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いつまでも一緒に


~次の日~


 翌日、マナは改装で出てきた木片から作った木板や、余っている木炭なんかを使って幼児たち相手に美術の授業……と言うかお絵描き遊びをしていた。


 俺が来た事に気づくとマナは手を握ってヘルメスにも聞こえるように言った。


「みんなうまく描けてるでしょ? ほらほら。お姉ちゃんも見てあげてよ」


「え、私ですか?」


 正直、この距離でヘルメスがなんらかの理由でブチギレた場合。子供たちが危険なんだが……まぁでもこの状況でいくらなんでもそれはないだろう。


「マナはもう見て回ったんだろうしヘルメスも見てやってくれ」


「わ、わかりました……」


 少女の髪が漆黒にかわり……顕現した彼女はなんだかそわそわしていた。



「ま、マスター」


「なんだ?」


「可愛い。か、可愛いですね……」


 幼児達は絵を描くのに夢中でヘルメスの事を気にとめてもいない。

 一生懸命に小さな手を動かすまるっこい背中は確かに見ていて可愛かった。


「はうぅ。か、かわい~~~!!!」


 彼女は両手を組んでかるくトリップしていた。ご満悦いただけたようで何よりだ。



 俺も幼児の絵をいくつか覗き込んで見る。

 この子は……ふわふわした半円がいくつも繋がって雲みたいな……これはなんなんだろう?


「これは何を描いてるんだい?」


「雲!」


 そのまんまかい。

 でも確かにカッコ良いよな、雲。雲って近づくと境界線ハッキリ見えないのになんで空にあるとあんなキリっとしてるんだろうな。


「そうかい。よく描けてるぞ」


「当り前さ! 俺一番うまいんだ。一番だよ!」


 胸をはってとても誇らしげである。一番かどうかはさておき自信があるのはいいことだ。




 今度はもう少し年上の女の子の絵を覗いてみる。


「あ、あの! だ、ダメです!」


 と、思ったら手で隠されてしまった。


「え、ダメなの?」


「へ、下手なので……」


 あ、これ「そうなんだ。じゃあいいや」って言っちゃダメなやつだ。


「大丈夫だよ。見せてくれたら嬉しいな~」


 ちょっと強引に迫ってみる。大丈夫、衛兵は全員こちらの手の者だ。


「あ、あの。笑わないですか……?」


「絶対。約束する」


「じゃ、じゃぁ……」


 少女がおずおずと手をどけると、棒人間のような絵が二人。少し小さくて髪が肩まであるのはマナだろうか。

 と、すると隣の少し大きくて毛が3本しかないのは……俺か


「あ、あの……カッコ良く……描けてますか?」


 毛が3本で描かれてしまった事にはいささかショックを受けたが、そんなことを気にするほど器の小さい男ではない。


「実物とどっちがカッコ良い?」


 なんて言いながらふざけた顔をして近づけると


「あはは。もう、笑わないって言ったじゃないですか~」


 ポカポカと叩かれてしまった。あはは、あは。あはははは。




 そんなこんなで心をぴょんぴょんさせていると、ヘルメスの方にも1人女の子が……たしかミリムちゃんだっけ。



「ん!」


 幼女は自分の板をヘルメスに突き出す。


「ま、マスター! あ、あの。あの!?」


 ヘルメスがおたおたしているので自分も覗き込む。


「これは……」


 髪が肩までかかった棒人間が左右に二人。片方は髪が黒く塗りつぶされている。そして真ん中の少し大きい毛が3本のは……

 なんで俺は毛が3本なんだよ! 断じて言うけどハゲてないからな。一切!



「あげる」


 湧き上がる抗議を飲み込むのに苦戦していると、幼女がヘルメスに板を突き出す。


「え!? え!? え!? あ、あの! マスター! ど、どうしましょ。私どうしましょ!?」


 めちゃめちゃてんぱってるけど顔は嬉しそうだ。


「どうしましょ!? わ、わたしこんな時どうしたら」


 ヘルメスの肩にポンと手を置いて落ち着かせる。


「ありがとう……で、いいんじゃないかな?」


 彼女は数秒、俺の顔をまじまじと見つめたあと、幼女に向き直って……


「あ、ありがとう……」


 すると幼女は親指をぐっと立てて、むふーっと鼻息を出してこれでもかってくらいドヤ顔を見せて踵を返した。


『評価は聞かなくてもわかるぜ。最高だろ?』


 なんかそんな幻聴が聞こえてくる。かーーっく良い!




「良かったな……大事にしろよ」


「はい……」


 左手にふっと柔らかい感触が。見ると彼女がそっと手を握って来ていた。


「あの、ごめんなさいマスター。気にしてないって言ってたけど、私やっぱり意固地になってたんだと思います」


「…………」


 なんて返そうか一瞬迷っていると、マナがヘルメスに向けて言った。

 手を握っている間俺達は魂で繋がっていてお互いに思いを伝える事が出来る。


「お姉ちゃん……ごめんね?」


「マナ、違うの! 謝るのは私の方。 そう、私が……子供だったから……」


 そして彼女は目を伏せて言った。


「あの……私、こんなのだから。また我儘言ってマスターを困らせてしまうかもしれない。それでもやっぱり一緒にいたいです」


 手を握る指にキュッと力が籠る。


「そばにいさせてくれますか? ずっと……ずっと……」


 そんなの言わなくたって決まってる。ただ口に出せないほどヘタレでもない。


「当り前だろ。死んでも離さないよ」


 彼女をそっと抱き寄せる。なんか男子達がヒューヒュー言い出したけど気にしない。




 と、思ってたら心の中から無慈悲なツッコミが入ってしまった。しかもヘルメスにも伝わるように。


「でもさー。あの件はマスターのフォローがデリカシーなさすぎだったのも原因だったんだけどね~?」




「こいつぅぅぅ! せっかく良い話にまとまりかけてたのにぃ!!」


「だって、事実でしょー! にゃは、にゃはははは」


「うふ、うふふふふ」


 そうして俺達はいつまでも笑いあっていた。  

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