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10.兵糧攻め作戦2

10.兵糧攻め作戦2

 街道の畔を見ると、事務長と打ち合わせをしておいた通りに落とし穴位置を示す目印がすでに打たれていたので、穴位置に注意しながら街道を国境方向へ進む。1里ほど進んだ先で、事務長チームと合流できた。


「おお……こっちは道幅が広い分、3列と4列の落とし穴を互い違いに設置して進んできた。坊主の読み通りに、魔王軍は背後の警戒はほとんどしていなかった……なにせ国境から王都迄、全ての民を疎開させ、田畑をつぶし家々を破壊しておいたのだからな……向こうだってまさか背後に回り込まれるとは考えていないだろうし、こっちだってこんなことやるなんて夢にも考えていなかったさ。」


 丁度休憩時間だったようで、事務長が汗をふきふき、笑顔で話しかけてきた。なんともまあ……汗を拭くために鎧の胴を外した下は、柄物のTシャツ1枚のみ……しかもノーブラ?この世界にブラジャーがあるかどうかも俺は知らないが……はっきりくっきりと、先っちょ含めその形のいい胸が透けて見えてますけど!いいのでしょうか?目が釘付けですけど!


「うん?どうした?顔が赤いぞ……穴掘りすぎて、熱でも出たか?」


 超絶色気を振りまきながら、事務長は素知らぬ顔で俺と目を合わせて来た。男の兵士だって大勢同行しているはずなのだが、事務長の周りだけは工房の女性と連絡係の女の子だけで囲まれており、いわばここだけ空白地帯となっているため、誰も気がついていないのだろうな……。


「あっ……はあ……まあ……徹夜明けですから少し眠くて目が赤いのでしょう。」


 視線の先を決して悟られぬよう、少し大げさに目を両手でこすってやる。何せ俺の隣には、大好きなメリアンちゃんがいるのだ。彼女に俺の視線の先を勘づかれては大変だ……。


 だが……事務長のTシャツ姿は、それを見た男の視線をくぎ付けにして動けなくするという……正に究極兵器と言えよう。


「おおそうか……まあ眠いのはここに居る全員同じだ。もう少し頑張ろう。」

「そうですね……こちらもすぐに穴掘りにかかります。」


 出来れば難しい言葉を並べ立て、今後の作戦行動について議論するふりをしながら、もう少し胸を眺めていたい気持ちが強いのだが、同時にメリアンちゃんに申し訳ないという気持ちとの狭間で、本能のままに突き進もうとする自分を何とかこらえ切った……えらい……俺……。



「おいっ……穴掘りは中止だ。ちょっとこい!」

 完全に目に焼き付いてしまって股間が熱いので、気持ちを静めるために遮二無二穴を掘り続けていると、鎧を着こんだ事務長が俺を呼びつけに来た。


 以前は気づかなかったが、事務長の鎧の胸の部分は大きく前方に膨らんでいるようだ。ちらりと、すぐ隣にいるメリアンちゃんの鎧に目をやると、胸部分はそれほど膨らんではいない……うーんオーダーメイド……。


「1里先の街道脇の高い木に登らせて斥候に見張りをさせていたのだが、どうやら予想通りに補給隊がやって来たようだ。襲撃するぞ、いいか?」


 まだ昼には余裕がありそうな時間で、ほぼ予定通りと言えるか……人数が倍になったので、落とし穴掘りも随分とはかどったところだから、正に絶好のタイミングと言えた。


 すぐにハッカクさんとターレムさんを呼び、軍をまとめて襲撃体勢に入る。荷馬車を少し戻らせ1キロほど進んだ先で街道の脇の畔の下に潜み、補給部隊がやってくるのを待った。



「まだですよ……まだ……まだ……はいっ、突撃!」


 1キロ先には兵を配置しておいたので、魔王軍本体まで逃げられる心配はないため、出来るだけ引き付けてから補給部隊の大体真ん中あたりを狙って襲撃を開始した。


 魔法兵士に炎弾で大型馬車の御者を狙い撃ちさせ足を止める……やはり輸送中ずっと魔法結界を張り続けるようなことはしていないようだ。すぐに護衛兵の小鬼どもが出てきたが、こちらは竹やり兵10人と僧兵2人とボウガン兵1人ずつを1組として結界を張りながら突撃し、炎弾をぶつけてくる小鬼どもを一方的な攻撃で駆逐していく。


