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16.古の魔王国とエルムグリムの関係

16.古の魔王国とエルムグリムの関係

「あの落石は……恐らく坊主を狙ったものだろう……。」


 装甲車で回りを囲うようにしながら陣を築き作戦会議を始めたところ、事務長が開口一番……先ほどの大岩は俺を狙ったって?兵士長や宮廷魔導士などの司令官を狙ったものではないのか?


「ええっ……俺を?……まさか……どうして俺なんか……誰が総司令か分からないから、全員狙ったんでしょ?だけど一発目が落ちただけですぐに疑われて、俺たちが上がって行ったから……。」


「いや……違うな。恐らく奴らは気がついたのだろう……どうしてエルムグリムの戦闘力が上がったのかをな……当初十万の大群も、更には4万の精鋭ですらも魔王軍はほとんど被害を出さずに全滅させたのだからな。


 残りは一万と少しの兵でしかも大半が城の守備兵のみ、というところまで追い詰めた……まあ、魔王軍は詳細は知らないだろうが、残兵が少ないという事は分かっていたはずだ。


 にも拘らず魔王軍百万をも凌ぐ戦闘力で、しまいに国境付近まで押し返してしまった。恐らくこれまでの魔王軍侵攻と同じく、異世界から大魔導士を召喚したのだろうと……しかもそれは従来とは異なるタイプの大魔導士だ……。」


 ははあ……これまで同様大魔導士を召喚したであろうと、魔王国もうすうす感づいていたというのだな?実際は召喚間違いをして、俺なんかがこの世界へ来てしまったのだがな……だが俺なりに頑張ってるぞ。


「坊主の黒髪はこの世界では目立つからな……親書の交換式では礼儀のために兜を外していたから、恰好の標的となったのだ。メリアンはその点に気付いていて、落石を認めると咄嗟に坊主をかばい突き飛ばしたのだ。


 おかげであたしも助かったのだがな……だがそれはあくまでも付録のようなものだ。坊主を狙って何か仕掛けてくるかもしれないと、メリアンは周囲に注意を払い続けていたのだろうな。一言あたしらにも言っておいてくれたらよかったのだが、彼女もあまり自分の推察に自信が持てなかったのだろうな。


 なにせ一国の代表を疑うような羽目になりかねんから……下手をすれば国際問題だ。だから彼女は一人で、なんとしてでも坊主を守ろうと決意していたのだろう……。」


「じゃ……じゃあ、あれは……俺一人を狙って?メリアンちゃんが気づいていなかったら、俺一人だけの犠牲で済んで居たってことですか?そんな……」


 なんということだ……メリアンちゃんは皆を助けようとして、たまたま岩の真下に居た俺をかばってくれたのではなく、最初から俺の危機を感じ取って救ってくれたというのか?どうして俺なんか……俺なんかどうなってでもメリアンちゃんだけは生きていて欲しかったのに……。


「坊主はこの世界に必要な人間だからな……異世界からこの国を救いに来てくれた人だからな……。」


「そんな……俺なんか間違ってこの国に来てしまっただけで……本物の大魔導士であればもっとスマートに、皆を巻き込まずに自分だけの力で魔王と組みあって勝利し、平和をもたらしてくれたはずです。


 俺だからこんなふうに皆を頼って……皆の力を借りながら何とかここまでやって来たけど……だけど……だけど……大切な人が……犠牲になって……俺なんか病気かなんかになって死んでしまえばよかったんだ。そうすれば正規の大魔導士が召喚されて、メリアンちゃんは犠牲にならなくて済んだのに……。」


 がくっと膝から崩れるというのはこんなことかと思った……膝が突然折れてそのまま尻が踵に当たっていた……鎧を着ているから尻全体に強い痛みがあったが、それを痛いとして体は反応しなかった……そのままパタンと正座。


 俺なんかが来たばっかりに……俺がいると次の召喚はできないし、しかも俺を殺したり自殺されたりしたら、今後2度と召喚が出来なくなる。魔王軍に殺されても同じ……とか言う制約がある為、この国の人はなんとしてでも俺の命を守らなければならないようだ。


