1.新生活始まる
ようやく続編が、書きだせました。とはいっても、大まかな大局観すら決まっておらず、まさに筆の向くまま……と言った形で連載していくと思います。うまくまとめて終焉を迎えられるといいのですが……
毎日1話ずつの更新を、何とか果たしていく所存です。よろしくお願いいたします。
1.新生活始まる
魔王国側の大河の河川敷には堤防すら作っていなかったようで、このままでは大雨による川の氾濫が予想され、現に毎年1,2度は洪水が発生してたとの情報・・・。
緊急で設営した国境用の鉄条網の柵の内側(川側)に、王国側の技術者を派遣して3mの高さの堤防を施工し、その上にさらに5mの高さに丸太を組んで正式な国境の塀が作られた。
元の柵よりも大河側なので、苦情は出ないだろうという事で……実際の国境は大河の中央部分とし、魚などの水産資源は今後両国間で協議して、年間漁獲量を取り決めることとなった。
治水工事を兼ねた国境整備は魔王国側にも歓迎され、小鬼たちも王国側技術者の指示に従い、工事は順調に行われたようだ。
その時の技術者たちの報告からわかったのだが、小鬼たちは小柄にも拘らず力が強く魔力も強い。それは恐らくサルなどの野生動物と同じく、力のリミッターがかかっていないからで、人間よりも体が小さなサルなどの握力が百キロとかあるのは、常に力の制限を外しているからだと、昔科学番組かなにかで聞いたことがある。
人間は成長していくうえで学び、無意識のうちに力を制御するようになる。常に力を解放していると疲れるし、関節や筋肉に無理がかかって体に異常をきたす場合があるからだ。スポーツ選手などは訓練で筋力や柔軟性を高め、1時的なら力を制限せずに発揮できるようにしているため、オリンピック選手などは超人的な力が出せると聞いたことがある。火事場の馬鹿力もリミッターが外れて出せる力のようだ。
魔力も筋力も常に全開の小鬼たちは戦闘能力は高いが消耗が激しく、長期間戦闘はできないようで、その為大軍を持って一気に攻め立てるという作戦を魔王国軍は取ったのだろうと、事務長が解説してくれた。
小鬼たちの寿命が短いのも、力を制御しない為に体への負担が大きく、歳を重ねる度に響いていくからだろうな……ある意味燃え尽きるわけだ……。
講和条約締結待ちなどで2週間ほど休んだ小鬼たちは、王国が3ヶ月と見積もっていた堤防工事と国境の壁の施工を、たったの1ヶ月で成し遂げたようだ。
勿論工具も全て王国側が準備し、施工方法も事細かく指導した上でのことのようだが……もしかしたら真っ当な司令官が魔王軍を指揮していたのであれば、俺のつたない提案などすべて撃破して王国は征服されていたのではないかと、空恐ろしく感じた。
小鬼たちは魔王国内の山中にある洞窟で集団生活をし、種まきと時折の雑草取り及び収穫の時だけ野宿しながら穀倉地帯で働いていたそうで、しかも収穫の大半を魔族たちに搾取されていたらしい。
不憫に感じた技術者たちが丸太を組んで作るログハウスの作り方や、魔王国側の河川敷は十分に広いので、そこを開梱して耕作地とするやり方も教えてきたと聞いた。
小鬼たちは文化レベルも低く、魔族たちにいいようにこき使われ、数を増やして手足として働かせられ、更に兵として他国への侵攻に利用されていたという事のようだ。
これで小鬼たちが国境を超えて襲撃してこなくなってくれたら、いいのだが……今回で懲りているから今の世代はもう襲ってこないと思いたいのだが……。
「土木工事の技術者も魔王国から戻って来たから、今度は王国側の国境の壁の施工を始めるぞ。遥か昔は大河と堤防が国境線であったと伝わっているが、流石にそれだけでは手薄だ……それは歴史が物語っている。
王国側の堤防も魔王国側と同様、堤防の上に高い塀を作ってもよいのだが、景観を損ねてしまうので避けて欲しいという意見が多い。何かいい案はないか?」
