影―019 陽の眼
白夜無双!
彼女のステータス公開です。
時は少し遡る。
ギンが『百魔夜業』を使用したその時、怪我人を治療していた彼女――白夜はその方角へと視線を向け、直後、全くの反対側へと視線を向けた。
「主様が『絶影魔法』を使うとは……、あのロン毛、やはりなかなかに手強い相手のようじゃな」
白夜はそう呟いて思い出す。
あの男は恭香を――ギンを殺そうとした存在だ。
忘れもしない、忘れられない。
だからこそギンの場所に転移した時、あの男の顔を見た彼女は咄嗟に変なことを口走ってしまった。その内に燃え始めた『怒り』を悟られないように。
(まぁ、バレてたからこそこんな場所に送られてきてるんじゃろうけどの)
あれだけ――それこそ自画自賛したい程にその『怒り』の欠片も表に出していなかったろう。それをひと目で見破り、その見破った事実を全く表に出さない主。
「やはり、主様は格ってのが違うのじゃ」
そう言って彼女はカカッと笑った。
すると、丁度そこにソフィが門の外から戻ってきた。
そしてそれと同時に上空から、恭香を抱えたエロースが降りてくる。
「おおっ、集まっておったか! 主人様からの伝言があるのだが……」
「どうせアレじゃろ? 今海の方から近づいてくる多くの気配、そっち側を頼んだー、とか。絶対そんな感じじゃな」
「よ、よく分かったな……」
ソフィアは白夜の一言一句違うことのないその言葉に思わずと言ったふうにそう呟く。
その様子を見てふむと頷いた白夜は――数秒固まった後、恭香へと視線を向けた。
のだが――
「のう恭香よ! 頼みがあ」
「え、ダメだけど」
「早いわ! 否定するの早すぎるのじゃ!」
一瞬で断られる白夜。
恭香はエロースに言って地面へと降ろしてもらうと、白夜へと呆れたような視線を向ける。
「どうせアレでしょ? ルシファーのこと見てなんだかイライラしてきたからその魔物達全部妾がやっつけるのじゃー、とか。そんな感じでしょ」
「な、なんでわかったのじゃ!? エスパーか!? もしくは新たな能力でも発現したのかの!?」
白夜は一言一句その通りの恭香の言葉に愕然とすると、恭香はさも当然とばかりにこう告げた。
「これでもさ、白夜と一番一緒にいたのって私だからね? 天才だけどその実単純な脳筋ドラゴンの思考なんて、それだけ一緒にいれば簡単に読めるよ……」
「ぬほぉっ!? 言葉の端々にある棘がまた――ッ」
恭香の言葉に白夜は身体をビクンっと跳ねさせる。
けれどもすぐに深呼吸して真面目な顔付きへと戻ると、「じゃが」と笑みを浮かべて口を開く。
「ならばあの程度の軍勢、妾一人で十分だということくらい、もちろん分かっておるじゃろう?」
恭香はそれに、深いため息という『肯定』を返した。
☆☆☆
数分後。
白夜は港の付近まで訪れていた。
「ふむ……なかなかに混乱しているようじゃな」
眼下に広がるは冒険者たち。
今この街は魔物達に包囲されている。
北には大悪魔と魔物の大群。
そして、南には海からの襲撃。
ギンが北の方へとルシファーを吹き飛ばした直後、執行機関の面々が北へは彼が行った、と風潮したため、冒険者ギルドのギルドマスターは海からの襲撃があると聞いた途端に全ての冒険者を南へと集結させた。
のだが――
「おい、北からも魔物来てんだろ?」
「は? ならこんな所に皆集めて何してんのよ……」
「普通に考えて半分に分けるか逃げるかした方がよっぽどいいじゃねぇか。この街のギルマスはよっぽどの馬鹿だな……」
「でも執行者が行ってるって……」
「執行者? んなモン過去の伝説だろ? 三年間居なかったのだって他のヤツら――黒炎とか英雄とかに抜かれるのが嫌だったんだろうよ」
「たしかに……。でもそんな奴一人に北を任せていいのか? 聞いた話によると魔物の数は千体以上らしいわよ?」
「ハッ、調子に乗って出張ってきた過去の遺物が死ぬにはいい最期何じゃねぇか?」
耳に届くは罵詈雑言。
それには白夜も額に青筋を浮かべ、今悪口を言った者全てをボコろうかと思い立った。
その時だった。
「あーらやだ! こーんなところにまだ入信してない迷える子羊がいるじゃないのっ!」
「おお! これは素晴らしい! さぁさぁ、皆さん入信はどうですか!?」
「いやはや契約書が足りるかどうか分かりませぬな!」
「ふっはっはっは!」
「うふふふふふっ!」
「なーっはっはっは!」
突如として現れた神父&シスターたち三人。