 そんな制約さえなければ、メリアンちゃんは犠牲にならなくてもよかったはずなのに……。


「馬鹿なことを言うな……坊主はよくやっている……この国が魔王軍に征服されないよう、武器や作戦を教えてくれている。それらは本当に有益で、おかげで戦況を盛り返すことが出来た。全て坊主のおかげだ。確かに坊主は大魔導士ではない……だけどあたしが思うに大魔導士以上のことを成し遂げていると思っている。」


「そうですよ……文美雄殿は本当にすごく活躍されています。これまで召喚されたどの大魔導士よりもね。」

 事務長の意見に魔導士レルムも同調して、声をかけて来た。


「今までの大魔導士以上に?まさか……買い被りもいいとこだ……俺なんかのつたない説明を、事務長さんが形にしてくれなければ、武器どころかおもちゃにもならなかったはずですよ。


 作戦だって……皆さんが各自意味を理解して動いてくれたから……しかも俺が考えている以上に……仮に俺が司令官だったら、まともに戦えていないですよ。俺なんかのはすっぱな意見を皆さんが噛み砕いて、きちんとした形にしてくれたからこそ戦えているんですよ。決して俺なんかの力じゃありません。」


 どうにもこの国の人たちは、魔法がない世界から来た俺の知識を貴重と感じてくれる傾向がある。いや……過大に受け止めすぎるといえる。落とし穴だって投石器だってそうだ……俺はそのものを知ってはいたが、どうすれば効果的に使えるかなどほとんど知らない……投石器もボウガンだってその詳細機構を知らないしな。


 それでも何とか形にしてくれて、戦争に使えるよう工夫してくれている。だからこそ戦況が改善したのだ。


「歴史書を読んでも、今回ほどの逆境から魔王軍を国境まで追い詰めたという大魔導士は存在しません。それどころか大魔導士を召喚しても戦況改善できずに、領地を減らしながらも講和条約を結んだ……という記録ばかりです。それでも征服されてしまうよりも遥かにましですから……先祖様たちは満足していたようです。」


 なんと……大魔導士を召喚すれば魔王軍を全て追い払って、元の生活を取り戻せていた訳ではないのか?



「魔王軍のエルムグリム国への侵攻理由を説明するには、まず魔王軍兵士の小鬼のことから説明する必要性があります。」

 魔導士レルムが、おもむろに語り始めた。


「小鬼の生態に関してはまだ明らかになっていない点も多いのですが、我々が知っている限り、通常生殖による小鬼の男女の出産割合は5対1で圧倒的にメスが少ない。一度の出産で6匹の小鬼を生むようですが、その時メスの腹を食い破って出てくるのでメスは死亡……只でも少ないメスが1回の出産で死んでしまうようです。


 小鬼の成長は早く、5歳ですでに大人と変わらない体格にまで成長し、40代後半まで現役で兵士として働くことが出来るようですが、平均寿命は50歳と人間よりも短いですね。


 対する我々人間は、15歳で成人し、そこから男は25歳までは兵役につきます。兵役後も軍に残るものは少なく、残るものも35歳で定年で、多くは田舎に帰って農業や林業に従事致しますから、兵士として働く期間は11年と、小鬼たちの方が4倍も長いのです。これが圧倒的兵力の差となっているのでしょうね。


 人間の女性は15歳で成人するとすぐに働きだします。男が兵役についている間、家業を守るのは女性の役目なのです。ちなみにエルムグリム王国の平均寿命は、男女ともに70歳程度ですね……多田羅殿の元の世界は如何だったでしょうか?」


 なんと小鬼の男女比……女少ねえ……取り合いだろうな……しかも1回出産したら死んでしまうのか……女は貴重と言えるな……それでも人口は減って行かないのか……1/6の女が6匹の男女を生むのだからな……人口は増えもせず減りもせず……と言ったところか。


 更に小鬼たちは、生まれてから死ぬまでに現役兵として戦う期間が圧倒的に長い……この兵力差を生かして、戦争を仕掛けてくるのだな……その分寿命が短い……燃え尽きると言った感じかな?