 やがて非戦闘員であろう御者や荷台の見張り番を先頭に、馬車を放棄してそのまま走って国境方面へ逃げ出していった。


「追わなくても結構です。生き残っている兵がいないか確認し、死骸は魔法戦士の炎で燃やしてから灰は街道脇の畔に穴掘って埋め、墓標を立ててやりましょう。」


「はぁはぁはぁ……いいいい一匹……仕留めました。かかかっ……仇を……討てました……。」


 皆に指示してからメリアンちゃん達の隊の所へ行ってみると、メリアンちゃんが撃った後のボウガンを抱え、ぶるぶると緊張気味に震えていた。前髪は乱れ、いつもは端正な顔立ちを、涙と汗でくしゃくしゃにして蹲っている。俺はゆっくりとボウガンを手から離してやり、頭を撫でて落ち着かせてあげた。


「すごいね……メリアンちゃんは……俺なんか数発は撃ったけど、一発も当たらなかったよ。」


 俺はどちらかというと、わざと体すれすれを狙って撃ち、敵が驚いて逃げるように誘導していた。小鬼たちは身長が120くらいしかなく、ボウガンで狙いをつけようとすると先が下向きになり矢が落ちてしまうので、自然と両手を下げて腰の辺りで少し上向きにボウガンを構えることになる。


 その為正確な狙いはつけにくいのではあるが、それでも体の正面に向けて撃てば、おおよその着弾点は予想がつく。至近距離でさえあれば十分に急所を射貫くことは可能だが、俺は避けていた……。


 だが……メリアンちゃんは女の子なのに、実際に敵の小鬼目がけてボウガンを発射していたのだ。確かに親の仇であり、しかも自分の国を攻めてきている敵なのだからな……これは戦争なのだ、そう俺も自分の胸に言い聞かせた。


 敵兵の死骸は小山を作って積み上げ、魔法兵によって荼毘にふし、僧兵が経を唱えて弔った。人間と小鬼では宗教が異なるだろうが、それは許していただこう。それから街道脇に広場を見つけ穴を掘って遺骨を埋め、適当な大きさの岩を拾ってきて墓石代わりに置いて、馬車から板を取り出し魔王軍兵士の墓と書いてもらい立てておいた。


 敵兵とはいえ……魔王軍とはいえ……小鬼とはいえ……知的な生き物なのだ。弔うことに異論は出なかったが、ここに来て初めて生き物同士の殺し合いであることを、生々しく実感した。


「では、まずは荷馬車の中を確認し、隊列をまとめて持ち帰れそうなら持ち帰りましょう。」


 いよいよ戦利品の確認だ。おおよそ5百は数えてから突撃したので、後方の馬車には引き返して逃げられてしまったが、それでも5百台近くは残っただろう。これ以上あっても持ち帰れそうもないので十分だ。


「この荷台は……米だな……米俵がぎっしり入っている。」

「こっちは小麦粉だ……。」

「こっちはリンゴやミカンなど……果物が積んであるぞ。」

「こっちはジャガイモや人参に玉ねぎなど、保存がききそうな野菜ばかりだ……。」


 次々と荷台の中身が分かって来た。魔王軍兵士も人間と同じものを食べているようで少しほっとした……。


「馬車は全て持ち帰りましょう。魔法兵の方たちに馬車の御者をお願いします。じゃあもう少し落とし穴を掘りながら進んで……迂回街道への分岐路が来たらそちらに移って、今度はそっちに落とし穴を掘りながら城まで戻りましょう。」


 穴掘りながらでも、帰りはかなり早く進んだ。なんせ大量の物資……なんと550台の大型荷馬車と大量の食料を手に入れることが出来た。百万の魔王軍にとっては、半日分か1日分くらいであろう量も、1万と少しのこちらにとっては、2ヶ月分以上の食料という事になる。しかもどれも保存がききそうなものばかりだ。


 大量の食料を調達できたのだから、すぐさまここで竈を設営してまずは飢えを満たそうという意見も多かったが、いかんせん隠密行動……携帯食以外火を使う竈などはもってのほかだし、城には多くの腹をすかせた兵がいるのだ。早期帰還が優先と、事務長にお願いして不満がる兵らをなだめていただき、そのまま出発した。


