19話~ハヒコとの出会い~
私は目の前から消えたマシンを見送ってから、持ち出していた緊急脱出用の飛行具で、まずは周囲に水辺がないか探索する事にした。
この飛行具は、ある程度鳥の様には飛べたけれど、時速はあまり出なくて、だから、ここから魏の国に飛ぶには、少し準備と対策が必要だと思った。
食事は何とかなる量がまだあったけれど、水だけはもうあまり残っていなかった。
まずは、水を探さないと。
すると、少し山みたいな場所があって、水が湧いている場所を偶然見つけた。あぁこれで暫くは何とかなる。
私はそこへ着地をすると、持っていたボトルにそれを汲んで一口飲んでみた。
特に問題もなさそうだ。。
私は水の成分を調べる為に、荷物を置いている場所へ、早速戻る事にした。
すると、右肩にいきなり何かが当たる感触を感じた。
私は恐る恐る、その右肩の方向へ顔を向けて、当たったそれを見てみた。
太陽の光をギラギラと反射させる、そんな矛先を蓄えた、重厚な槍がそこにあった。
「何をしている」
背後から男性の声が聞こえた。
私が動けず立ち尽くしていると、槍を私に向けたまま、男性が私の前へまわりこんできた。
その男性は、この時代の男性のファッションなのか、白い服装に身を包み装飾品を首にかけ、髪の毛も両横でまとめ、顔には刺青なのか模様が施されていた。
この時代の人間と接触してしまった。
未来を変えてしまうかもしれない。
こんな状況下でも、まずはそれが脳裏によぎった自分が、今さらにおかしくもあったけれど
私はとりあえず、そこから逃げる手段を模索した。
「どこから来た。」
男性はゆっくり、私に問いかけてきた。
「あなたが、見たことのない所から。」
そう言うのが精一杯でいると
ぐうううう
あろうことか、私のお腹が空腹でなった。
さすがに恥ずかしくなって、顔が熱くなっていくのがわかった。
「ハハハハハハハハ」
すると、男性が向けていた槍を地面に下ろしながら、豪快に笑いだした。
ひとしきり笑ったあと、腰にくくりつけた袋から握り飯を取り出し、私に差し出して来た。
「さあ」
男性に笑顔で握り飯を差し出された私はそれを受け取ると、恐る恐る口にした。それは、今まで食べたどんな食事よりも美味しかった。
思えば、いつも機械に囲まれて、毎日が同じ事の繰り返し、
こんなに外にいる事も全く無く、お腹がすく感覚も、思えばその時に初めて知った。
気づけば私はそれを平らげていて、ボトルにいれた水も一気に飲み干していた。
男性はそれを笑顔で見守りながら、地面に下ろしていた槍をまた手にすると
「まだ足りない顔をしている。私の家にまだ握り飯があります。いらっしゃい。」
そして、すたすたと歩きだした。
「あ、あの!」
私は、その歩きはじめた背中に声をかけた。
すると男性は振り返り、こう言った。
「大丈夫捕らえたりはしない。私はハヒコ。あなたの名は?」
それが、ハヒコとの出会いだった。




