影―085 動く仲間達
最近、小説書くの上手くなりたい一心でめっちゃ他作品読み込んでるんですが……、やっぱり文才って一朝一夕じゃ身につかないんだなって思いました。
「白夜様、お綺麗ですわ」
うっとりと頬を赤く染めたその女の言葉に、妾は声を返すことなく鏡に映った自らの姿を見つめていた。
純白のドレスに身を包み、顔には今まで一度もしたことのない化粧が薄く施されていた。
これからこの姿を見せる相手が、あの糞だと思うと、ドMと自他ともに認める妾でも胸糞悪くなってくるのじゃ。
妾としては、この姿を見せる相手はきっとあの人だと思っていたから、その落胆も少なからずある。
「……白夜様、本当によろしいのですか?」
なにが、とは言わない。
この国に来て初めて知ったこと。
それはドラゴンこそ性根から腐り切り、あの竜王を崇拝しているものの、竜人族自体は至って普通の種族に過ぎないということだった。
メイド服を身につけたその竜人族の女性は心配そうに眉を寄せており、妾は心配するなと笑って見せた。
「大丈夫じゃよ。何も、問題などない」
「……そう、ですか」
視線をあげれば、部屋に取り付けられている時計は結婚式の始まる数時間前を記しており、それを見た途端、その結婚という言葉に嫌悪感を抱いてしまった。
「雷でも、結婚式場に落ちてしまえば良いのに」
言ってからしまったと口を抑えたが、そのメイドは微笑ましく口元を緩めていた。
「そうですね。個人的には竜王の頭の上に聖剣でも落ちてこないものかと願うばかりですが」
「……カカッ、妾的には、何かの儀式の生贄にでもなって死んでほしいものじゃがな」
例えば悪魔を召喚する生贄にされて、呆気なく、その口を開く暇もなく殺されるとか、そんなのがいい。
苦しまなくていいから、とりあえずさっさと死んでほしい。
「……我ながら、あ奴に恋するとか、無理難題も酷いもんじゃな」
顔面偏差値中の中。性格も良くなく、ロリコンで、童貞で、ヘタレで、それも中二病真っ盛りのどこかの馬鹿に恋するよりも、よっぽど難しそうな時点でどうかしてる。
そう考えた、その時だった――
ドゴオオオオオオオオオオオオンッッ!!
光が瞬いて、次の瞬間。
世界を揺るがすような、大爆発が起こった。
「なっ!?」
「だ、大丈夫ですか白夜様っ!」
メイドへと視線を向ければ、妾の事を見て安堵したような様子の彼女が床に座り込んでしまっており、その優しさには心入るばかりじゃ。
しかし、今はそれどころではない。
窓ガラスの目の前まで駆け出し、その向こうに広がる竜国の町並みを見下ろした。
ここは竜国に存在する王城。
この部屋からは町並み――否、国並みを一望できるわけだが。
「あの……馬鹿者たちが――ッ」
視線の先には、見覚えのある狼や馬、鹿の姿があり、思わず歯を食いしばった。
妾は、助けなど望んでいない。
妾が戻ってしまえば、あの人が死んでしまうから。
だからこそ、妾の考えを無視するようなその行動が、恨めしくて堪らなかった。
「……竜王に連絡を頼む、今すぐに結婚式を執り行う、と。妾が結婚してまえば、さすがのあ奴らと言えども諦めるであろうしの」
「へっ? は、はいっ! 分かりました……」
妾が睨みつけるとメイドは一目散に部屋の外へと駆け出してゆき、それを見送った妾は。
「……」
緩んだその頬を、なんとか無表情に整えていた。
☆☆☆
そろそろ、恭香も動いている頃だろう。
少しだけ不安になった我は、隣にいた了へと視線を向けた。
「な、なぁ、了。恭香は――」
「それに関しては……まぁ、大丈夫だろう」
我が心配を最後まで聞くことなく、彼女はそう言って頬を緩めた。
「恭香はあれでも私よりも彼に信用されているからな。彼女が説得できないのならば、多分彼はここで終わりだ」
――それに。
彼女は過去を懐かしむように遠くへと視線を向けた。
その瞳に映るは、微かな悲しみと、大半を占める大きな自信。
「確かに、私たちは彼が一般人であることをすっかりと忘れていた――けれど、彼はもう、一般人という括りには収まっていないだろう?」
たしかにその通りだ。
彼が一般人というのならば、この世界に存在するほとんど全てのものが一般人以下のゴミと化す。
つまり、彼女が何を言いたいのかといえば。
「主殿も、日々成長しているということか」
「その通りだ」
了は言葉少なく肯定した。
確かに、彼が数年前の、この世界に来る前の一般人のままだったならば、多分ここまで至れずに終わっていた。
だが、彼も一般人ながら、日々進化してきているのだ。困難を一つ一つ乗り越え、成長を遂げてきた。
「つまりは、大丈夫ってことですね」
言って暁穂は微笑んだ。
今現在、この場所には我――つまりは輝夜と、了、そして暁穂と藍月、ソフィアが潜んでいる。
視線の先には、巨大な山脈の頂上にひっそりと存在している竜国、その唯一の都市が存在しており、その中にはもう既に他の面々が入り込んでいる。