「メスが少なく取り合いとなった小鬼たちは、やがて人間を襲うようになります。しかも小鬼たちの生殖能力は人類を凌駕していて、何と人間の女性をも孕ませられることに気付いたようです。


 小鬼のオスは人間の女性を孕ませて、小鬼の子を設けることができるのです。しかもその場合男女比は5対5……6匹の小鬼中3匹のメスが生まれてきます。勿論孕まされた人間の女性は腹を食い破られて死んでしまいます。


 東の山脈には昔から野生の小鬼たちが住み着き人々を襲い、悩まされてきたようです。何度も討伐の軍が派遣され小鬼たちの巣を直撃しては数を減らしていたのですが、絶滅させることは出来ませんでした。その小鬼たちに目をつけたのが、北方の山奥でひっそりと生活していた魔族たちです。」


「ええっ……小鬼は魔族ではなくて、魔族たちに従わさせられたのですか?」


「はい……そのようです。魔族は小鬼たちを使役し魔法を教え、ただ腕力が強いだけだった小鬼たちに、戦法を与えました。そうして魔王国を宣言し、エルムグリム王国に攻め入ってきたのです。


 当初の戦闘は、魔王軍の小鬼たちが王国領地内に攻め込み、食料や女性たちを略奪することが主な目的だったようです。始まりは4百年ほど前のことになりますが、人間の女性をさらって凌辱し、子を孕ませることによって小鬼たちはその数を劇的に増やしていったようです。」


 ははあ……人間の女性に孕ませれば通常の3倍女が生まれるのだからな……しかも小鬼側の女は減らないから実質4倍に人口は増えるわけだ……なんと……怖ろしい……。


「魔王国は山間の開拓を進め国としての形を作ると、今度は国として正式にエルムグリム王国に戦争を仕掛けてきました。それが2百年ほど前で、当時の国境は現在の山脈の向こう側に中洲の平野があって、そこは穀倉地帯なのですが、その更に向こうの山脈沿いの大河迄が国境だったと聞いております。


 穀倉地帯は平野の乏しい魔王国にとっては垂涎の的だったようで、武芸大国だった我が国は必死に抵抗しましたが、遠距離から放つ魔王軍の広範囲魔法に対して歯が立たず軍は潰滅……そこで過去の魔導士が異世界から大魔導士を召喚し、戦況改善を図りましたが実現できず、魔王に対して魔法の対決を仕掛けたようです。


 魔法合戦で大魔導士は魔王を見事倒しますが、その時の約束が、中洲の穀倉地帯は今後両国共有の土地として、互いに開墾して行くという事となり、穀倉地帯の半分をとられた形でしたが、それでも魔王軍が撤退することを優先したようです。以降エルムグリム王国は魔法立国を目指したのです。」


 なんと……大魔導士が召喚されて、完全に魔王軍を追い返すことが出来たわけではなかったのだ。穀倉地帯の半分取られてしまい……そこで反省して武芸ではだめだから魔法を使え……となった訳か。剣や槍の届かない位置から攻撃する魔法に対抗して、魔法立国を目指したわけだ。


「ところが中立のはずの中州で……王国の女性がさらわれて小鬼たちの子を孕ませられるという悲劇が頻発し、平和な世の中は戻ってきたわけではなかったのですが、それでも手出しできずにいたようです。


 度々大魔導士様が穀倉地帯に出向いて、非道な行為を続ける小鬼たちを捉えて罰したりしていたようですが、まともに小鬼たちとやり合えるのが大魔導士様だけであり、何の歯止めにもなっていなかったようです。


 王宮では必死に魔法教育を行い、1人でも多くの魔法兵士や僧侶を生み出すことにのみ心血を注いでいたようです。その間も小鬼たちは大魔導士様の目を盗み、女性たちをさらっては孕ませて数を増やしていったようです。それは大魔導士様がお年を召されて、頻繁に見回りが出来なくなってからはさらに激しくなりました。


