるレルムとの関係にはいつも疑問を感じていた。なにせ事務長の方が偉そうなのだ……。こんなこと……レルムがいる時にはとても怖くて聞けなかったのだが、王都に帰った今なら……と思って聞いてみる。
それが事務長の気質なのかとも思えたのだが、レルムとさほど年が変わらなさそうに見える兵士長に関しては、丁寧語で接しているからな。レルムは俺に対しても丁寧で優しい口調で接してくれているので、そのせいかとも思っていたのだが……。
「ああ……まあな……レルムはあたしより5つ年上だが……実を言うとあたしの一つ違いの妹の旦那でな……だからあたしは戸籍上はあいつの姉なのだ。その関係性が大きいのかな……。」
「ええっ???レルムさんは事務長の妹さんの旦那さんなのですか?だったら……今では俺の……弟ともいえるのでしょうか?」
なんと……事務長の口からとんでもない関係性を告げられてしまった。
「おお……そう言えばそうなるな……だがまあ……そんなに気に病むことはない。これまで通りに付き合えばいいはずだ。あいつは誰に対してでも、腰の低い柔らかな性格をしているからな……。」
愕然とする俺に対して、事務長はにこやかな笑顔で答えて見せた。
「きえーっ!」「とりゃあーっ!」「だぁーっ!」
道場の大きな両開きの扉を開けると、すぐに中から気合の入った掛け声が聞こえて来た。
「道場の半分は板の間で、午前中は剣術の稽古に使われ、午後からは槍や薙刀の稽古に使われる。文美雄に言われたように、槍や薙刀は木製のものを作って安全に行っている。勿論剣術も木刀使用だ。
ステンレス製の鎧は重くて稽古には不向きだし、何より数が少なくてな……魔法兵士用の簡易甲冑を用いて稽古しているから魔法兵が主だな。だが……熱が入った時など思い切り打ちこんでな……頭を叩かれて気絶したりもするから……加減はしているのだが……常に回復系の僧兵も控えている。
もう半分は畳で……こちらは午前中は柔術で、午後からは蹴りや打撃を含んだ格闘術の稽古に使われている。こちらは麻の稽古着を使用しているな……主に僧兵が修業している。
文美雄はどちらに参加してもいいが……魔法兵用の簡易甲冑を作ってやろうか?」
事務長が中の様子を見ながら、自分も参加したいのかこぶしを握り締めてむずむずと体を震わせ気味に説明してくれる。女性は薙刀が主なようだが、事務長は剣術がやりたくて仕方がなさそうだ。
「ははあ……素振り程度ならいいですけど、打ち込み稽古をするなら木刀は竹刀に変えたほうがいいですよ。
打ち所が悪ければ、大怪我だってしてしまいますからね……。」
「しない……とな?どのようなものだ?」
「木刀だと固いので、竹を使って打ち込み稽古するのです。」
「竹だって十分に硬いぞ……あれは節があるからな……だから竹槍に……。」
「だから……節を抜いてさらに4つに縦に割いて、もう一度組み立てるのです。そうすればかなり衝撃は和らげますから、回復の僧兵は必要なくなるでしょうね……こう……こんな形だったかな……四角く薄い鉄の刃を中に仕込むのです。更に牛革かな……それで柄の部分と先を束ねて……つばは木の板で……。」
子供のころに少しだけかじった剣道の竹刀を分解したときの記憶から、竹刀の構造を略図で教える。
「ほほう……これだと衝撃も随分と和らぎそうだな……槍や薙刀は何か工夫できないのか?あれだって、脳天の直撃すればかなりきついぞ……。」
「うーん……俺は見た事がないけど……槍だって竹刀同様竹で作って棒の先端を丸く加工して綿を詰めた布で覆ってやれば、突いてもそれほど痛くないですよね……薙刀もそうかな……柄の部分は竹で刃の部分はやはり丸みを帯びた形に加工して、綿を詰めた布で覆ってやれば……足を払ったりしても多少痛いだけで……。
柔術はともかく、打撃系の格闘技もそうですよ……両手にグローブつけたり膝や足首にはこう……プロテクターって言って、やはり綿を詰めた布でカバーするのです。頭だってヘッドギアと言って、頭部を守るための防具を使えば、結構激しい組手だってできますよ。
練習とはいえ、思い切りいけないと実戦には向きませんからね。」
ボクシングだって練習では大きなグローブをしていたはずだし、オリンピックの格闘技系の種目を見ていても、組手の時には分厚い防具やプロテクターをつけていたような記憶がある。そういった防具があるからこそ、思い切って突っ込んでいけるのだろうからな……誰だって痛い思いはしたくもさせたくもないはずだ。
木製の槍や薙刀を作ることを勧めたのは、あくまでも素振り練習のためで打ち込み稽古は考えていなかったからな……まさか道場まで作るとは……。
「おおそうか……早速工房へ行って試作品を作ってみるか……文美雄も一緒に来てくれ……どうせ、剣術用の簡易甲冑も欲しいのであろう?」
「はいっ……一緒に行きます。」
道場見学も早々に引き上げ、すぐに工房に行って竹の節を抜いて縦に割き、竹刀づくりが始まった。割いた竹は切った面をアールに面取りして再度組み立てるのだが、固定するための両端の鉄板の刃の大きさの加減が難しかったのだが、一度決まれば後はスムーズに量産できた。
先端を丸く革でカバーし、持ち手の柄部分もスエード革で仕立てた。確か刃の向きを教える紐もついていたよな……とか記憶をたどって、結構うまくできたと思う。
ついでに槍や薙刀の打ち込み稽古用に加えグローブなど防具も併せて試作し、取り敢えず20セットずつ道場へ持ち込んで、試しに打ち込み稽古をしてみたら結構評判が良かった。
俺用の簡易甲冑も作ってもらい、これで俺も道場で剣術けいこができるようになったのは有り難い。これまでは朝晩の素振り程度だったからな……更に弓矢も弓道場の射場でちゃんとした稽古が出来る……これは有り難い……なんせ剣道以外は習ったことがない……剣道も半年でやめた……からほぼ我流だったから、指導して頂けるのは本当に有難い……なんせこの世界では、今後も必要となる可能性が高いのだからな……。