日々目まぐるしく展開した戦乱の状態から、安穏とした平穏な毎日が1ヶ月以上続いたころ、仮設小屋の俺の部屋に事務長がやってきて、問いかけて来た。永くテント暮らしはできないと、山から木を切り倒して運んできて、2階建てのログハウスを何棟も堤防の上に建てたのだ。
基本的には4人の相部屋のようだが、俺と兵士長とレルムと事務長は特別に個室が与えられている。個室と言っても4人部屋の1/4の広さで机とベッドのみの部屋なので、実質有効面積は大差ないが、翻訳魔法なしでは言葉も通じない異世界の人と相部屋はちょっときついので、助かっている。
(翻訳魔法なしでも生活できるよう、こちらの世界の言葉をメリアンちゃんに頼んで教えてもらっていたのだが、それは今は中断している。文字など全く読めないので、読書も出来ず暇な時間の過ごし方が辛い……)
完全勝利で終戦とはなったが未だに国境の維持管理は不安が大きく、我ら装甲車部隊は兵を引き上げることもできず、ずっと駐留して国境警備を行っているのだ。
ログハウス建築は山で切り倒した材木を飛行術で運んできて、それを適当な大きさに切りそろえて、また飛行術で適切な位置まで持ち上げて積み上げ固定するのだが……魔法でここまでできれば、トラックや重機など発明しようなんて思わないだろうな……としみじみ感じた。
俺もログハウス建築時はおがくずの処理など手伝ってはいたのだが、建った後は……毎日特にやることもなく、ランニングしたり素振りをしたり、弓矢の訓練をしている程度だ……。
実家が農家だったという兵士たちは、耕作地を引き継いで畑の世話をして草むしりなどやっているようだが、元の世界でも家の庭の草むしりすらしたことがない俺などは、昼間はやることがなく部屋に引きこもっているだけなのだ……ああ……テレビゲームが欲しい……。
「えーと……そうですね……この川は川幅も広く河川敷も広大なので、スーパー堤防にしませんか?」
「す……なんだ?その……何とか堤防というのは?」
「スーパー堤防です。前の世界のニュースなんかで知ったのですが、堤防の幅を広げてその上に幹線道路や家などを建てる……穀倉地帯は畑の区画ばかりで、細い畦道では家など建ちませんよね?
だから堤防を広くして、その上に住居を構えるのです。しかも高層の……高いビルにして、多くの人が住めて、さらに防壁にもなるような頑丈な建物を作るのです。」
上が幅広の台形を描き、川と反対側のスロープを緩やかにして、坂にも住居を配置できるよう設定する。
「成程……堤防を広く作り、上に兵舎兼用の防壁となる建物を建造するわけだな……いい案だと思うが、木造建築だとせいぜい3階建てが限度だ。石を積み上げても……5階程度までだな……しかも石だと重量がかさみ……堤防も相当増強する必要性がありそうだぞ……。土壌が固まるまでの時間も必要だ。」
事務長が腕を豊かな胸の下に組んで考え込む。
「鉄筋コンクリートならどうですか?石造りよりも頑丈で、しかもそんなに壁を厚くしなくて済むから、重さもさほどでもないはず……さらに俺がいた元の世界では、百何十階建て……なんていう高層ビルだってありましたよ。いきなり百階建ては無理でも十階建てくらいなら……。」
「てつ……こんくり……とな?なんだそれは……新たな建築技法なのか?」
「鉄筋コンクリートというのは、コンクリートの中に鉄骨を入れて、強度を増したものです。コンクリートは硬いけど脆いので、地震などで崩れやすいみたいですね。中に鉄骨……鉄の棒ですね……を入れることで、折れたり崩れたりしにくくなります。高層建築の場合は、鉄棒を溶接して継ぎ足して長くしていくのです。
壁には……鉄網を入れたりしていたかな?恐らく高層ビルだけとは思うけど……さほど高くなければ、鉄筋だけでもいいような気が……この辺りは実験で確認してみてください。
工事現場を見たことがあって……高いビルを建てる時は地面にも深い穴を掘って、大きな基礎を作っているみたいでしたけど、あれは上に出ている部分と重さの釣り合いをとる為でしょうかね……。