 そうして大魔導士様が崩御された後の140年前……魔王軍は再び我が国に対して侵攻を開始したのです。」


 はあー……土地を共有化なんて言って、人間の女性を簡単に攫うために穀倉地帯を共有化していたとしか思えないな……そうやって魔王国は小鬼たちの数を増やし続けてきたわけだ。


「そのころはわが国でも魔法の研究がある程度成熟し、魔法大全など教材も豊富で多くの魔法兵士や僧侶を輩出し、戦うことが出来ました。ところが魔王軍の数が多すぎで……当時エルムグリム国の魔法兵士が7万に対し、魔王国の小鬼は60万はいたと聞いております。


 数で圧倒している魔王軍はあっという間に共有地であった中州を支配し、山間部を攻め入ってまいりました。


 宮廷魔導士が急ぎ異世界から大魔導士様を召喚したのですがなす術もなく、大魔導士様は現状国境の山脈に強力な物理結界を何重にもわたって張り巡らせることしかできなかったようです。つまり、まだ小作農が残っていたにもかかわらず、中洲の領地を放棄して山脈に結界を張り巡らせて籠ったのです。


 以降、大魔導士様が生存の折は、何度も山脈結界を修復に回っていたようです。


 その結界が大魔導士様の死後百年ほど経って効果がなくなり、今回百万の魔王軍に攻め込まれた次第です。決してこれまで召喚された大魔導士様が大活躍されて、完全に魔王軍を追い払った訳ではありません。


 これは古文書を漁って、これまでの歴史を研究したこのレルムが言うのですから、間違いありませんよ。」


 レルムはそう言って、寂しげにも見える笑みを浮かべた。確かに……期待の大魔導士召喚だったが、余り大活躍はしていない……いや……征服される危機だったのだから、平和を取り戻せたなら御の字か。

 そもそもいくら魔法に長けていたとしても、たった一人だけでは限界があるわな……。


「あたしは歴史に関して碌な教育も受けていないから知らなかったが、それでも曽祖父などから遥か太古は、山脈の向こうの肥沃な大地も我が国の土地だったと聞いてはいた。それが度重なる魔王軍の侵攻により失ったこともな……だから大魔導士様の伝説も聞いたことはあったが、それほど期待してはいなかった。


 だが坊主は、今のあたしたちでは到底考えつきそうもない武器を教えてくれて、さらに戦う戦法も授けてくれた。そりゃあこれまで召喚された大魔導士様を否定するつもりはない。彼らは彼らなりに魔法大国から召還されて、自分が出来ることをしっかりやってこの国を守ってくれたんだからね。


 だが坊主は……自分一人では戦えなかったが、その代わりにあたしたちでも戦える武器を与えてくれた。その功績は、これまで召喚された大魔導士様にだって引けを取らないはずだ。坊主は本当にこの国に……いや、この世界に必要な人間だ。あたしが保証する。


 だから……自分が早く死んで代わりの大魔導士が召喚されたほうが良かっただなんて……そんな悲しいことを絶対に考えないでくれ。坊主はこの国の大切な客人であり、今ではあたしたちの大切な仲間だ。仲間のためなら命を張ってでも守るから、だからそれをあまり重く考えないでくれ。


 坊主を守る為だったら、ここに居る誰もが命と引き換えてでも守るつもりでいるのだから……。」


 事務長の言葉に、兵士長もレルムも、ハッカクさんやターレムさんたちも頷いた……彼らは俺のことをそんなふうに……想って……くれていたんだ……なんで……俺なんか……


「そのうえで……どうやって戦う?投石器もなしに……向こうは竹槍で武装してくるし、さらに厄介なのは魔導船に岩を積んで落とすことに気付かれたことだ。あれを装甲車や城の上空でやられたら持たんぞ。投石器の秘密を知られなくても、十分な脅威となる。いつもいつもすまないが、策があれば教えてほしい。」