 気持ちも軽く作業も手早く、馬車を連結し御者1人で2,3台の馬車を操ったが、長い隊列で分岐もないため問題なく進み、何より全員歩かずに馬車に乗って交代しながら穴掘りと橋を落とす作業を続けられたので、体も随分と楽であった。徹夜明けではあったが、魔王軍との戦闘で興奮しているのか、ちっとも眠くはならず、誰もが直接戦闘の興奮を胸に、城への凱旋帰還を心待ちにしていた。



「なんだ……もう日はとっくに落ちているのに、まだ戦闘は続いているのか?」


 徹夜明け2日目も夜通し移動し、3日目も早朝から穴掘りと橋を落としながら迂回街道から城門へう回路を進んで来たら、すでに夜も更けていた。城の方向を見ると、遠くからでも炎弾の弾幕や投石の落下音が確認できた。どうやら城門付近で激しい戦闘が続いている様子だ。


「まずいですねえ……恐らく城壁すれすれには投石できないことに気がついたのでしょう。投石器の機構上、完全な死角ですからね……兵士を城壁すれすれに配置して、そこから魔法攻撃を仕掛けていると思われます。


 城壁の上から柄杓で熱湯を撒いても、下に落ちる間に冷めてしまうので、やるなら鍋ごと持って一気に撒かなければ効果ないでしょうが、気づいていないでしょう。移動式の投石器を調整して、何とか城壁すれすれに飛ばしているのでしょうが、このままではじり貧です。魔法結界が破られるのも、時間の問題かと……。」


 遠間から見た戦況を、要約して告げる。ううむ……折角戦利品の食料を持ち帰ったというのに……肝心の城が風前の灯火では……これだったらじっと城の守りを固めていたほうが良かったか?


「ううむ……どうする?折角兵糧を奪ってきても、城が落とされてしまってはこっちの負けだぞ。」


 はてさて……どうするといわれても……なにも浮かばないので、頭を抱えて蹲る。いや待て……よく考えてみろ、俺や事務長が城に残っていたとして何が出来た?投石器の死角を突かれ、ボウガンは下方向へは撃てないから城壁すれすれはボウガンにとっても死角なのだ。


 熱湯を鍋ごと落とす?鍋があるうちはいいが、鍋が尽きたらどうした?敵は百万の軍勢だぞ!恐らく手も足も出なかったのではないのか?遮二無二打って出たとしても……ここはそう……今この現状を好機ととらえよう。ここに俺たちがいることは、きっといい巡り合わせなのだ。


「ああっ……そっそうですよ……俺たちが中にいたところで、この戦い方では手も足も出なかった筈です。俺たちが城の外に出ていたのは、ある意味ラッキーと言えますね。城門前で待ち構えていられては、城から撃って出る時に、結界を唱える前に集中攻撃されてしまいますからね。


 そこそこの人数がいるので、我々で魔王軍の側面を突きましょう。我々だけの人数では心許ないのですが、うまく敵を混乱させることが出来れば、恐らくその隙をついて兵士長さんが城から撃って出てくれるはずです。そうなれば魔王軍に大打撃を与えて、追い返すことが出来るでしょう。」


 何でもいい風に考えよう……俺が間違ってこの世界に召喚されてしまったことも含めて……そう思えるようになってきた今日この頃……だ……ポジティブ思考であれば、名案も浮かぶ……。


「おおそうか……うまくすれば、ここで戦況が大きく変わるな?」


「はい、そうです。ここで一気に魔王軍をやっつけてしまいましょう。


 いいですか……基本的な戦い方は、先日輸送隊を襲った時と変わりません。ですが今回は、魔法兵5人の中央に僧兵とボウガン兵を一人ずつ置きます。丁度城壁が左側にありますから城壁に沿って進軍することにして、さらに右側に僧兵1人と魔法兵5列を配置し、竹槍で側面攻撃に備えます。


 先頭の兵士が敵を突いたりボウガンを発射したらすぐに次列と交代し、最後列に戻ったボウガン兵は弓を引いて、槍兵は竹槍の先端を確認して準備します。移動は素早くなるべくスムーズに行ってください、隊列が乱れると、そこを付け込まれますからね。城壁側と列の中央部を戻って行く際の移動スペースに使います。」