その声に振り向いた冒険者は皆絶望にその瞳から光を失ったが、その数が少ないことを見てなんとか復活する。
「い、イエスギン教! お前ら出番じゃねぇんだよ! 引っ込んでろよ!」
「そうだそうだ! テメェらなんて北に行ってお気に入りの主神様とでも死んでこいや!」
数人がそう言い出し、それを見た他の面々もそれに続く。
全く危機がすぐそこまで迫っているというのに情けない限りで、白夜は呆れたようにため息を吐く。
「うーむ……、これは助けた方が……」
「心配ありませぬぞ、白夜様」
「ぬぉぁっ!?」
変な声が出た。
白夜はいきなり後ろから聞こえてきたその言葉に身を跳ねさせると、驚いたように背後を振り返った。
すると、そこにはさも当然とばかりに立っている見覚えのある神父の姿があった。
「お、お主は……」
「お久しぶりです。神父です」
そこに居たのは、かつてギンの偽装を一発で見破ったあのイカれた神父だった。
それには思わず白夜も頬をひきつらせ、二人が立っているこの建物へと指をさした。
「こ、この建物、五階建てでかなり高いと思うのじゃが……」
「なぁに、信じる心の前には五階建てなどひとっ飛びですよ」
何を言ってるんだこの狂信者は。
白夜は思わずそんなことを口にしそうになったが、直後、下の方から叫び声が聞こえてき始めた。
「あ〜れ〜? 今お兄ちゃん達……神様の悪口いった?」
「おっかしいなー? 今ワシの耳に神様の悪口が聞こえてきたのじゃがなー?」
「って言うかー? この人達じゃねー?」
「おお、こんなところに冒険者たちが! なるほど彼らなら彼の偉大なる神様の生き様に嫉妬し、ついつい彼の悪口。言ってしまうかもしれませぬな!」
「えー? 許しちゃうのー?」
「「「「は? 許すわけないでしょう」」」」
どこからか湧き出してきた狂信者たち。
それには思わず冒険者立ちも悲鳴を上げ、それを見下ろしていた白夜は更に頬を引き攣らせた。
「こ、これは……」
「ふふふ……、我ら敬虔なる使徒が我らが主神、我らがロリコ……ごほん。の、悪口を聞き逃すはずもありません」
――今こいつ、ロリコンって言おうとしたのじゃ。
白夜はそう、ジトっとした視線を神父へと向けた。
すると神父は優しそうに頬を緩めると、白夜へと全てわかっているかのように話しかける。
「私たちはやっている事こそアレですが、彼を思う気持ちだけは貴女達にも劣っていませんよ。貴女はどこかで彼の悪口を言われたとして、それを黙って見ていますか?」
「有り得ぬな。度によってはその場で殺す」
即答だった。
その本気の目を見た神父の頬に冷や汗が伝い、白夜はふっと笑みを浮かべて海の方へと視線を向ける。
「なるほどのぅ。狂信者の集まりかとも思っておったのじゃが、その実は妾たちと同類じゃったか」
彼女の視線の先には街中からわらわらと集まってくる住人の姿があり、その顔には怒りの情がありありと浮かんでいた。
――狂信者。
たしかにその言葉のとおりだろう。
けれども彼ら彼女らの行動は全てが『彼』のためであり、その行動は方向こそ異なってはいても、彼女らの彼に対する『忠誠』と何ら変わりはない――
「カカッ、そう考えるとお主らも憎めん。逆にちょっとだけ興味が湧いてきたのじゃ」
「それはそれは。こちらの教団が掲げる売り文句に『あの白夜様が興味を持たれた教団です!』とか書けますね」
「あ、やっぱ今のなし」
――と、思っていた白夜だったが、最後の一言でその気持ちは完全に消滅した。
彼女はため息混じりに翼を広げる。
白銀の竜の翼。
それを見た神父は一瞬目を見開いたが、すぐにいつもの笑みを浮かべる。彼は見事な一礼を見せると、白夜へと向けてこう告げた。
「それでは行ってらっしゃいませ、白夜様。あの愚か者達への執行はお任せ下さい」
彼が顔を上げたそこからは、既に白夜の姿は消えていた。
☆☆☆
港から少し離れた海上、そこから十数メートル上空に白夜は滞空していた。
視線の先には海の上に波となって窺える魔物達の大進行。
白夜はそれを眉の上に手をかざして眺めると「ほう」と声を漏らした。
「なんと。海の魔物ではせいぜいが港周辺しか破壊できぬと思っておったのじゃが……なるほどのぅ。その手があったか」
その言葉とほぼ同時に、それらの魔物が姿を現す。
身体中を覆う鱗と、滴る水しぶき。
両の瞳にはギロリとした光が灯っており、その魔物達は次の瞬間――空中へと、飛び上がった。
バサァッ!