それからコンクリっていうのは……ええと……モルタルの原料のセメント……石灰石と粘土などを混ぜて焼いて砕いた真っ白い粉で……それに水と砂や砂利を混ぜたもので……乾くと固くなるのです。
石灰とは……そうだ……チョーク……この間黒板に絵を描いたときに使ったチョークなんかもそうだったはずですよ。チョークと粘土を混ぜて焼いて後で、水で溶いて固めて実験してみませんかね?」
俺は建築に詳しいわけではないが、グラウンドに白い線を引く粉やチョークが石灰の一種であろう位は知っている。それがコンクリートになるにはどのような精製や配合が必要かは知らないが、確か小学校の時に近くのセメント工場見学に行ったときに、粘土などと混ぜて焼く……みたいなことを言っていたはず……そこまで分かれば、事務長だったら何とかしてくれるだろう……的な……。
「ほお……白墨は火山の噴火時に飛んでくる火山灰を精製して作るもののはずだが……それが建築資材となるのか?ううむ……この辺りにも火山はあるから、火山灰を採集させてみるか……おいっ。」
事務長はすぐに部屋から顔を出すと、近くに居た男性兵士に指示を出し始めた。山に行って火山灰を採取してくるのであろう……。
ある程度ヒントを与えておけば、後は事務長が何とかしてくれる……段々とこの環境にも慣れて来たな……。
「工房の人間も数多くこっちに来ているから、どうせならばと……こちらにも工房を建てさせた。まあ、今の所は仮設小屋……だがな……荷馬車に竈や炉に連槌を積んで持ってこさせたから、こちらでも十分工作できる環境にはなった。そこで……だ……ちょっと来てくれ。」
あれから1週間ほど経っただろうか、突然事務長から呼び出しがあった。ついて行くと、俺たちの住居用の2階建てのログハウスの3つ隣に、いつの間にか三角屋根のロッジ風ログハウスが建てられていた。
建物の中に入ると、熱気とともに甲高い金属の打撃音が休みなく続いている。
「農作業のための鍬や鋤に鎌などを鍛造し始めたところだ。
いずれ国境近くで農作業に従事していた者たちが、この地に永住することになっている。国境の町や村は全て家は破壊してしまったし、田畑も魔王軍の侵攻で踏み荒らされてしまい当分使えん。まだこっちのほうがましという事で、こちらで土地を与えられて農作業に従事すると決まったようだ。
その為の住居を急いで準備せねばならん……坊主の言う……コンクリ……というのはこれか?
モルタルの原料と言っていたな……モルタルとは建築担当に聞いたところ、レンガを積んで建物を作る時に繋ぎの接着剤のようなものを指すようだ。木造住居の外壁に強度と耐火性を向上させるために使ったりするらしいのだが、鉄筋を骨組みにして直接壁や柱にするとは担当者も驚いていた。
モルタル材料と水と砂を混ぜて鉄筋と固めてみて建築担当に聞いたところ、十分高層建築に耐える強度だろうと評価している。幸いにもこの国は火山が多くてな……モルタルの主原料である石灰岩は多く産出するから、大量に使うことは出来そうだぞ。」
そうか……翻訳魔法があるから俺が言葉を発することにより、この世界にあるものであれば自動的にこの世界の固有名詞に変換されるのだ……一からコンクリを作ってビルを建てるには不安があったが、元々この世界で建築に使われているものの転換であれば安心だ……翻訳魔法万歳。
俺が小学校に上がる時に新築した実家は、木造モルタルづくりと父親が言っていたので、モルタルとは何ぞや……という検索をした覚えがあったのが功を奏したようだ。
工房の中では既に溶鉱炉が稼働しており、連続打撃魔法とかで連槌が甲高い打撃音を発しながら金属を鍛えていた。事務長は鍛造部門をすり抜けて奥の事務机の所で立ち止まり、白い大きな塊を持ちあげてから振り向いた。そうして俺に、灰色の直方体を手渡す……直方体からはまっすぐ伸びた鉄棒が突き出ていた。
「ははあ……鉄筋コンクリートですね……コンクリに砂を混ぜたのですか?もっと粒の大きな砂利を混ぜると、それだけ丈夫になるけど見栄えが悪くなる……かな?
