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呪いの絵画

~翌日~


 会議はなかば強引な形でお開きとさせてもらった。

 散々引っ張っておいて保留、みたいな形にして申し訳ないとは思ったし、後で1人1人にちゃんと話さなければならないだろう。

 だが、みんなの意見を参考にさせてもらった結果、どうしても調べなければいけない事が出来た。そしてその内容をあの場で話す訳にはいかなかったのだ。


 トレイランに侵入せず、北方の村々の防衛に手を貸し、なおかつアケレイの金銭と防衛の問題を解決する魔法の一手。

 だが、これはこれで危険を伴う。匙加減が難しいし、バレたら殺されるかもしれない。



 事は慎重を要する。そして今日、何をしているのかと言えば……俺はヘルメスに頼んで何枚か絵を描いてもらっていた。


 木枠と布で即席のキャンバスを作り、画材も丁度よくケイルさんから買い取る事が出来た。



「出来た?」


「あ、はい。完成した物はそちらです。 でもどういう風の吹きまわしでしょう? 私に絵を描いて欲しいだなんて」


「いや、ちょっとな……」


 完成した絵に伸ばそうとした手は、中途半端なところで固まった。思わず息を呑んでしまう。

 間接とかどうなってるんだこれは。見る者を不安にさせる名状し難い輪郭。裂けた口から生えた捻じ曲がった牙。

 ……キャンバスには怖ろしい化け物が描かれていた……


「あ、あんまり上手くないんですけど……で、でも。可愛いですよね?」


 思わずびくっとして振り向くと、彼女は頬を赤らめてもじもじしていた。




「あ、あぁ。そうだな、ところで……これは何の絵なんだ?」


「…………は?」


ビキリ


 空気が凍り付く。


「猫ちゃんですけど……マスターにはこれが何に見えるんですか?」


 ヘルメスが若干不機嫌になる。

 ……恐ろしい……言いたくない……だが計画のために次の言葉を言わなければならない。



「あぁ、これ猫だったのか……う、うーん。もうちょっと描き加えた方がいいんじゃないか?」


「…………」


 彼女は少しムスっとした顔でキャンバスに向き直った。明らかに機嫌が悪くなっている。

 彼女の右手から黒い霧が発生し、筆を伝ってズズズっとキャンバスに吸い込まれていく。

 瞳に筆が入る……その目つきは歪んでいて……

 俺はそれがただの絵だと知っている。知っていてなお目を合わせられない。合わせてはいけないとわかる。


 そしてヘルメスは描き上げた全ての絵画に手を入れなおした。




「もう! マスターがこんなに絵心のない人だとは知りませんでした」


 作業を終えたあとも、彼女は少しご機嫌ナナメだった。ここまでは計画通り。

 さて、あとはどうやってブツを入手しようか考えていると……



「そんなに言うならマスターも描いてください! 私より下手だったら罰ゲームですからね!」


「え……俺?」


 と、思っていたら意外な提案をされる。

 えぇ……人に頼んでおいてなんだが、絵なんてもう最後に描いたのがいつだったか覚えてないのだが。




「えぇっと、なんでも好きなもの描いていいの?」


「はい。でもおふざけでパパっと描いて「俺本気出してねーから」なんてのはナシですよ!」」


 ……まぁ、いいか。椅子をもってきてヘルメスに向かい合って座る。


「わかった。じゃあしばらく動くなよ」


 特に意味なんてわからないが、親指をたてて片目で「うーん」っと、見つめてみると


「……へ? な、なんで私を!?」


「いや、だって、好きなもの描いていいって……」



ボッフ!


 ヘルメスの頭上に白い湯気が発生する。前にも見たなこれ。


「あ、あの、じゃあ……お願いします……」

 

 いや、下を向かれると描けないのだが……なんだかそれを指摘すると危険な気がしたのでとりあえず描き始めた。




 完成した絵はいたって普通……普通……いや、下手だなこれ。


「タハハ……人の事言えないな、これは」


 まぁどうみても本人の方が100万倍可愛い。見直して苦笑していたのだが……


「あ、あの! ください! それ!」


「え、欲しいの? こんなの。もっと上手く描ける人いるのに……」


「いいんです! ほ、欲しいです。ください!」


 彼女はお人形さんのようにコクコクと頷く。頷き過ぎて頭を振ってるみたいになってる。

 なんでこんなものを欲しがったのか疑問だったが、これはチャンスじゃなかろうか?



「いいけど。じゃあヘルメスの描いた絵は俺にくれないだろうか?」


「え? ……欲しいんですか?」


「物凄く欲しいんだ」


 しまった。つい本音が出て真剣な顔になってしまった。バレたか?


「い、いいです……よ?」


 だが要求は通った!


「ホントか!? いよっしゃぁ!! ありがとう! ありがとう!!」


 なんだかよくわからんが勝った!! 思わずガッツポーズをとると何故かヘルメスがパぁっと顔を輝かせて。


「ふふ。うふふふふ♪」


 俺の描いた下手糞な絵を。両手を伸ばして遠目に見たり抱きしめたりしながら、クルクルと回って去っていってしまった。

 あとには俺と、彼女の産み出した作品達が残される。





「……うっ…………」


 想像以上にヤバいものが出来てしまった。裏面にして伏せてあるのに凄まじい瘴気が漂っている。

 ……本物だ……

 間違いない。確実に呪われている。描かれた化け物と目を合わせたら心臓麻痺で死んでしまうんじゃないだろうか。



 そしてその日の夜、俺は極秘にケイルさんに来てもらった。



「……売りさばいて欲しいものがあるのですが……」

4/25

1話から3話を書き下ろしました。ストーリーには変更ありませんので、このまま読み進めて頂いても全く問題ありません。


おっさん精霊術師ZEROとでも言うべき、本編1話前の、マナとヘルメスの幼少時のエピソードです。

もしよかったら見ていってやってください。


おっさんが昔魔法使いの修行をしていたけど、結局ものにならなかったと言う設定を後付けで足させて頂きました。連載当初はなかった設定です。後付けすいません

ブックマークありがとうございます。

では引き続きお楽しみください!

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