それらの翼が音を鳴らす。
その姿を捉えたのか、港の方からは悲鳴にも似た叫び声が上がり、その言葉を辛うじて白夜のの耳は捉えることが出来た。
「どっ、ドラゴン!? ドラゴンだ!」
「はぁ!? 相手は海の中の魔物じゃなかったのかよ!?」
「それより入信しなーい? ねぇねぇ!」
「クソッ……、ドラゴンの中には空中と水中の両方で生きていける種類も居ると言う……。まさかあの数! 全てドラゴンか!?」
「はい、契約書……って。ドラゴンに気取られてるから今のうちに指で判子でも押し……」
「何やってんだ狂信者!? ちょ、人の指に赤いヤツ付けるのやめろ!」
「おいどうすんだよ!? 海の中ってのすらキツかったのに空中から襲いかかってくるなんて、倒しようがねェよ!」
そう、姿を荒らしたのはドラゴンの群れだったのだ。
白夜は水中で息を出来るような種族ではないため彼らの真似事は出来ないが、こと『水竜』に関していえばそれは別。水中だろうが空中だろうがなんの問題なく戦える。
だが――
「じゃが、今回に限って言えばラッキーってやつじゃな! 妾もわざわざ水の中入って倒すの面倒じゃったし……と言うか海水で髪がパッサパサになっちゃうじゃろうし……」
――所詮、空中に出ても水中に居続けても、彼らが滅ぶ未来に何ら変わりはないのである。
白夜はその右眼の瞼を下ろすと、スッとその上に手を当てる。
「主様なら『いい見せ場』とか『お披露目には最適』とでも言うのかのぅ? 妾にはよう分からんが、それでも主様が言うのであれば仕方あるまい」
竜の群れは刻一刻と白夜の方へと迫ってきており、その戦闘の数匹が白夜の姿を確認して咆哮を上げた。
それに対して白夜はニヤリと笑うと、右の瞼の上からその手を退ける。
「主様の『眼』が月の眼――空間を司る能力だとすれば、妾の『眼』は、正しく、陽の目」
瞬間、白夜は瞼を開いた。
そこには金色だった瞳から赤色へと変化した瞳があるばかりで、その瞳には――太陽のような紋章が浮んでいた。
「『太陽眼』」
瞬間、白夜の身体中が光に包まれる。
それは港にいる者にすら届くほど眩い光であり、それを見た者達は皆瞼を閉ざして顔を背ける。
けれどもその光はすぐに止み、気になった人々はそちらへと視線を向けて――空の、王者を見た。
『グォォォォォォォォォォッッ!!』
その竜は咆哮をあげた。
全身は彼の『世界竜バハムート』に匹敵する――否、それよりも一回り大きく、身体中には赤い線が走っている。
頭からまるで天を突き刺すかのように伸びる大きな角と、その両眼に光る金と赤の光に、竜の群れは思わずその身を竦ませた。
――無理もない。
何せ目の前にいるのは正真正銘の『竜の頂点』であり『空の王者』であるのだから。
身体中がガクガクと震え、冷や汗がダラダラと溢れ出してくる。目の前に存在しているだけで死んでしまいそうなその威圧感。
けれどもその苦痛は、直後に消えることとなる。
『時間停止』
瞬間、世界の時が――止まった。
けれどもそれを自覚出来るのは『三大魔眼』のを持つ者、又は同じことが出来る者、また全知全能の神くらいなもので――
パチィィィンッ!
そんな音が響き渡り、世界の時が元へと戻る。
波が動き出し、空気が流れだし、人が動き出し、星が――全ての世界が動き出す。
けれども次の瞬間、まるで今思い出したかのように群れを成していた全ての竜がゴフッと血を吐き出し、直後、大量の血飛沫をあげて爆発した。
それはさながら――夜空に舞う鮮血の花火。
かつて、ギンは白夜をこう評した。
『はぁ……、お前本当に強くなりすぎだろ? 逆に聞くけどどうやったら勝てるんだ? ……まぁ、本気でやったら楽勝だけどね? いやマジで……うん』
もう言い訳でしかないが、このステータスを見れば、あの彼がそこまで言うのも理解ができるというもので。
──────────────
名前 白夜 (1,090)
種族 時空神竜スペースドラゴン
Lv. 999
HP error
MP error
STR error
VIT error
DEX error
INT error
MND error
AGI error
LUK 850
ユニーク
時空神Lv.4
太陽眼Lv.4
原始魔法Lv.5★
ダメージカットLv.5 ★
忠誠心Lv.5 ★
変身Lv.5 ★
戦の神髄Lv.5 (共有) ★
アクティブ
ドラゴンブレスLv.10 ★
念話Lv.10 ★
威圧Lv.10 ★
パッシブ
竜神王鱗
直感Lv.10 ★
並行思考Lv.10 ★
魔力操作Lv.10 ★
気配察知Lv.10 ★
気配遮断Lv.10 ★
存在耐性Lv.10 ★
称号
最強の一角『白天王』空の王者 神々の加護 神童 耐え忍ぶ者 超越者 ギンへの忠誠 原初の理 陽の眼
─────────────────
ギンの言葉を借りるとすれば、こうだろうか?
――お前には、一体どうやったら勝てるんだ?
ほんと、どうやったら勝てるんでしょうね。




