ホビーとの出会い
しかし、ドアは開かれなかった―――。
ドールと太郎さんがホビーという青年に会うために廃墟の街のとある一軒家をノックすること早5回。
すでに、この家も廃墟なのでは?という気配がスーツ姿の二人の間に流れていた。
熱い日差しに蝉がうるさい夏の日のことである。
「・・・・・・なあ、ここであってる?」
「Hmm・・・・・・」
太郎さんの言葉にドールは少し笑みを混じらせながら濁すように返答をした。
「部長の話じゃホビーに外出は無いだろうし・・・・・・」
太郎さんはそう言うとハンカチで汗を拭く。それを横目に何気なくドールは前に出て、その鉄のドアノブをカチッと回した。すると、開いた。
開いた?
「開いたよ、太郎さん」
「ん? ああ。ホントダ」
太郎さんの言い方は抑揚の無いカラスのようである。
「Oh・・・・・・こりゃ、やっぱり・・・・・・」
自分の開けたドアの先にドールが見たモノは、散らかった家具とゴミ袋であった。と、どういうわけかドールはそのままの足で中へと入っていく。
「おいおいおい」
太郎さんも一足遅れてそう言いながら入ってしまった。
そういうことで、二人は何となくでホビー宅へと潜入したのである。
まあ、二人ともここは廃墟と思って居たのだ――――――
「これは・・・・・・埃がね・・・・・・なんとも」
ドールが言いながら足下のゴミを器用に避けながら進んでいく。
「俺はこのハウスダストってのがダメなんだ。蜘蛛もヘビも尖った先も全く問題ないんだが、この人工的なダストというものはどうも・・・・・・」
途中からもごもごと言っているなと顔を上げれば、ドールは袖で口を塞いで顔をしかめている。
はて、ログハウス建設時の木屑は問題なかったのかとこの時太郎さんは思ったがそんなことはあえて言わなくても良いことだろう。
優しさでもって太郎さんは「ああ」とだけ答えたのだ。
ところが、この「ああ」と言ったところ。
その同時刻に「あ」と言ったドールが居た。・・・・・・ん?
太郎さんは、そう、ん? と思う。見てみた。するとドール、立ち止まっている。立ち止まって前方を見つめていたのだ。
ここで彼は見ていた。
背景に埃まみれの人形と家族写真があって、その手前に立ち止まるドール。そのドールが見たのは彼の姿であった。
彼。
これが二人にとって“ホビー”との初めての出会いとなる。
廃墟のゴミ屋敷と思っていたその一軒家には、まるで風船のようにパンパンに膨らんでゴミ袋の中でジタバタしている、そんな青年がいたのであった。
――――――太郎さんがゾンビになる5年前の話




