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54. 世界の崩壊

 


「シカバあ!!」


 肉塊が動きを止め、その体は中庭へと落ちて行った。肉塊が叩きつけられ、地面が揺れる。


 急いで庭に降り立つと肉塊の側にはメモリーの姿があった。


「メモリー……」


 メモリーが触れると、肉塊が姿を消した。


「これで終わりです」

「終わり?」

「ムスリクも既に戻しています。化物が消え、嫉妬に取り憑かれた王も消えました。これでこのこの世界に平穏が訪れます。よかったですね」

「シカバは……城の人達はどうしたんだ」

「消しました」

「彼らもムスリクと同じように戻せるんじゃないのか?」

「あれは何百人もの人間の集合体です。そんなに沢山の人の編集作業を一気にすれば、世界が負荷に耐えられずに壊れます。消去してしまうのが一番負荷が掛からない最善手なのです」

「そんな……」

「何故悲しそうな顔をするのです? 貴女も大事な恋人も生きているのだから、これが貴女のハッピーエンドでしょう?」


 確かに俺は美世子の為にこの世界に戻って来た。俺の目的は美世子と一緒にあること。だけど


「それだけが幸せじゃねえんだよ。俺、この世界に大事な人が沢山いるんだ。その人達にも幸せになって欲しいんだよ」

「欲張りですね」


 ため息を吐いてから彼女は俺を見つめた。


「では、選んで下さい。数百人の命の編集をし、世界が崩壊するか、このままの世界か」

「……それしかないのかよ」

「ええ。たったの数百人の命の犠牲で世界が平穏を取り戻せるのです。選ぶまでもないでしょう?」


 そんなのどちらも選べるわけがない。


「世界を崩壊させろ」


 気がつくと美世子が俺の肩を抱いて、側に立っていた。


「美世子?」

「そして、世界の崩壊も何もかも闇の王の仕業だと編集しろ。そうすれば闇の王を倒すことで世界の崩壊は止まる。君ならそれくらい出来るだろう?」

「ええ。では、全ては貴方の責任と言うことでよろしいですか?」

「ああ」

「それでは、そのように」


 二人は頷き合う。


「ちょっと待てよ。勝手に話を進めんな!」

「こうちゃん、来てくれて嬉しかった。それだけで充分私は幸せ」

「はあ? 何言ってんだよ」


 正直二人が何を言っているのか理解出来ていない。でも、絶対に良くねえことだってのはわかる。


「ありがとう、こうちゃん。私のことを愛してくれて。ずっと一人だった私のこと、見つけてくれて。こうちゃんと一緒に過ごした日々、忘れない。一緒に暮らして、喧嘩して笑い合ったこと、忘れないよ」

「そんな最期の別れみたいなこと言うなよ……」

「ばいばい。私のことは、忘れてね」


 二人の姿が靄になって消えた。



 ***



「え?」


 目の前に沢山の人々が倒れている。


「あ、え……」

「たす、助けて……女神様……」


 女神? ああ、そうだ。俺は女神なんだ。だから、この人達を助けなければいけない。

 みんな俺の背中から生えている羽を見て俺のことを女神だと口を揃えて言う。


「苦しい……」


 倒れている人々に駆け寄って白魔法で癒していく。


「もう大丈夫ですよ」

「あ、あああ……どうしてこんなことに……」

「何が……あったんだ」

「影が、突然城に……」

「闇の、王のせいだ……」

「喋らないで。もう大丈夫ですから」


 そう、これはすべて闇の王の仕業だ。闇の王が世界の崩壊を招いたのだ。世界を恐怖と混沌に導こうとする恐ろしい男。

 闇の王の襲撃にあい、城の人々、この国の民が傷付けられた。許せない。


「どうしてこんな酷いことを……」


 涙が溢れて止まらなかった。


「おお、女神様が泣いていらっしゃる」

「泣かないで、お姉ちゃん」


 私(・)の服の裾を幼い少女が握った。


「ごめんね。大丈夫だよ」


 口ではそう言うが涙は止まらない。悲しい、悲しい。何が? 人々が傷つけられていることが。


 本当に?


 そう、だって私は女神だから。






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