それと砂は海の砂は使ってはいけないみたいですよ……塩分が含まれているから……コンクリにも中の鉄筋にもよくないみたいです。川砂と川の砂利を使ってください。」
事務長は机の上にステンレスのバットを置き、その上に袋から白い粉をまくと、更に机の下から細かい粒子の砂が入った袋を取り出してからこちらを見た。
「なるほど……机の上で水を混ぜて材料をこねていたのですか……でもその……俺が見た光景は……机の上で粉と水を手でこねるのではなく、もっとこう……大きな……浴槽というか、ベッドほどはある大きな鉄製の容器にコンクリと砂を入れて、水を混ぜて……鍬みたいな工具で混ぜていました。
恐らく使い切り……ですよね……濡らした木枠に流し込んで固めていましたね……。穴を掘って、ビルの形の下地に木枠を囲み中には大きな鉄板が立てられていました。基礎工事……からですね……。」
取り敢えず俺は、昔工事現場で見た様子を告げる……幼いころから一人ぼっちだった俺は、工事現場などは格好の暇つぶしの場だった。中へ入ることは出来なかったが、それでも黄色い枠の外にさえ出ていれば、じっと見ていても誰に叱られるわけでもなく、おじさんたちが汗水流して働いている現場を見ることが出来た。
毎日見ていると家の基礎工事から段々と建物の構造が出来上がって行くのが楽しく、特にビル工事現場などは数ヶ月間から時には年を跨いでの工事期間、ずっと通いつめたものだった。
「おおそうか……取り敢えずどうやればいいのかわからなかったので、試しに机の上で手でこね、そのまま丸めてみたんだ。型枠に流し込むならもっと水分量を多くして、水にぬらした布を当ててそこに流し込んでみるといいのかな。太い柱を何本も作って大黒柱とすればいいわけだろ?……明日から早速やってみるとするか。
まずは基礎……工事……からだな?深く掘って基礎を固めて……鉄棒と大きな鉄板……こちらでも作れるから、すぐに手配しよう。それと砂の場合と砂利の場合の強度なども比較してみるとするか……まずは1棟建ててみて……ありがとうな……。
坊主は本当にこの世界の救世主だ。勝手にこちら側の都合だけで元の世界から召喚されたというのに腐らずに、この世界のために尽力してくれて……本当に感謝している。」
事務長は、満面の笑顔で深々と頭を下げてきた。
「いえいえいえ……俺なんか、本当は鉄筋コンクリートや建築の知識なんか、何にもないのです。ただ元の世界で見知った記憶を話しているだけで……そんなたわいもない雲をつかむような話を事務長さんは真面目に受け止めて、実現してくれて……こっちこそ本当に感謝しています。
俺は元居た世界では、親にも兄弟にもまともに相手もされない、本当につまらない男でした。でも……この世界にやってきてからは、俺の話すことに皆さん真摯に耳を傾けてくれて、しっかり受け止めてくれる……俺は本当にこの世界へ召喚してもらい感謝しています。
どちらかというと、俺の方がこの世界へ招いていただいて、ありがとうとお礼を言いたいくらいです。」
本当に俺はこの世界が、俺の住むべき世界だったのではないかと、逆に感謝しているのだ。
「そ……そう……なのか?だったら有り難い事なのだが……だが坊主……元の世界でも、あたしの所へ初めて来たときのように、話し方はつたなかったが自分の考えを伝えようと、必死で話しかけていたのか?
それでも皆無視をして、坊主の話し声に耳を傾けもしなかったのか?だったらそれは……本当にひどい世界であっただろうが……ううむ……。」
事務長は何やら思いついたことがあるようで、腕を組んで考え込み始めた……ええっ?どういうこと?