マックスの神剣の力である『闇支配』を使用してメンバーの気配を隠蔽し、ミリーをリーダーとして、騎士組の三名と気配遮断に長けたエロース、メデューサの毒を使用できるネイルが白夜の気配を辿って進んでいるはずだ。
そして、我らは――
「さて、それではそろそろ、陽動を開始するか」
未だ恭香の言っていた『滞在者二名』――つまりはレオンと伽月には出会えていないが、それでもやるしかないのは確かだ。
「我が悪鬼羅刹を召喚、暁穂、藍月、そしてソフィアが姿を戻して暴れ周り、こちらへと全ての意識を集める。その隙に白夜の元まで接近したあ奴らは、メデューサの麻痺毒を使用して白夜を捕縛。そのまま離脱し、ミリーからの連絡を受けると同時に我らも撤退する――という感じで良いな?」
主殿に頼れない今、我らが必死に頭を悩ませて考えたこの作戦。本来ならば誰も口を挟まぬはずなのだが。
「……竜王の相手はどうするのじゃ?」
そう疑問を発したのはソフィア。
彼女はむむむとこめかみに指を当てると。
「これでも余はあらゆる森を司る神だからな。森に住む木々からあらゆる情報を集められるのだが……どうやら聞く話によると今日が白夜と竜王の結婚式ときた。邪魔でもすればまず間違いなく大軍を率いてやってくるであろう」
……一度も彼女のステータスを見たことはないが、やはり彼女の化物加減には呆れを通り越して尊敬の念を抱いてしまう。
我でもドン引きする変態性ばかりが目立っていてその強さ自体はあまり印象強くなく、更にはアスモデウスに操られていた状態でオリビアに押されていたこと。
それらも含めて彼女の印象は『あまり強くない』というものに収まっている。
だが――
「本当に……我はお前と戦って勝てる気がしないぞ」
「……ぬ? すまん、集中して聞いてなかった」
どうやら聞かれずに済んだらしい。本当によかった。
ちらりと周囲を見渡せば、概ね同じ意見なのか、了たちはなんとも言えない表情を浮かべており、我らは竜王の相手について、一つの結論に至る。
「「「よし、君に決めた」」」
「……はい?」
全員からの一斉の指名に、思わずそんな間抜けた声を出す、ソフィア。
我らは、彼女が本気で戦っている姿を見たことがない。
アスモデウスに操られていた時は明らかに手を抜いていたし、さっさとゼロたちを片付けて観戦していた我が見たところ、最後のオリビアの一撃を防ぐ際だけ本気を出していたように思えた。
なにせ、あの一撃を持ってしてもあの結界は破れなかったのだから。
「お前も、たまには主殿の役に立ってみせろ。でないといつまで経ってもただの変態だと罵られるだけだぞ」
「むしろ御褒美だな」
……しくじった。
そういえばコイツ、白夜の変態も吸収してたんだった。
悪びれもせずにそう言ってのけたソフィアに思わずため気を漏らすと、それを聞いたソフィアはブンブンと手を振った。
「い、いや、余とて主人様の役には立ちたいのだぞ! ただ、余の力は戦闘向きではないというかなんというか……」
「前から思っていたが、戦うのが面倒くさいって本心を隠すための言い訳だろう? それは」
言い当てられ、ビクッと身を震わせるソフィア。
ダラダラと汗をかき、必死に視線を逸らしていた彼女ではあったが、全員からの一斉ジト目によってとうとう観念したようだった。
「あぁっ! もう分かった! やればいいのであろう、やれば! ほらゆくぞ、こうなったからには竜王以外はすべて任せたからの!」
言って彼女はズンズンと目的地めがけて突き進んでゆき、それを見た我らは視線を合わせて苦笑する。
「さて。それでは行くか」
言って、我らはソフィアの背中を追って駆け出した。
仲間はいれど、主殿のいない現状。
その上恭香は主殿の元へと置いてきたし、更には白夜は敵という最悪にかなり近い状態。この上に竜王という地味に厄介な雑魚と、その他大勢の殺せない厄介な雑魚がいるときた。
「主殿は、毎度これよりも厄介な局面を乗り越えてきたのだな」
そう思うと、やはり尊敬せずにはいられない。
我の世界構築のように、必殺やそれに近いようなスキルを持たず、ステータスもさして高くはない。
そんな状態で、彼はかつて、我の前に立ちはだかった。
戦った感想はさして強くもない相手、というものだったけれど、結果として我は――敗北した。
「どれだけそれが難しいか。今になってやっと分かるとは……、我もまだまだという事だな」
言って笑みを浮かべると、我はパチンと指を鳴らす。
瞬間、我の背後に召喚されるは奈落の門。
「『奈落の門』」
召喚するは、我が従えるアンデッドの軍勢に加えて――悪逆の限りを尽くした最強の鬼、悪鬼羅刹。
竜王は、とりあえずソフィアに任せよう。
その代わり。
「ゆくぞ、暁穂、藍月、了。我らは弱い方の雑魚どもを、殲滅する」
大鎌デスサイズを肩に担いで、我はその門を開くのであった。