 地面に丸と三角と四角で、魔法兵と僧兵及びボウガン兵を書き分けて、隊列の概略を指示する。


「それで……折角奪った兵糧を奪い返されては困るので、すいませんが事務長さん、魔法兵百人と僧兵20人にボウガン10人で、兵糧の警備を行っていただけませんか?」


「おお分った……魔王軍に見つかったなら、間違いなく奪還しようとするだろうからな……任せてくれ。」


 折角勝ち取った兵糧も、奪い返されてなるものかと事務長にお願いしておく。仮に城まで達することが出来ず敗走となったにしても、これだけ食料があれば体勢を立て直すことも出来なくはないはずだ。


「では……質問などありませんか?丸2昼夜働いて戦って、心底疲れ切っているでしょうが、ここで負けてしまったら全ておしまいです。最後の力を振り絞ってでも戦って勝利しましょう。」


『おーっ!』


 敵に知られると困るから余り大声を出せないが、それでも皆魂の叫び声をあげて気合を入れたに違いない。

 隊列の先頭に立って、城門へと城壁沿いに進んでいく。すぐ後ろはメリアンちゃんなので、ここでいい格好を見せておく絶好のチャンスだ。



「では、突撃します!魔法兵士の方は、炎弾をお願いします!着弾を確認したらすぐに僧兵の方は魔法結界を張ってください。以後は先ほどの作戦通りに、そのまま竹槍を構えて前進していきます。」


 月明かりだけの夜道は、城壁の影になり俺たちの軍には有利に働いた。敵軍は城門ぎりぎりにまで列をなし、一斉に炎弾を発射し続けていた。その幅は城壁沿いに片側5百mはあるだろう……結構な大軍が密集しているようだ……城門部分まで、先はかなり長そうだ。


 結界の濃い緑色が薄まっては何とか回復するのだが、段々と回復が遅くなってきているような気がした。意を決して魔王軍の側面目がけて突撃を敢行する。


 第一波の攻撃で、およそ数十の魔王軍兵士が火だるまになってのたうちまわった。密度の濃い攻撃を仕掛けるためか、どうせ投石などの物理攻撃には魔法結界は無効と思っているのか、敵兵は魔法兵だけで結界担当はいない様子だ。次々とこちら側の炎弾の餌食になって行く。


 それでもこちらの軍の存在に気付くと、すぐに炎弾を放ってきたが、こちらは第一波の攻撃終了とともにあらかじめ呪文を唱え始めていた僧兵が、既に結界を張り終えている。


 こちらも炎弾攻撃は出来なくなったが、そのまま構わず突進し、俺がボウガンで見事先頭兵士の胸を貫いた後、ひるんだ敵兵を魔法兵士が竹槍で突いた。


 すぐさま後列と交代し、城壁沿いに最後尾へと戻る。そこで一旦しゃがみ込んで、ボウガンの弦を張ってから最後尾の列へと加わっていく。


「どうしたメリアンちゃん?弦が固いのかい?疲れちゃったかなあ……。」


「はい……もうへとへとで……腰を落として立ち上がろうとしても足に力が……。走ってここまで戻ってくるのもやっとで……すみません……。」


「大丈夫だよ、貸して。」


 俺の後ろにメリアンちゃんが戻ってきたが、フックをひっかけてボウガンの弦を張ろうとしてもよろけて、なかなか立ち上がれそうもない。すぐにボウガンを受け取り、俺が代わりに弦を張ってあげた。


 俺は前世というか、この世界へ召喚される以前から運動部に所属はしていなかったが、それでも毎日朝晩腕立て腹筋スクワットの訓練を欠かさず続けてきたから、まだまだ余力はある。健康のため……痩せていたけど病気もせずに体だけは人より丈夫だったからな……。


 メリアンちゃんの細い小さな体で重いステンレス製の鎧をつけ、重労働の穴掘りだって男性兵士に負けないくらい頑張って、よくもこれまで戦闘を続けてきたものだ……凄い精神力だと思う。


「頑張って……もうすぐ終わるよ……。」

「はいっ……頑張ります!」


 メリアンちゃんが唇を噛みながら、それでも笑顔を見せ返事をする。


 その後も連絡係の女の子たちは疲れ気味なので、俺がボウガンを受け取り、代わりに弦を引いてやることにした。鎧を装備しない時は何とか2人組で弦を引けていたのだが、やはり体力的に限界なのだろう。もう、撃ち終わっても後列には戻らず、ずっと最前線で撃ち終わったボウガンの弦を引き続けた。



