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閑話 とある村での出来事

一旦本編から外れてサイドストーリー。時間はちょっと未来のお話になります。

(3人称視点)

 ここはトレイラン南方にある、少し街道から外れた場所にある寂れた村。

 訪れる者もまばらなこの村に、突如として喧騒が走った。


「村長! 大変です!」


「なんじゃ。慌てて」


 村長の自宅に村の若い男が駆け込んでくる。

 髪も髭も真っ白な、この村の村長が怪訝な顔をする。


「そ、それが。ニワトリみたいな頭をした男と、山みたいな大男が表れて……メイを人質にとって、代表者を出せと言ってきています!」


「なんじゃと!?」


 ついにやってきたのか。この時が。村長の脳裏に、この間行商人から買った呪いの絵画の事が浮かぶ。

 果たして本当に効果はあるのだろうか。と、言うか正直触りたくはない……

 だが、今使わずして何のために購入したのか。村長はゴクリと唾を飲み込んで物置に走った……



「おうおうおう。いつまで待たせんだこのボケジジイが! 俺達を誰だと思ってんだぁ!?」


 村長が駆けつけると、村娘のメイが人相の悪い男に首に腕を回され、ナイフを突きつけられていた。

 なんと形容すればいいのだろう。額からうなじへ頭の真ん中だけがツンツンにたって、両側を剃ったその赤毛。

 確かにニワトリのようでもある。後ろの大男を含め、こいつらで間違いないだろう。と、村長は思った。



「言っとくがこいつを怒らせたらタダじゃおかねぇからなぁ! この、オーダーの巨体を見てみろ! こいつは北の戦線でアムルゼンの魔導士を20人もぶっ殺してしまったんだぜぇ!」


「に、にいちゃん。オデ、そんなに殺してない……」


「うるせぇ! おめぇは黙って兄ちゃんに任せてろっつったろうが!」


 後ろの大男が抗議すると、ニワトリ男は唾をとばしてわめきちらかした。 


「おー、おー。言っとくがお前ら。俺だっていつまでこいつを抑えてられるかわかんねぇからなぁ。さっさと金目のもんありったけ持ってこいや! どうなっても知らねぇぞ! オーダーがキレちまったらよぉ!!」


 人質にされた村娘の首に突き付けられたナイフが、ググっと押し付けられる。血が一滴たれて、村娘が息を呑む。

 やるしかない……意を決して村長は口を開いた。



「お、お待ちくだされ。この村はトニー王国のアケレイ村に住むと言う、恐ろしい魔女様に忠誠を誓っているのです」


「あぁ!? なにいってんだおめぇ!? いきなり関係ねぇ事話すんじゃねぇ!!」


 年老いた村長が突拍子のない事を話し出した事で、ニワトリ男が激高して威嚇する。だが年老いた村長は怯まずに続けた。


「関係のない事ではありません。今この村の有り金をあなた様にお渡しすれば、魔女様に対する上納金が払えなくなります。そうすれば私達はおしまいです」


「そ、それが俺達に何の関係が……」


 村長の態度に、ニワトリ男は戸惑っていた。この年老いた何の力もなさそうな村長が、自分達の事を全く恐れていなかったからだ。

 その眼差しはまるで、トラを前にして火山の噴火に慄くような、異様な恐怖を示していた。



「私達。と言うのにあなた様がたも含まれております。 ……呪われますよ。もしあなた達のせいで魔女様への上納金が滞れば……」


「そ、そんなハッタリに俺達が……」


 ニワトリ男は強気に出ようとするが、知らず知らずのうちに声がかすれてしまう。

 妙な違和感を感じて。ニワトリ男は自分の視線が村長ではなく、脇に抱えた妙な包みに吸い寄せられている事に気が付いた。


「……ハッタリではありません……」


 村長が顔を引きつらせ。少しでもそれから遠ざこうと、顔を背けながら布を外す。

 

 中からは恐ろしい化け物が描かれた絵画が出てきた。

 見る者を不安にさせる名状し難い輪郭。裂けた口から生えた捻じ曲がった牙。

 そしてあまりにも常軌を逸した瞳。


 ニワトリ男は直感する。間違いない。これを描いた者は頭がおかしい。


 村長がブルブルと手を震わせながら口を開く。


「魔女様は実在します。およそ正気の者が描こうとして描ける絵ではない事はわかるでしょう? 悪い事は言いません。この村に関わらない方が身のためです……」


 そう言って村長は絵の前に手をかざす。


「うおぉっ!?」


 すると、絵の前の空間が歪んだのだ。それはまるで村長の手に、描かれた化け物が喰らいつこうとしているかのようであった。


「わかりますか? 魔女様は見ておいでなのです。私達奴隷が逃げ出さないように……」


 村長の顔はとても演技とは思えない恐怖に満ちたものだった。

 


「に、にいちゃん。オデ、こわい……」


 大男が怯えた目でニワトリ男の方を見ると、ニワトリ男は地団駄を踏んで


「ち、ちくしょう! おぼえてろよ!」


 と、言って走り出してしまった。


「に、にいちゃん。まって~」


 大男もそれに続いて逃げ出していく。


 去り行く狼藉もの達の背中を見送り、ガクリと村長は膝をついた。





「行ってくれたか……」


 男達の姿が見えなくなったあとで、村長は再び絵の前に手をかざした。

 瘴気が反応して視界が歪んで見える。


 上納金の話だけはデタラメだ。絵画の購入資金は安くはなかったが、それ以外には何も納めてはいない。

 だが、ここにある絵を描いた何者かが、どこかに存在しているのは間違いないのだ。


「アケレイの魔女、か。恐ろしい、一体どんな……」


 村長は引きつった苦笑いを浮かべながら、遠い南の空を見上げた……



◆◇◆


 ところ変わってアケレイ村


「もー! なんなんですかー!!」


 ヘルメスはほっぺたをプンスカさせながら怒っていた。


「これの! どこをどう見たら豚に見えるんですか!! ワンちゃんでしょ!? どっからどう見ても!」


「い、いや、すまん。その、なんだ……うまく描けていると思うぞ?」


「もー! そんな事言ったって今度と言う今度は誤魔化されませんからね!」



 呪いの絵画は売れに売れた。噂は噂を呼び、どこぞの貴族が金貨を何十枚もはたいて買いにきたと言う話もある。

 味をしめたゲオルグは追加の絵画を描かせようとしたが、作戦は困難を極めた。


 褒め過ぎれば、瘴気をまとわないただの絵になり。機嫌を損ね過ぎれば描いてもらえなくなる。

 いつもの匙加減に四苦八苦するゲオルグだったが、それはもう少し先のお話……

4/25

1話から3話を書き下ろしました。ストーリーには変更ありませんので、このまま読み進めて頂いても全く問題ありません。


おっさん精霊術師ZEROとでも言うべき、本編1話前の、マナとヘルメスの幼少時のエピソードです。

もしよかったら見ていってやってください。


おっさんが昔魔法使いの修行をしていたけど、結局ものにならなかったと言う設定を後付けで足させて頂きました。連載当初はなかった設定です。後付けすいません

ブックマークありがとうございます。

では引き続きお楽しみください!

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