 いきなり話題が変わり、事務長は今後の戦術を尋ねて来た。自暴自棄になりかけた俺に対しての慰めは、もう終わったと解釈しているのかな?それとも俺が必要であることを自覚させるために、今後の作戦を問いかけてくれているのか?そうだろうな……悲しみに暮れる俺にはっぱをかけるために……


「………………それだったら問題はありませんよ。魔導船はそれほど高くまで浮かないじゃないですか……せいぜい30mくらい……下からだと高く見えた断崖も上ってみたらその程度だったみたいですからね。


 装甲車の屋根は一部取り外せるようになっているから、そこから火矢を撃ち込めば底に刺さって、木の船だから燃えますよ。まだあまりうまくはないけど、矢は木製だし弓は5本あるのだから何とかなるでしょう。


 城の場合は、そのくらいの高さなら投石器の架台をもう少し高くして、投石側を長くすれば岩は高く上がります。あまり早く動けないので、城の上空に来る前に撃ち落としてしまえば……30mの高さからでも落ちれば兵は死ぬでしょ?被害甚大ですよ……逆にこれまでの様に兵を直接狙うよりも楽だと思います。


 上空から見られて投石器を真似されたとしても……よく考えてみたら、敵の投石器の位置は城壁から丸見えですからね。投石するには地面に固定しなければ無理だから、その位置目がけて投石すれば……逆に城の中の投石器の位置は城壁に隠されて見えませんからね……どうってことありませんよ。」


 目頭が熱くなっているのが分かるが、手で拭ったら丸わかりなので少し上を向いて耐えながら、平然を装いながら回答する。決してわが方を過大評価しているのではないし、強がっているわけでもない。魔導船で上空から攻めて来たなら、それは火矢や投石器の格好の標的でしかないのだ。


「だが……魔道船は進むことを考えればせいぜい2,30m迄しか上がれぬが、浮かぶだけなら百m程度まで上がれるぞ。流石にその高さでは長時間飛ばせぬようだが短時間であれば……城の上空に達するまで高度を徐々に上げ、ゆっくり進んでいって岩を落とすくらいなら出来るかも知れん……。」


 魔導船はもっと高度を上げることができると兵士長は主張する……それでも……


「ああ……その場合は……昔東南アジアの祭りとかをテレビで見たのですが……こんな感じの……行燈の上を塞いだような恰好で……原理は熱気球の原理なのですが、竹ひご組んで紙を貼り付けたもので十分です。


 その中に火のついた蝋燭を入れると、中の空気が温まってふくらみ高くまで上がります。行き先は風任せですが、城の周辺に魔法兵士を潜ませておいて、結界の外から風魔法を使って魔導船まで行灯を誘導していけばいい。行燈の上部にトリモチをつけておけば魔導船の底にくっついて……やがて燃え上がる……なんて工夫できないですかね?」


 いつものようにわら半紙に下手な絵を描きながら説明する。まあ、俺の発案などこんなものだ……でも、そこそこうまくいくような気はしている……なんせ魔導船は木だからな……。


「ほっほう……では早速レルムに頼んで、坊主の提案を城に伝えるとしよう。


 あとは……魔王軍とどう戦うかだな……坊主が言った通り、何が何でも魔王軍を国境から通すわけにはいかん、たとえどんなことになっても……だ。遠慮せずに何でも言いつけてくれ。あたしたちは盾となって、魔王軍の侵攻を止めるつもりでいるからな。


 レルム……いいか……書き出しはこうだ。城での実験評価は必要と思われるが、起死回生の戦術は定まっている。まずは投石器の調整から……」


 事務長はレルムとともに、伝令バトにつける指示書の作成に入ってしまった。



 その日の夕食は……味気ないものだった。いつもあるはずのあの笑顔がないと……これほど食べるものの味がしないものなのか……いつもなら……格段に向上した料理の質と量を讃えながら、楽しい時を過ごすはずなのに……幾つもの涙の粒がほほを伝って皿の上に落ちた……


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