 攻撃が終わったらすぐ前列と交代し、襲い掛かってくる小鬼たち目がけてボウガンで威嚇し、結界ぎりぎりまで詰め寄ってこられたら竹槍で突き殺す……この流れ作業的な攻撃は半歩ずつ程度しか進めなかったが、それでも効果を発揮し、城壁沿いにたむろっていた魔王軍を次々に駆逐しながら隊列は進軍を続けた。


 側面は竹槍隊が5列守っているので魔王軍は城壁を離れ後退していくしかなく、魔王軍兵士を城壁から引きはがしながら、徐々に俺たちの隊列は城門までの距離を詰めて行った。


 敵が城壁を離れるとすぐさま城壁の上から指示がとび、投石器の攻撃が的確に当たった。魔王軍は順にきつい攻撃を幾重にも浴び、段々と散り散りに逃げて行くしかなない様相に変わって行った。



『わあーっ!わあっー!』


 いよいよ先頭部分が城門へ達するというところで城門が開き、城から兵士が打って出てきた。薙刀を持って鎧兜に身を包んだ女性兵と、甲冑を着こんで竹槍を持った魔法兵士と僧服姿の僧兵だ。


 兵士長は城に残った魔法兵士にも竹槍を持たせていたようだ。竹槍よりも攻撃力の高い薙刀の登場は大きく、城門から一気に放射状に敵兵を駆逐していく。こちらも負けずにボウガンの弦を引き、城壁沿いに陣取っている敵兵めがけて突進していった。


 ボウガンで敵兵を撃ち、次いで振り返ってメリアンちゃん達のボウガンの弦を引いてやる。彼女たちはその後すぐに散って行っては、撃ち終わってまた戻ってくる。そのうちに薙刀兵の女性兵士が加わり、一部兵士のベルトを借りて代わりに弦を引いてやるシステムが構築されて行った。


 連絡係が主流のボウガン部隊と異なり、薙刀兵は工房の女性作業員たちが主力で組んでいる。日頃から工房で肉体労働をしている彼女たちなら体もがっしりとしていて力も強く、薙刀を振り回すのに向いているはずだし、ボウガンの弦も問題なく引けた。


 胸を貫かれた兵はそれでも死に絶えることはなく、素手で立ち向かってくる場合があるが、こちらは鎧を着こんでいるので、そのまま殴り倒すことが出来た。小鬼は人間よりも腕力が倍は強いと聞いたが、瀕死の上にこちらは硬い鎧を着こんでいるので、断然有利だ。いずれは俺用の刀が来るはずで、その時が待ち遠しい。



 城からの増兵が功を奏し流れは一気にこちら側へ傾いた。魔王軍兵士は敗走に敗走を重ね、注意して避けていたであろう落とし穴にもはまり、大打撃を受けたようだ。落城間近だったのが、一気に大勝利へと様変わったのだ。


「やったぁー!」「やったぞーっ!」「たすかったぁー!」

 魔王軍兵士たちの姿が完全に消え、誰もがこの勝利を喜び、歓喜の声を上げた。


「じゃあ、敵兵の死体はまとめて荼毘にふして、空き地に穴を掘って葬ってあげましょう。」


 敵兵の死体の始末は兵士長たちに頼んでから、急いで自分たちの兵をまとめ事務長らの方へ行ってみる。何せ逃げ散った魔王軍兵士の数が多すぎた。多少ならずとも事務長らに危険が及んでいるかもしれない。



「おお、聞こえて来た歓声からすると、大勝利と言ったところだな……こっちにもかなりの数の兵が流れてきたが、所詮は手負い兵……なんとか駆逐できた。怪我人はそこそこ出たが、犠牲者は出なかったぞ。」


 事務長たちの兵糧防衛チームは、既に敵兵の死体の処理を終えたところだった。灰を埋めたところに目印の墓標の岩を置き卒塔婆代わりの立て札を立て、手を合わせて冥福を祈った。相当な数の兵が流れ込んできたはずなのに……僅かな手勢だけでよく守り切ってくれたものだ……流石……。


「じゃあ、凱旋帰城と言ったところだな……。」

 魔法兵士に御者をお願いして、兵糧を積んだ荷馬車隊を出発させる。誰もが皆大勝利の喜びに、満ち満ちていた。


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