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完璧すぎて断罪された悪役令嬢、間違えることにしたら人が助かりました 〜完璧だった私が、間違いを選んだ理由〜  作者: はねださら


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第31話 広がる例外

 変化は、静かに広がっていた。


 昨日の出来事。


 ルカの回復。


 それは、小さな出来事のはずだった。


 だが。


「……あの方法で、もう一度やってくれ」


 声が上がる。


 医療の場。


 別の患者の家族。


 必死な目で、こちらを見ている。


「……」


 私は、すぐには答えなかった。


 視線を受け止める。


 その中にあるものを、確認する。


 期待。


 不安。


 そして。


 ――選択を、委ねる覚悟。


「……」


 それが。


 重い。


 これまでとは、違う形で。


「……ダメだ」


 低い声。


 ダリウスだった。


「全員に同じことはできない」


 はっきりと言う。


 迷いなく。


「……でも」


「できない」


 遮る。


 完全に。


「状態が違う。条件も違う。あれは――」


 一瞬だけ、言葉を止める。


「例外だ」


 ――例外。


 その言葉が、空気に落ちる。


「……」


 私は、小さく息を吐いた。


 その通りだ。


 間違っていない。


 だが。


「……」


 背後で、気配が動く。


 エリゼだ。


 無言で、こちらを見ている。


 判断を待っている。


 試すように。


「……」


 私は、ゆっくりと目を閉じた。


 考える。


 ほんの一瞬だけ。


 そして。


 開く。


「……やるわ」


 静かに言った。


 はっきりと。


 迷いなく。


 ――空気が、変わる。


「……リリアーナ」


 アメリアの声。


 少しだけ、低い。


「分かってる?」


「ええ」


 私は頷く。


「全部はできない」


 それは、事実だ。


「……でも」


 患者を見る。


 その、弱い呼吸。


「ここは」


 小さく言う。


「選ぶ場所よ」


 ――。


 沈黙。


 そして。


「……非合理だ」


 エリゼの声。


 だが。


 前とは違う。


 断定ではない。


 評価だ。


「ええ」


 私は頷く。


「そうね」


 それは、否定しない。


 しないと決めた。


「……」


 エリゼは、それ以上何も言わなかった。


 ただ。


 見ている。


 その目は。


 完全な否定ではない。


 ――観察。


「……」


 私は、動き出す。


 昨日と同じように。


 だが。


 今は違う。


 周囲の視線がある。


 期待がある。


 そして。


 ――責任がある。


「……」


 水を使う。


 量を調整する。


 反応を見る。


 少しずつ。


 慎重に。


「……」


 患者の呼吸が、わずかに変わる。


 ほんの少し。


 だが。


 確かに。


「……」


 周囲が、息を呑む。


 静かに。


 だが。


 はっきりと。


「……動いた」


 誰かが、呟く。


 それだけで。


 十分だった。


「……」


 私は、何も言わない。


 ただ。


 続ける。


 同じように。


 変化を見ながら。


 調整する。


 ――やがて。


 呼吸が、少し安定する。


 完全ではない。


 だが。


 明らかに。


 違う。


「……」


 沈黙。


 そして。


「……助かるのか?」


 誰かが、震える声で言う。


「……分からないわ」


 私は答える。


 正直に。


「でも」


 一拍。


「今よりは、可能性がある」


 ――。


 その言葉に。


 誰も、否定しなかった。


 できなかった。


「……」


 私は、ゆっくりと立ち上がる。


 そして。


 周囲を見る。


 視線が、集まっている。


 昨日とは違う。


 明確な。


 “期待”。


「……」


 それが。


 重い。


 だが。


 同時に。


 理解する。


 これは。


 もう。


 個人の問題ではない。


「……広がってるね」


 アメリアが、小さく言う。


 隣で。


「ええ」


 私は頷く。


「もう、一つじゃない」


 ルカだけではない。


 もう。


 “例外”ではない。


「……」


 私は、ゆっくりと息を吐く。


 そして。


 視線を上げる。


 エリゼを見る。


「……どうするの?」


 静かに問う。


 今度は。


 私から。


 エリゼは、少しだけ沈黙した。


 そして。


「……管理を維持する」


 そう言った。


 はっきりと。


「例外は、限定的に許容」


 ――。


 それは。


 譲歩だった。


 だが。


 同時に。


 線引きでもある。


「……」


 私は、何も言わなかった。


 それでいい。


 今は。


 まだ。


「……」


 周囲の空気が、少しずつ変わっていく。


 統制された動きの中に。


 小さな揺らぎが混じる。


 迷い。


 判断。


 選択。


「……」


 それは。


 まだ不安定だ。


 だが。


 確実に。


 広がっている。


「……」


 私は、静かに思う。


 壊れ始めている。


 あの。


 “均された世界”が。


 ほんの少しずつ。


 確実に。


 ――そして。


 その先にあるものは。


 まだ。


 誰にも分からない。

第31話まで読んでいただきありがとうございます。


ここで「例外」が個人から集団へと広がり始めました。

それに伴い、主人公の立場も大きく変わっています。


ただしこれはまだ安定していません。

むしろここから一気に崩れます。


次話では、この状態が一気に破綻します。

物語の山場に入ります。


ここから一気に加速しますので、ぜひブックマークして追ってください。

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