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突然の襲撃

 村には遊具が少ない。

 遊びの中心は鬼ごっこが多いのだが、それだけではどうしても飽きがきてしまうようだ。

 そんな中、最近アケレイで密かに人気の遊びがこれ、人間メリーゴーラウンド。


「そんちょー! つぎ僕もー!」「わたしも」「わたしもー」


 なんのことはない。手を繋いでグルグルまわし、そのまま遠心力で浮かびあげるだけ。

 単純なようでいてクセになってしまった子が何人もいて、リピーター率が非常に高い……のだが


「ちょ、ちょっと休もう。な?」


 単純な動き故に体力の消耗がバカにならない。逆回転を混ぜたりして対策をとってみるも、やはり連続した回転運動は脳に響く。



 地べたに腰を下ろし、一休憩すると。ちょうどいい風が吹いてきた。

 子供たちのはしゃぐ声に混じってバタバタと言う音がする。そしてその音は徐々に近づいてきていた。


 ハッとして飛び起きる。この音は聞いた事がある。


「みんな! 急いで家の中に入るんだ! リア、大人の人を呼んでからそのまま家に入って!」


 まずい。今の俺は丸腰だ。幼子を数人一斉に抱きかかえて振り返ると、やつらが迫っていた。


 シザーフライ。両手に鋭いカマを持った巨大なトンボのような魔物。それが3匹。

 行動範囲の広さが特徴で。名前の由来となっている両手のカマをハサミのように交差させる攻撃は、虫型の魔物とは思えないほど強力。

 時々村の人間や家畜などを襲って肉団子にして持ち帰る修正があり、山間部では特に恐れられている。


 急いで子供たちを走らせるが、全員家の中に避難する前に追い付かれてしまった。

 俺が咄嗟に子供たちを背中越しに守ろうとしゃがみ込んだ次の瞬間、大男の影が割り込んだ。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


 ガキィン!


 現れたのは哨戒任務に当たっていたゴードンだ。

 ゴードンが俺に振り下ろされたシザーフライのカマを盾で弾き飛ばす。

 重たいハルバードを片手で振り回し、反撃に出るが。シザーフライは上に回避し、かすらせもしない。

 やつらはホバリングや急発進を得意としており、変幻自在の機動力は地上の生物にとって大きな脅威だ。


「ぐぬぁぁぁ!」

 

 ゴードンはシザーフライが襲い掛かってきたところをカウンターで仕留めようとする。

 だが前方に陣取ったシザーフライは途中まで突っ込んだところで急停止する。フェイントだ。

 その隙に後ろのシザーフライがゴードンを切りつける。持前の頑丈さで致命傷にはなっていないが、このままではやられてしまう。


「村長!」


 アレンとコニーがこっちに走ってくる。こいつらは別の仕事に就かせていたので丸腰だ。

 

「この子たちを頼む! ヘルメスは!?」


「今こっちに向かっています!」


 子供たちを預けて辺りを見回す。


「ゴードン! ダイン達が来るまで無理をするな!」


 俺の声を聞いたゴードンが盾を上に掲げ、姿勢を低くして防御に徹する。と、そこへダイン達が走ってきた。


「すいやせん、遅れやしたぁっ!」 「配置完了です」


 ベインとダインが弓を構える。


「構えろ。つがえ……ひけぇ!」


 少しでも命中率をあげるため、同時発射の合図を叫ぶ。


「放てぇ!」


 放たれた矢の一発がシザーフライの羽に命中する。3匹のうち、命中した1匹がバランスを崩し地面に命中する。


「てぇりゃぁぁぁぁ!!」


 と、そこへ細剣を持ったピエールが飛び込んできてシザーフライに突き刺してとどめを刺す。

 こいつも防具を装備していないが、急いで剣だけひったくって走ってきたのだろう。


 シザーフライ達は飛び道具を持ったダインとベインを一番の脅威ととったのか、標的をゴードンから変えて猛然とダイン達に襲いかかった。

 だがその後ろには既にヘルメスが駆けつけている。


「煙幕!!」


 ヘルメスが無詠唱で視界を奪う黒の霧を発生させる。


「走れ! 効果の外まで出るんだ!」


 突然暗闇に突っ込んでしまったシザーフライ達は混乱しているはず。

 その隙にゴードン達と合流させて陣形を立て直す、はずだった。

 

 だが、霧の中から出てきたのはヘルメスだけ。


「無理に暗闇の中で戦うな! こっちにこい!」


 だが呼びかけに応える様子はない。それどころか妙に静か過ぎる。


「どうし、いや……え?……」


 不審に思った俺はゴードンとピエールを前衛に出し、ヘルメスの手を握ってマナに交代してもらう。


 マナがホーリーライトの魔法を唱えると黒い霧が晴れていき……

 地面に伏してピクピクと痙攣する2匹のシザーフライ。そして。

 同じく白目を向いて痙攣するダインとベインの姿があった……

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