「いやっ……でも……あの時はメリアンちゃんが、王様から俺の言う事を聞いてくれるよう指示が出ていると言ってくれたから……だから、真面目に聞いてくれたんですよね?」
そうだ……話下手の俺でも、事務長が何とか理解しようとしてくれたから、俺の考えを伝えられたのだ。
「いや……別に王様の助言があったからではないぞ。あの時は戦況が芳しくなくて、しかも女のあたしでは戦に参加することも叶わずにイライラして、機嫌が悪かったからな。つまらん話であれば、王様の指示でも相手にせずに、そのまま追い返していたわ。
だが……あの時の坊主は自分の考えを伝えようと、絵を描いたり模型を使ったり、身振り手振りも交えて必死で頑張っていたではないか……だからあたしも耳を傾ける気になった。坊主の気持ちが伝わって来たからな……あんな話し方は、元の世界ではやっていなかったのか?それでもだめだったのか?」
「あっ……いえ……お……俺は……どちらかというと、人嫌いの方で……。」
というのは嘘だ……人嫌いではなく苦手なのだ……なんせ俺が挨拶しようとすると目を背けられたり、顔をゆがませて視線を移されたりすると、俺を嫌っていることがはっきりと伝わってくるから、知った人間でも俺は決して目を合わせようとはしなかった。親兄弟でも一緒だ……。
だが……思い起こせば……たまに親に何か言われても俺はすぐさまはねつけ、まともに応対しようともしなかった。勿論兄弟相手にも同様だった。
学校に入って同級生から親し気に話しかけられても無視する始末で……俺は人見知りの性格だから、見知らぬ人に急に話しかけられても、まともに応対できないのは当然と自分を納得させていた。
もしそこで勇気を出して、こちらからも応対していたなら?仙石彩佳……彼女だって同級生になった当初は必ず挨拶してくれて、声をかけてくれた時もあったはずだ……その時にこちらからも話しかけて行っていたのであれば……もしかしたなら俺の生活は大きく変わっていたのではなかったのか?
この異世界へ突然召喚され……そのままでは放り出されてしまうと恐れを感じ、何とか役に立つところを見せようと、超絶美少女のメリアンちゃんにもいいところを見せようと邪な考えもよぎり、余計に力が入って美人事務長相手に熱弁をふるったものだ。
俺の持つ知識をフルに活用し、知恵を絞って投石器やボウガンを提案して見せた。つたない話し方ではあったが、その熱意に事務長は反応してくれていたのだ。
では……元の世界はとても冷たい世界だと感じていたが……それは俺のせいでもあったというのか?
ううむ……たしかにな……元の世界では親に歯向かったとしても、兄弟とは口をきかなくても3度の飯にはありつけていたし、学校へも通えていたからな……親の顔なんて、高校入ってから恐らく一度くらいしかまともに見ていなかったな……。
反省しきりではある……もうこれ以上両親や兄弟たちを悪く思い返すのはよそう。勿論同級生たちもな……だが最早戻れないそれこそ異世界の話だ……俺はこちらの世界で生きて行くのだ……2度と同じ轍を踏まぬよう、深く深く心に刻んで……。
元の世界とは見違えるほど自分の意見を言えるようになった俺は、多分成長したといえるのだろう。それもこれも全てはこの世界へ召喚してくれたおかげともいえる……このことに感謝するとしよう。
「ま……まあ……俺もふがいなかったとは思いますが、どうせ戻れない世界のこと……この話しはもういいではないですか……それよりも堤防に建てるビルのことですが……十階建てなど高層だと上り下りも階段では大変なので、エレベーターなど……作りたいですね。いや……エスカレーターかな?
川の流れはそこそこ急なので、水車を設置してその回転力を利用して動く階段……というのを作ってみてはいかがでしょうか?」
ついでに高層ビルにエスカレーター設置を提案してみる。動力は水力だ……魔法では常時動かすのは無理のようだからな……水力であれば、常時稼働だって可能なはずだ。何せ対岸も見えない大河が目の前にあるのだ、その川を田畑の灌漑にだけ利用するなんて勿体ない。
エレベーターのように、ボタンを押して何階迄……何て複雑な動きはどうやればいいのか俺には素案すら出せないが、常時稼働のエスカレーターなら水力利用で何とかなるんじゃあないか?
「うん?水車……とな?それと動く階段……と言ったか?」
「はい……水車とは川の流れを直接回転エネルギーに変える装置です。その回転力を使って、階段を動かすわけですね……。」
水車の略図を描き、それから階段の絵を描いて、それが回転エネルギーで順に動いていく様を図で記す……原理など細かなことは分からないが……まあ何とかしてくれるさ……。
「ほほう……面白いな……早速試作させてみるか……。」
事務長の目が輝いた……
時間がかなり開いたので……ストーリーお忘れの方、前章迄読み返しを……




